黒井咲絺のクリスマス
こんにちこんばんは。
慣れない書き方に『慣れないことはするもんじゃないなぁ。』と思った仁科紫です。
メリークリスマスっ!ということで、クリスマスの番外編を頼まれてもいないのに書きましたよっ!プレゼントの押し売りだぁッ!(もちろんタダです。)
※時間軸は不明ですので、パラレルワールドとでも思ってください。
それでは、良き暇つぶしを。
12月24日。クリスマスイブである今日、イルミネーションの飾られた街路樹やクリスマスカラーで溢れかえる店頭を見つつ、黒井咲絺は思い悩んでいた。
「ゲームばっかりしていて、忘れていたけれど明日はクリスマスなのよね。プレゼントくらいは贈るべきかしら?」
そう。年中ワンダーワールドに引きこもっている咲絺が柄にもなく街中に出ている理由とはつまるところ、家族にクリスマスプレゼントを買って帰ろうと思ったことにある。
事の発端はとある会話からだった。
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『主殿。くりすます、とはなんだ?』
それはつい最近の出来事。クリスマスイベントが開催されるということをラヴァに伝えた結果、言われた言葉だった。当然と言えば当然である。ラヴァはワンダーワールドの住人であり、クリスマスという文化がなかったのだから。
少し考え、そう言えばクリスマスの日はどうしよう。なんて疑問を思いつく。母の日や父の日、誕生日のプレゼントは欠かさず送るようにしてはいたが、クリスマスプレゼントを贈るという習慣はチェシャにはなかった。
『主殿ー?』
((あぁ。ごめんなさいね。えっと、クリスマスとは迷い人の世界でのお祝いの日よ。もとはとある宗教でのお祝いの日だったのだけど、お祭りが好きな迷い人がその日を楽しいパーティをする日にしたのよ。大切な人にプレゼントを贈り合う日でもあるわね。))
ラヴァに催促されたことで思考から引き戻されたチェシャは、曖昧ながらもラヴァに分かるように答えてみる。
そう、大切な人にプレゼントを贈り合う日。もともとチェシャの家ではプレゼントを贈り合うこともなく、ただフライドチキンとケーキを食べる日になっていたのだが、世間一般的にはこういった認識であっているだろう。
『むむ!?では、我も何か主殿にプレゼントをしなければならないのではないか!?』
この反応もある程度は想像出来ていた。出来てはいたが...咄嗟にどう返そうか悩むことになる。もしそうなれば、チェシャもラヴァに何かプレゼントをしなければならなくなる。しかし、チェシャはこういったことは苦手なのだった。故に、どうにか誤魔化せないかと足掻いてみることにした。
((別にどっちでもいいわ。ラヴァが用意するにしても、別行動をしないといけないわけだし、それでは面白みがないわよ?))
自分がプレゼントで悩みたくないという打算込みでそう言ったところ、返ってきた言葉は思いがけないものだった。妙に高いテンションでラヴァはこう言った。
((そうではあるが...。しかし、せっかくなのだから何かプレゼントしたいである!))
((そう?))
((そうである!やはり、プレゼントとは何かしらの気持ちを込めて贈るものであろ?
ならば、是非とも主殿に贈りたいのだ!))
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とまあ、こんな話をしたのが数日前。そこからなんやかんやと理由を付けて遠回しにしてきた結果、前日になってようやく重い腰を上げ、プレゼントを選びに来たのである。
(お母さんには紅茶でいいわよね。カップは家にあるから要らないでしょうし。茶葉だけにしましょう。)
母の趣味は何となくわかり、あっさりと決まった。しかし、父、兄、弟に関してはさっぱり分からないため、あちこち回ってはいるのだがこれといってピンとくるものがない。別に不仲なわけではないのだ。ただ、男の人が欲しがるものが分からないだけで。
(だって、ねぇ。男の人にプレゼントするものといったら、ネクタイ、腕時計...あと、何かしら?思いつかないわ。
あ、マンガや小説かしら?でも、欲しいものは自分で買うはずだし...。)
と言った具合に思いつかないのである。消耗品の方が相手の好みに合わなくとも他の人にあげやすいため、いい気はするのだがとそこまで考えてふと思いつく。
(そう言えば!カズはクッキーが好きだと言っていたわね!
