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黒井咲絺の帰省〜100話記念〜

こんにちこんばんは。

100話記念に出遅れた仁科紫です。

チェシャのリアル、黒井咲絺の帰省を書いてみましたよ。

…途中で書くの飽きて、終わりが雑ですがご了承下さい。


それでは、良き暇つぶしを。

 朝起きる。まだ眠たくてぼーっとする頭を必死に動かして、顔を洗う。未だにスッキリしないが、なんとか動く頭で食パンを一枚食べ、今日もまた、ゲームへ…とは思ったけど、今日は実家に顔を出す日だったわね。


「はぁ。」


 思わずため息が出たけれど、仕方がないのよ。別に家族に会うのが嫌なわけではないわ。家族は嫌いではないもの。

 では、何が嫌なのか。それは…単純に家から出たくないの。親が聞けば、体に悪いと言われそうだけれど、事実なんだもの。どうしようもないわ

 私はそもそも、引きこもりたいと常々思っていたくらいにはだらしない人間なのよねぇ。だって、面倒臭い。


 黒井咲絺。それが私の名よ。

 思えば、私は生きる事に楽しさを見いだせない人間だったわ。だって、いつかは人は死ぬのよ?なのに、一生懸命になる意味なんてあるかしら?個人的にはないとずっと思っていたのよ。

 それが、今はゲーム三昧の日々を過ごしているだなんて、少し信じられないわよね。…いえ。信じられないのは私の方なのね。ずっと、流されるがままに生きて生きた私が、今、自分で選択して過ごしているのが未だに信じられないのよ。


 …少し、私の今までについて話そうかしら。

 そうねぇ。この人格が形成された原因でも話してみようかしらね。


 私は三人兄弟の真ん中に生まれたわ。この時点でだいたい察する人が居るかもしれないけれど、上も下も男よ。つまり、私には兄と弟がいるのよ。

 どっちも2つずつ離れた兄弟。上も下もそこそこ甘えん坊だったのは覚えているわ。お陰で、私は周りの空気を読むようになったのだから。

 だって、途中で面倒になったのよ。自分の思い通りにするために雰囲気を悪くするのも。親に迷惑をかけてイライラさせるのも。どう考えても日常の中では無駄な時間でしかなかったし、ストレスの溜まる時間でしかなかったわ。それを避けるのは私としては当然のことだったのよ。…その結果が、出来るだけ言うことを聞くお人形さんのようないい子ちゃんだったとしても、ね。


 それは別に悪いことではなかったのだけど、問題なのはそれから先だったわ。

 初めは我儘の多かった弟達も、成長するとある程度、相手を尊重することを覚え始めたのよ。そうすると、今度は私が自分の自己主張をしないといけなくなった。急にそんなのを求められてもできるわけがないでしょう?

 しかも、長年のいい子ちゃん生活は私にとってストレスでしかなかったのよ。

 終いには、私はときどき、自分では分からない衝動的な行動をとるようになったわ。…何に腹が立ったのかも分からず、相手に嫌な思いをさせる行動を衝動的にしたり、泣くつもりはちっともなかったのに、急に涙が溢れてきたり。笑うつもりはなかったのに、笑ってしまったり…思い出すだけでも沢山あったわ。


 小学生の頃の話だし、割りとありふれたことだったのかもしれない。それでも、いい子になるにはその衝動は要らないものだったわ。

 そして、その事にも腹が立った。私が分からなくて怖くなった。私に自信が持てなくなった。加えて、周りにはそれなりにしか親しい人がいないことに気づいて恐ろしくなった。周りを見れば、私以外が仲良くしていて、私はそこに交ぜさせて貰っているだけなのではないかと。そう考えてしまったから。


 その頃からだったかしら。私がいなくても世界は何も問題なく回るのではないかと、思うようになったのは。

 それが確信したのは中学に入ってからだったけどね。今ならそれも勘違いだったと思えるけれど、昔の私はそれが事実だと思うことにしたのよ。その方が悲劇のヒロインのようで素敵でしょう?


 だから、ワンダーワールドを知ったときの衝撃といったら凄まじいほどだったのよ?

 私は私のために私だけの目的をもって、新しい世界で生きることが出来るんだって。自分で自分の生き方を決めることが出来るんだって。そういった気持ちになれたのよ。


 はい。回想終了。まあ、結論から言うと、私はいつまでも子どもっぽくてそんな私が現実から逃避する選択をした、というだけの話なのだけども。



 □■□■□■□■



「ただいま。」


 そう言って私は二階建ての一軒家の扉を開く。久しぶりに訪れた実家だけど、前とそこまで変わった様子は見られなかった。


「お帰りなさい。さっちゃん。」

「おう。おかえり。」


 玄関には母が。父はリビングより奥にある、玄関から僅かに見えた父の部屋にいるようだ。


「お父さん、また何か作っているの?」

「そうなの!最近、また釣りにハマったみたいでね?ルアーを改良しているらしいわ。私にはいまいち分からないんだけどね。」

「ふーん。そうなんだ。」


 いつも何かしらの趣味を持ち、楽しんでいる父らしい行動に私は特に関心を持つことはなかった。


「それよりも、貴女、彼氏とか出来たの?昔はよく、『彼氏なんて出来ないから合コンとか行く努力をする』って言ったわよね?今はそれを続けているの?」


 いつも決まって聞かれる言葉に私はゲンナリとした。いい加減、諦めてくれればいいのに。


「…前も言ったでしょ。それはお兄さんに任せるって。」

「でもねぇ。そのお兄さんも望み薄だから言っているのだけど。」

「しーりーまーせーんー。」

「もぅ。」


 そのとき、私の顔を見た母は突然ふっと笑った。


「どうして笑うの?」

「いえ、ねぇ。だって、以前と比べて生き生きとしているから。引きこもりを許した私の判断もあながち間違いではなかったのかなーって。そう思ったのよ。」

「…。そう、かもね。」


 その言葉を聞いた私は、一瞬何も言えなかったわ。

 だって、事実だもの。母は初めから私の考えに賛成してくれたんだから。私は当初、仕事を辞めてこのゲームがしたい、なんて言っても納得してもらえるとは思っていなかったわ。

