そう簡単に猫になれるわけではないのです
こんにちこんばんは。
前もって述べておきますが、作者は猫の動作に詳しいわけではありません。
そこに注意して頂けると助かります。
キャラメイクを終えて、目をもう一度開いた私は呆然としていた。
べ、別にビックリしたわけじゃないわよ!ただ、目線は低くなってるし、場所が急に変わってるし、ヒトは沢山いるし…。とにかく、いろいろと情報を処理していただけなんだからね!
…とりあえず、何処か高いところに移動しましょうか。街の様子も見てみたいし、何より、この人混みの中にいることにこれ以上耐えられないわ!いくら、覚悟していたとはいえ、ちょっと、これはねぇ。
この体にもなれないといけないもの。さっさと行動しましょう。
えーっと、高いところ、高いところ…。ああ、あの時計塔なんて良さげね。問題は、登れるかどうかだけど…。周りの家とかお店とかを登っていけばなんとか…?でも、周りは少し広場になってるみたいね。…この作戦は諦めるしかなさそうね。仕方がない、気合いで登りましょうか。
まずは登りやすそうな屋台のテントの上に登ってみましょう。えっと、ああ、あの果物屋さんの裏にある木箱の上に跳び乗ってみればいけそうね。
それでは、レッツチャレンジ!
えっと、猫が跳ぶときはまずは、前足と後ろ足を揃えて両前足で地面を蹴ってから両後ろ足でも蹴って…着地のときはまず、身体を丸めて、両前足で衝撃を吸収するようにっと。
ッタ、トン、ズルズル。ってあわわわ。えっと、前足で踏ん張って。ふう。危機一髪だったわね。危うく、落ちるかと思ったわ。
うん。少し、不格好になってしまったわね。え?何か言ったかしら?今のは誰がなんと言おうとす・こ・しよ!異論は認めないわ!
それにしても、あまり距離を跳べなかったみたいね…。まだまだ練習が必要そうだけど、登れただけ、初めてにしては上出来なんじゃないかしら?
次はこの木箱からテントの上に登らないとね。今度はもっと力をこめてを跳んでみようかしら。
ッタ、ポン。
おおー!今度はいい感じね!オートマチック操作ではなくても、意外にいけるわね!まあ、まだ短い距離しか跳んでないけど。え…オートマチック操作って何かって?
簡単に言うと、誰もが簡単に獣の動きをすることができる、誘導案内システムのことね。
それでも、どうしてもスムーズに動けないっていう人もいるにはいるらしいけど、そういう人の救済システムとして、アニマル種には、初めから一つの進化ができるようになっているわ。
まあ、ご想像のとおり、獣人への進化ね。分かりやすく逃げ道を用意しているあたり、運営としてはどうしても一度はアニマル種を選んで欲しいようだけどね。
まあ、そんなことはどうでもいいのだけど、私の場合はマニュアル操作をすることで、自由度を高くしたかったのもあるわ。でもそれ以上に、やっぱり、猫になるにはオート操作なんて頼っていたら意味がないでしょう?だから、沢山練習して猫より猫らしくなるのよ。
とにかく、練習にあるのみよね。次はさっきより少し距離があるあの屋根に跳んでみようかしら?
ここから落ちてもまだ1階分の高さだし、そこまで痛くはないはずよ。…うん。失敗する未来しか見えないのは何故かしら。
それでは…えいやっ!
ギャフ、ベチッ
…飛距離が足りなかったみたいね。もう一度よ!
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試行錯誤十回目
あ、前足がついたわ!これを踏ん張ればっておっとっと、うわぁぁぁ!ベチッ
うう。落ちた…。
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試行錯誤??回目
やったわ!今度こそ、華麗に跳べたわ!今のは猫っぽかったんじゃないかしら!…何回跳んだかは気にすることではないのよ?ええ。気にしないったら気にしないーなのよ!
うーん。ここでも十分見回すことはできるけど…。
でも、ここを登れたのなら、あの時計塔も登ってみたいのよね。なんだか、登りやすそうな構造をしているから、何かありそうな気がするのよ。…登りやすそうなのと、サクサク登れるのは別物だけどね。
人によっては登りやすいとか登りにくいとか、わかるものなのか疑問に思うかもしれないけれど、見た目があきらかに足場がありそうなのよ。猫歴一時間くらいの私が言えたことではないのだけどね?