よし。そうと決まれば美味しいクッキー屋さんを探しましょう。)
クリスマスにクッキーをプレゼントするというのはなんともおかしい気はしたが、そこは普段から少しズレている咲絺である。もうこれでいっか。とばかりに探し歩き、良さげなものを適当に選んでいく。もちろん、チョコチップクッキーを。クッキーと言えばチョコチップなのである。そこは譲れない。弟も好き...なハズだし。
(ふふん♪これでいいわね!
あとはお兄さんとお父さん...はぁ。めっちゃくちゃ難題なのだけど。)
兄のことはとりあえず頭の片隅にでも放置しておくとして、一番の問題は父だ。プレゼントを贈ったことがなく、欲しいものは自分で買う人である。むしろ、他人から何かを貰うことの方を厭うような人であるため、あげて喜ぶかは非常に怪しい。
とはいえ、あげないならあげないで拗ねること間違いなしなのだ。あげないわけにはいかない。全くもって、父親とは面倒臭い生き物である。
(うーん。お酒とか単純なものを喜ぶ人だと良かったんだけど...。)
父はお酒に弱く、お酒が好きでもない。作るのは好きだが。もちろん、法律に違反しない程度の度数の低いものである。
そういった人であるから、お酒をプレゼントにというのは不適切なのだ。
(あ。そうだ。お兄さんには甘いお酒をあげよう。
うん。それで問題解決。どうせ、お母さんと飲むでしょ。)
ふと思いつき、兄には甘めの梅酒をプレゼントする事にする。何がいいかは知らないが、辛いのよりは甘いものの方が好きだと聞いたことがある。好みから大きく外れていないはずであるため、問題はないだろう。
思わぬ所で兄のプレゼントが決まってしまったが、兄のプレゼントはこんなもので十分なのである。何を貰っても文句は言わないような人なのだから。
さて、そうなるといよいよ父のものだけになるのだが...ふと立ち止まり、考える。もういっその事、今人気のあるマンガでも贈り付けてしまおうか、と。適当すぎないか?とお思いのそこの方。いやいや、そんな事はないのである。あの人のことで考えすぎるのは良くないと娘である私はよく知っているのだから。
そう考えた結果、途中にあった本屋により、人気だというマンガを全巻揃えてカゴに入れ、プレゼント用の包装用紙に包んでもらう。何気に大荷物になってしまったが...まあ良いだろう。
充足感を得つつも家路に着く。
さあ、明日はクリスマスだ。どんな反応をしてくれるのか、楽しみなような...不安なような...そんな咲絺であった。
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そうして迎えたクリスマス当日。
咲絺は実家へと向かった。クリスマスらしいことは晩ご飯のときにするため、昼の3時頃に着くように出発する。
そうして着いた我が家は特にクリスマスらしい飾りも何もなかったが、恐らくリビングにはクリスマスツリーが飾られている事だろう。
大荷物になったため、確実にプレゼントを買ってきたことはバレる。今更になって恥ずかしく思えてきたが、勇気を出してインターホンを押した。
「はーい。あら。さっちゃん。お帰りなさい。」
「ん。ただいま。」
出迎えてくれたのは母だった。目敏くも私の持っている荷物に目をつけたらしい。早速尋ねてきた。
「どうしたの?その大荷物。」
「ちょっとね。えっと...」
今渡してしまおうか悩んだが、勢いに任せて渡してしまうことにする。いつ渡そうが恥ずかしいことに変わりはないのだ。ならば、とっとと渡してしまった方が良いというもの。そう思い、ガサゴソと袋を探して赤い可愛らしい紙袋を母に押し付けるように渡す。
「はい。...プレゼント。」
「あら?プレゼント?...さっちゃんが!?」
照れ隠しにぶっきらぼうに答えるが母には驚かれてしまった。いや、だってまあ気が向いたのだから仕方がない。来年は渡す気はないが。