 少しばかりビクビクしながら父と母に報告しに行ったのよ。そしたら…『好きにしなさい。ただし、体を壊さないように。』とだけ言って許してくれた。あの時のことは今でも嬉しくて、何度も思い出すわ。


「そうよ。でも、それとこれとは別よ?ゲームとかでいい人には出会えなかったの?」

「もーっ!だから、私はゲームでそんな人を探す予定はないわよ!」

「まったく。仕方がない子ねぇ。

 それなら、ゲームでどんな風に遊んでいるのか教えてちょうだい?」

「うーん。そうねぇ。普通よ?普通。敵を倒したり、ご飯食べたり。

 そうそう!そこのご飯が想像以上に美味しくて…」


 い、言えない。言えないわ。ゲーム内で狂い猫と呼ばれているだなんて…!ここは穏便に、そう!穏便に済ませるのよ!


「へぇ。そうなの。そういえば、かずくんから聞いたんだけど、そのゲームって、いろんなアバターを選べるんでしょう?さっちゃんは何にしたの?」


 …これは…嘘つけないわね。まあ、猫って言っとけばいいでしょう。

 因みに、かずくんとは私の弟の愛称よ。基本的に、かず、かずくん、かずきちと呼んでいるわ。本名は黒井数馬。何処にもかずきちの要素はないけれど、適当に読んでいたらなんとなく定着してしまったのよねぇ。


「猫よ。普通に人間をやるのも楽しそうだったんだけど、どうせなら違うのをしようかなぁってね。」


 と、私が言った瞬間に母の目を見ると…妙にキラキラしているのだけど。え。何に対し反応しているのかしら。ちょっと怖いのだけど。


「そうなの!?じゃぁ、プレイヤーで最強の…なんだったかしら。狂い猫?さんと知り合いだったりするのかしら!」

「…いや、そんなわけないでしょ。」


 は、はぁ!?なんでそれを知っているのかしら!というか、私に聞く意味!あるの!?

 …まあ、私自身が狂い猫らしいし。知り合いではないし。うん。嘘はついていないわ。ええ。


「ええー。そうなの?同じ猫だから、知り合いかもしれないと思って、ずっと聞きたかったのに。」

「まったく。そう簡単に出会えるわけがないでしょう。」

「それもそうよねぇ…。」


 …ずっと聞きたかったって何!?ホント、心臓に悪いからやめて欲しいわっ!

 …まあ、別に知られて困ることではないのだけど…。さすがに、ね。羽目を外しすぎている自覚はあるのよねぇ。

 だから、知られると恥ずかしいし。それなら、知られないようにした方が楽じゃない?


「…やっぱり、ゲームは楽しい?」


 そう唐突に言い出した母に私は驚いたわ。でも、これくらいは正直に言わないとね。この歳になってまで親に心配をかけるわけにはいかないもの。


「…うん。特に、今は私、猫だからね。自由気ままに過ごしてるよ。」

「ふふふ。そうなの。あの時は驚いたけれど、やっぱり、反対しなくて正解だったわね。こんなに楽しそうなさっちゃんは珍しかったんだもの。」


 その言葉は今の私を否定するものではなく、肯定するもので私にとってはこれ以上なく嬉しいものだったわ。


「…ありがとね。お母さん。」


 つい、気恥ずかしくていつもは言えない言葉を言ってしまうくらいには、ね。

 母は突然の感謝の言葉にとても驚いたようで目を丸くしていたわ。…あ。やってしまったわ。恥ずっ!


「な、なんでもないわよ!?」

「…もぉっ!この子ったら、いつまでも意地っ張りなんだから!

 それにしても…そう。その様子なら充実した日々を過ごせているのでしょうね。よかったわ。」


 そう言って笑った母を見ると、自然と私も笑ってしまっていたわ。

 でも、その瞬間、玄関の方でガチャッと言う音がなり、誰かが急いで帰ってきたであろうことが分かったわ。…あれは、かずかな?


「ただいまー!山っ!」

「はいはい。言わないの。おかえり。」

「あ。おかえりなさい。」

「あれ?おねぇ、帰ってたの?」


 未だに合言葉を言う癖は変わっていないのね。昔、山と言ったら川と言う、みたいな合言葉があったらしいのよ。それを知ったかずが帰る度に言うようになったというわけ。

 そういえば、かずはこの家に母たちと暮らしているから、私が帰ってきていることに驚いたようね。


「うん。ただいま。」

「おかえり。ねぇ!ワンダーワールドで何やってるの?僕はねぇ…」


 こうして実家での時間は過ぎていく。これがいつもの事よ。

 ときどき、母の愚痴を聞いたり、たまたま出会った兄弟と話したり、父とは…まあ、趣味で何をしているのかを聞いたりする。

 そうしてすぎていく時間はかけがえのないものであり、一人では得られないものであると実感するのよ。


口調がいつもと違うじゃんっとなった方。大正解です!まあ、親の前ではいつもより子どもっぽくなるものなのですよ。

(似た口調になりそうだったので変えることにしました。)

そうそう、また何かしらの記念でサイドストーリー的なのを書く予定なのですが、自分ではどういったものを書けばいいのか分からないので、コメント頂けるとありがたいです。

それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。


〜10/11 AM1:20 後半の継ぎ足しをしました。まだ物足りないという方はコメントください。努力はします。〜

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