でも、何があるのか確かめるのはとても楽しそうだもの。
ここはワンダーワールド、ゲームなのよ。他者に迷惑をかけない限り、私たちプレイヤーはどこに行って何をしようが文句を言われる筋合いなんてないわ。
つまり、私がここでしたいことを我慢する必要なんてない。だって、好きに生きるために私は今、ここにいるんだもの。
それはそうと、本当に私はワンダーワールドに来ちゃったのね。なんだか感慨深いわ。
周りの景色を見ながら歩いていると、そこはゲームでよくありがちな中世ヨーロッパのようでいて、そうではないもの。
確かに、街の様子はそれらしいのに、道行く生き物がそのイメージからはかけ離してくるのよ。
見慣れた、人だけが歩いている光景ではなくて、動物の耳がはえている人が駆け出していたり、お店に入るのも大変そうな巨体の人がゆっくり歩いていたり。
いつもの光景に別の要素が増えると、こうも不思議空間になるのかっていうぐらいにはなかなかにカオスな空間と化しているわね。
でも、やっぱりそこまでアニマル種は多くないのね。全体の2割いるかどうかといったところかしら?それに、多いのは鳥、次に犬ね。空への憧れと、進化先への憧れということかしら。
あ、でも、鳥の人がさっきからおちたり、飛んだりを繰り返しているわね。まともに飛べてるのは半分くらい…?その人たちはオートマチック操作を使っているようね。同じような飛び方をしているもの。
やっぱり、飛ぶのって難しいのね。私も他人事ではないけれど。…あら?そもそも、なんで屋根に登る必要が…うん。テンションがおかしくなっていたみたいね。気にしない。気にしない。
いえ、人が多かったもの。うん。踏まれずに済んだんだと思いましょう。ええ、そうしましょう。そうしましょう。
犬を選んだ人は、犬から狼になるっていう期待があってのことだろうから、フェンリルとか、ケルベロスとかに進化するのを期待してのことなんでしょうね。うん。進化回数が凄いことになってそうね。
それにしても、猫は最終的に何に進化するのかしら…。やっぱりチェシャ猫?
…コイツ単純だなって今誰か思ったでしょう!確かにあんな言葉を聞いたからってすぐに結びつけるのは私もどうかと思うけど…。でも、仕方がないじゃない。他にとくに思いつかなかったの!
…うん。これは誰に言い訳してるのかしら。やっぱり、今日の私は少しおかしいわね。まあ、何にせよ、これからの進化が楽しみね。
もちろん、道行くヒトたちだけでなく、通りから見えるお店にも不思議な光景は広がっているわ。
何故か花に口だけがあるヒマワリが花屋で花を売っていr…花が花を売るってどういう状況かしら。
いえ、ここはワンダーワールド、ワンダーワールドなのよ。くr…じゃなくて、チェシャ。常識なんて捨てなければいけないのよ。ええ、そうよ。捨ててしまいましょう。もっと、柔軟な頭をもたなければね。
他にも、道端ではクマが露店を開いて、魚を焼いているわね。これはクマの見た目がちょっと怖いけれど、動きが少し可愛いかもしれないわね。
それにしても、美味しそうな匂いがしてるわ。ちょっと食べたいかも。でも、先に周囲を確認しておきたいもの。食べるのはそのあとよ。少しの間だけなんだし、ガマンガマン。
そういえば、このゲームには満腹度があったわね。満腹度が0%になれば徐々にHPが減っていくっていうやつ。
つまらない理由で死にたくはないもの。適度に何かを食べなくてはね。
それに、最近のゲームでは味覚の再現度が上がっているらしいから、それも楽しみなのよね。初期のゲームは視覚と聴覚が機能しているくらいで、他はイマイチだったらしいから、技術の進歩って凄いわよねぇ。
さて、色々と考えているうちに、時計塔の側まで来てしまったわ。意外と早かったわね。それだけアニマル種の恩恵があるということかしらね。
さっきは遠目で見ていたから気付かなかったけれど、そんなに広くないと思っていた広場は半径10メートルほどあって、街の人々の憩いの場になっているようね。時計塔の近くに行くのなら、ここから飛び降りなければならないわけだけど…。
えっと、これって、ここから飛び降りて本当に大丈夫なのかしら?だって、5メートルくらいはありそうよ?
あ、でも現実の猫でも二階建ての家から飛び降りても大丈夫らしいものね。ここまで来るのに何回?か(←気にしないでよ?)落ちはしたけれど、まだ、飛び降りたことはないのよね。
他にも、屋根を跳び渡ったりはしたけれど、怖いものは怖いし、まだ、そこまで身体をコントロールできるわけではないから、すべての衝撃を吸収して、ノーダメージとはいかないだろうし。
…ここでうじうじしているよりは挑戦した方がいいに決まってるわよね。それに、失敗しても、街中では体力が減らないらしいもの。覚悟を決めて、いざ、ジャーンプ!
最後にチェシャはノーダメージどうのこうの言っていますが、街の中ではHPが減らないのを忘れているだけです。
ちなみに、チェシャが落ちた回数は4じy…
チェシャ「それ以上言ったら怒るわよ!」
とのことですので、まあ、かなり落ちてます。
次回、どうやって降りよう…。