「珍しいわね。何かしら?」
「ちょっ!?中で。中で開けようね!?母さん!」
「あら?それもそうね。ふふふ。気になっちゃって。」
そう言ってその場で開けようとする母を慌てて引き止める。ごめんなさいね。と言いつつも家の中に入っていく母だが、時折このようなことを天然でやらかすときがあり、咲絺としては気が気でない。
ホント、外で開けるとか寒いのによくやろうと思うものである。そう思いつつ、玄関をくぐるとさっそく開けたらしい母の声がリビングから聞こえた。
「わぁ!茶葉ね!ありがとう。好きなときに飲むわね!」
...せめて自分がリビングに入ってから開けて欲しいと思った咲絺であった。まあ、こういう所が母らしいのではあるが。
「どうしたの?」
母の声に誘われたのか、自室に居たらしい弟の数馬がリビングに顔を出す。
「さっちゃんに貰ったのよ!」
「あれ?おねぇ、帰ってるの?」
「えぇ。玄関に居るはずよ。」
その言葉に従って数馬がこちらにやって来た。さて、そういう事ならばプレゼントの用意をと思い、袋を探していると先に数馬が声を掛けてきた。
「おねぇ!おかえり!山!」
「ただいま。はい。クリスマスプレゼント。」
相変わらず、合言葉を聞く癖は治っていないようだ。しかし、私は無視することにする。何故か数馬は私が無視をしてもしつこく尋ねてはこないのだ。...いや、当初はしつこかったかもしれないが、途中から諦めたらしく答えなくても良しとしたらしい。
「え?プレゼント?おねぇが!?めっずらしー!」
「うるさい。そんなこと言うならあげない。」
プレゼントという言葉に対して珍しいとは...母と反応が同じでも、思わずムッとしてしまう。生意気なのは相変わらずらしい。
ちょっと意地悪したくなり、思ってもいないことを言ってしまった。...まあ、なんやかんやでこの弟が可愛いので、嫌がってもも押し付けて渡すのだが。
ん?可愛いのに嫌がっても押し付けるって矛盾してる?いやいや、そんな事はない。愛の押し売りをするのは弟に対してだけにすると決めているのだ。問題はない。
「えー!欲しい!ちょうだい?」
実際、この弟がこの手の意地悪に対して反抗的な態度をとっていたのは思春期の難しい年頃の間だけであったため、安心して意地悪できるのであるが。できた良い弟である。
「ん。あげる。」
「なんだろう?えーっと...クッキー!やった!」
プレゼントを開け、そう言って満面の笑顔を見せる弟に嬉しくなり、咲絺も笑ってしまう。...うん。たまにはプレゼントをあげるのもいいな。そう思ってしまった咲絺であった。
そうして笑っていると、何を思ったのか数馬はクッキーを一枚中から取り出し、咲絺に差し出す。
「はい。一枚あげる。一緒に食べよう?」
「え?いいの!?ありがとう!」
弟の想定外の行動に驚くものの、ついテンションが上がり口元が緩む。これだけでも満足してしまった咲絺は他のプレゼントのことを忘れ、ご飯時になるまで弟と遊んで過ごし、ピザやフライドチキンの並ぶ食卓を家族と囲みながらクリスマスらしい食事を楽しみ、デザートにケーキを食べた。
今年のクリスマスは楽しかったな。そう思った咲絺であったとさ。
〜以降、プレゼントを渡した時の他の人の反応〜
兄「え。プレゼント...。俺、何も用意してないわ。...来年は渡すな。
えっと...梅酒か。俺は酎ハイしか飲めないんだけど?いや、まあ、飲めなくはないから...母さんと飲むか。ありがとな。」
父「ん?『クリスマスだからオススメのマンガを買ってきた』...?...まあ、気が向けば読んでおくな。」
もちろん、プレゼントはクリスマスの日であるうちに渡しましたよ?ええ。次の日に持ち越し。なんてことにはなっておりませんのでご安心を。
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




