10、名前だけで判断しない方がいいらしい
【天候操作系の魔法】
私が異世界<エルタニア>で農家として過ごしていたころ、作物の成長面などでよくお世話になった。普通に使ってもそこまで危険性はないような気がする。
「天候操作系の魔法は、太陽で土地から水分を消滅させたり、大雨や洪水で都市を水没させる……等々、間違った使い方をすれば普通に災害を起こせますよ」
笑顔でさらりと怖い事を説明する受付嬢に、私の顔は引きつってしまう。でも言われてみれば、雨とか風とか暑すぎるとか寒すぎるとか……天気って人々の生活に大きな影響をもたらしてるような気がする。こうして聞くと、天候操作って結構強力な魔法に聞こえるのだ。
天候魔法の説明後、沈黙が周囲を支配していた。その沈黙に耐えきれず、琴音ちゃんが質問を投げかけたのだ。
「<禁忌魔法>とやらに、代用の物はあるのじゃろ?」
<禁忌魔法>は、強力すぎる魔法達の総称なのだが、その同名の「能力」を琴音ちゃんは持っている。こう発言をした異世界出身の彼女は、そういう系のチート能力があると使いたくなるらしい。
「はい! それらは<秘術能力>と呼ばれており、<禁忌魔法>を物凄く弱体化させたものとなっていますよ」
「ふっ……それって、普通の『能力』とは何が違うの?」
厨二くさい名前に私は苦笑してしまう。
「使用者によって、その力が変わるということですね。 具体的には……使用者の魔力量が多いほど効果が強力になるのですよ」
「つまり、魔力が最大値までカンストしている琴音ちゃんの場合だと……?」
「<禁忌魔法>とほとんど変わらない威力のものが使えますね」
つまり、琴音ちゃんが使えば<禁忌魔法>と変わらない……。すなわち、使ってしまうと、色々な問題が発生するのでアウトとなるのだ。絶対に……いや、万が一の時以外は使うなと、念を押したのである。
「琴音ちゃん?<禁忌魔法>達は緊急時以外で絶対に使っちゃダメだよ。いい?」
私は先生のような口調で、琴音ちゃんに念を押す。何か起こる前に釘を刺した。起こってからでは、何もかもが遅すぎるのだ。
「……分かったのじゃ」
少し不服そうではあるが、琴音ちゃんはうつむきながら納得したのである。だが、本当に分かっているのか、不安が私の中にあった。なぜなら、『魔王の血が騒ぐのじゃ〜』とか言い、突然<禁忌魔法>を使ってしまいそうだからである。私はそれが心配だった。
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「ふと思ったのじゃが、ヒナのステータスってどうなってるのじゃ?」




