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魔女の弟子  作者: she
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1話 修行



「大漁だー。」

せせらぐ川の傍、のんきな声で一人呟くアレンは魚を釣っていた。

晩ご飯のために十分な量を釣ったアレンは帰路につく。

 

師と共に過ごしている家は、人目のつかない森の中にある。夜になると危険なので、基本的には日が出てる内に帰るようにしている。


この調子だとゆっくり歩いても、日が暮れる前に帰れるだろう、そう思いながらも走って帰る。


師であるサリィは夜になると魔術の修行を見てくれる。そのため、その時間を少しでも長く確保したい、そういう思惑もあった。


「ただいま〜」

予想よりも早く家に着いたアレンは、早速晩ご飯の支度に取りかかる。

小気味良い手際で魚を三枚に下ろし、フライにする。サラダもつけて、彩りもバランスよく、一皿に盛り付ける。

物心ついた頃には弟子の仕事の一つとして、家事をしていたために、料理は手慣れたものだ。


「よし、出来た。」

我ながら美味しそうだ、と自画自賛しながらサリィを呼びにいく。


「師匠ー、ご飯できたよー。」

トントンと扉をノックしながら呼びかける。

だが返事ない。


サリィは一日のほとんどを自室で過ごす。

魔術の研究や、薬、動物の生態など様々なことを調べているのだが、一度没頭すると中々部屋から出ることはない。


出てこないな、悟ったような目をして扉を見つめるアレンは強行策にでる。


「年齢不詳のインチキ魔女!クソババア!ご飯ができたよー!」

ガンガンガンと扉を叩き、大声でありったけの暴言を吐き出した。


次の瞬間、弾けるようにサリィは飛び出し、アレンの頭頂部めがけて拳を振り下ろした。


「誰がババアだ!このバカ弟子!」


拳骨を受け、頭を抱えて蹲るアレンに、更なる追撃を仕掛ける。サリィはアレンの両のこめかみを抑え、グリグリと締め付ける。


「許して欲しくば、世界で一番綺麗で美しいサリィ師匠、と言いなさい。」


「いたたたた!ギブ!ギブ!言います!」

若干涙目になりながら、納得のいかない様子で、許しの文言を復唱する。


気が晴れたのかサリィは、よろしい、と一言言って手を離した。


「ところで、用事は何なのかな?」

ババアという言葉に条件反射で飛び出したサリィは疑問をぶつける。


「だから、ご飯の時間だよ、食べよう。」

こいつ、暴言の部分しか聞いてないな、と内心呆れた様子でアレンは答え、食卓へと促す。


席についた二人は料理に手をつける。


「魚のフライか、うん、美味しいね。」


「どうも。」

先の一連の理不尽な流れに不満げなアレンは、不躾に返す。


「ごめんね、悪かったよ、殴って。」


「いつものことだから別に、、、でも、そうだなぁ、そろそろ術式の修行をつけてくれるなら、水に流します。」

下手に出たサリィに対して、ここぞとばかりに交換条件をだした。


「うーん、アレンももうすぐ十歳だしなぁ、よし、今日魔力コントロールの修行で合格点取ったら、術式を教えてあげる。」


「ほんと!やったー!」

先ほどの陰鬱な雰囲気は吹き飛び、年相応の笑顔で無邪気に喜んだ。


アレンは、早く修行をしたい一心からか食事のペースが一層増し、一瞬で平らげた。


先に修行の準備してくると言い残し自室に戻る。


現金なやつ、そう思いながら、サリィはペースを崩さず箸を進める。


数分後、食事を終えたサリィはアレンを呼びに部屋へと向かった。


「アレン、入るよ〜。」

ノックをし、部屋へと入る。

部屋にはいつもの様に、修行着に着替え、ノートを手に持ったアレンが待機していた。


「それじゃあ、修行始めようか。」


「よろしくお願いします!」


「じゃあ、いつも通り魔力の修行から。」

アレンは胡座をかいて、目を瞑り瞑想を行い、体内の魔力を循環させる。


「右手、左足、左腕、右腕、左手の順に。」

サリィは魔力を集中させるポイントを順番に指示する。

アレンは素早く、魔力の移動を難なくこなす。

およそ三年、毎日欠かさず、怠らず、魔力の修行に向き合ってきたアレンにとって、この程度は問題ではない。


「うん、いいね、じゃあ次はどうかな?」

アレンの肩に手を置いたサリィは、自身の魔力をアレンへと流していく。

アレンの総魔力量が二倍に達するまで続けた。


自身の魔力と違う他人の魔力を扱うのは大変難しく、コントロール出来なければその魔力は霧散してしまう。


ふぅーー、と大きく息を吐き、魔力を制御する。

だが、自身の魔力の二倍の量、しかもサリィの魔力、中々上手く循環させることができない。


サリィの足した魔力が、およそ三分の一ほど消失した後、アレンはようやく魔力の制御に成功した。


「そこから一時間キープ、私の魔力を自分の魔力だと思って、循環させなさい。」


声を出す余裕のないアレンは、額に大粒の汗を浮かべながら頷く。


一時間を計りながらサリィはふと思う。


確かにアレンは魔力を扱うセンスがずば抜けている、魔術を専門とする学校に通う子と比べてもアレンが飛び抜けているのは間違いないだろう。


だが、魔力量に関しては多い方ではあるが、飛び抜けているわけではない。今の魔力量はこれまでの修行の賜物で、天性の物ではないのだろう。

ならばアレンの本当の価値は?

あの時出会ったアレンの持つ才能とは一体何か、、、


ピピピ、と音が鳴る。

予め設定していたタイマーが一時間の経過を知らせる。

「師匠!一時間経ったよ!」


「あ、そうだね、、、うん。」

考え込んでいたサリィはアレンの声で我に返る。


もう一度アレンの肩に手を置いたサリィは、流し込んだ自身の魔力を回収し、お疲れ様、と頭をポンと叩く。


「それで!僕の魔力コントロールは合格だった?」


「ギリギリ合格ってとこかな、明日からは少しずつ術式についても教えていくよ。」


「やったー!これで僕も魔術が使える!」


魔力の修行も怠らない様に、と釘を刺すもサリィ自身、アレンがどんな術式を持っているのか楽しみであった。


「明日はある薬草を取りに行くから、今日はもうお休み。」


「修行ありがとうございました!おやすみなさい。」

明日の予定を伝えて寝る様に促し自室へと戻るサリィに元気よくお礼をする。


アレンは一旦シャワーを浴びてベッドへと身を委ねる。


今日はゆっくり寝れるだろう


明日は待ちに待った術式について学べるのだから。






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