家でオールナイトをエブリデイ!
引きこもりの朝は早い!
朝4時に起きて、計12個のゲームのログインを素早くこなし、プロの手つきでノトパを開く。
ファンタジーゲーム【俺たちの世界】で我が同志たちと再会、世界を脅かす魔王バサラ―を討伐すべく日々魔王の手下を倒して、村人(MPC)たちを救っている。
「『お、今日はブラックドラゴンか、』と」
日々の戦闘で身に着けたタッチタイピングで素早くチャット欄に入力、送信する。
早くも一人のタンカー【匿名ライダー】がブラックドラゴンへと立ち向かう。
チャット欄:『おい連携は!?』『アンタのレベルじゃ太刀打ちできないよ~』
すると先人のタンカー『俺は、一刻も早くこいつを倒して村人たちを安心させる責務がある!』
チャット欄:『さすが匿名ライダー!漢じゃねえか……泣けてくるじゃねえか』『そうよ。私たちはこの世界を、私たちの世界を救うの!』
「お、さすが匿名ライダー。『よしやるぞぉ!』でポチっとな」
匿名ライダーに乗っかり、援護魔法をかける。俺は【サンダークイーン】という名前でヒーラーをやっている。
チャット欄:『女神の恩寵だ!』『さすがサンダークイーン』『よっ最強ヒーラー!』
得意のバフで攻撃力と耐久度を上昇させて、仲間を支援する。
そして、うちの同志たちの中で最強のアタッカー【リュウ】が、ブラックドラゴンに必殺技でとどめを刺す。
『行くぜッ!みじん切りにしてやる!』
コンボにコンボを重ね、ブラックドラゴンのHPをゼロまで削り続ける。
勝利の撃墜BGMに乗りながら、ベットで寝返りを打つ。
早30分が経過、ドロップアイテムの確認と共に、ギルドへ送還される。
「有意義……」
カーテンの隙間からさす薄明かりが照らす天井を眺め、息を吐くようにつぶやく。
すると、個チャで匿名ライダーからメッセージが届く。
「なになに……今度会いませんか?て、えぇ!」
慌てながらも返信する。
「『なんでですか?』じゃなくて『どうしたんですか?』じゃないもう!」
結局理由も聞かず軽く『OK!』と送ってしまった。
「だって……ゲームの友とのオフ会とかそんな珍しい事じゃないもんな」
すると秒で返信が来た。
今度は何だろうと画面を見る。
『ゲームの個チャじゃ不便なので、ライン交換しませんか』
連絡手段を確立するには交換するに越したことはなかったので、とりあえずIDを教えてお開きとなった。
しばらく画面を見つめて。
「匿名ライダーさんって、どんな人なんだろうか……」
激闘も終わったし、今は二度寝することにした。
週末、久しぶりに家を出て、指定の場所に向かった。場所は都心の駅の一角。その他細かいことをまとめてラインで送ってきた。
「匿名ライダーさんって、結構まめな男子なんだな」
新幹線すぐ着く場所だったのはうれしい。あんまり移動時間は長引かせたくないし、正直電車は乗り心地が悪い。俺のベットとは天と地の差がある。
家を出るのも久しぶりだったので、親が病気にでもかかったんじゃないかと心配してきたこと以外は何もなく目的の場所に着いた。
ラインで『到着しました』と送る。
すると匿名ライダーさん『私もついてるので、探してください』
「私……?」
文面に目を疑ったが、とりあえずそれっぽい人を探す。
「返信が来たということは、スマホを見てる人……」
あたりを見渡して、スマホの画面を見ている人を探す。
すると黒髪ストレートで美人、名門帝国高校の制服を着たいかにもできそうな女性が一人。花壇に座っていた。
「まさかな……あれが俺たちの世界の同志じゃあるまい」
流石にないと思い、通り過ぎようとしたとき。
「俺たちの世界……サンダークイーンさんって、あなた?」
赤茶色の瞳が、こちらの顔を覗いていた。