表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

天才と凡人

作者: 鶯

 この世には天才と凡人がいる。天才は難しいことでも簡単にやってのけ、凡人は何度説明されてもそれを理解することができない。俺はその凡人の1人である。友人に天才と呼ばれている人がいた。とはいってもあの時は中学生だったから些細なことでも天才と呼ばれていた。例えば部活をやっている時、全く同じ練習をして先生からのアドバイスを貰いしっかりとした食事や休養をとって試合当日には絶好調だったとしても必ずその天才には負けてしまう。他の例でいえば、テストの勉強をする際に同じように教科書やプリントの必須単語などをまとめ、それを同じ期間で覚える。俺と同じく凡人の友達は俺と同じぐらいの点数をとっているが、天才は簡単に100点をとってしまう。周りから見たら俺達のような凡人の努力が足りていないと言うだろう。俺の周りの大人たちも「才能を言い訳にする暇があるのなら勉強をしなさい。」と責めてくる。だが、その天才に「何でそんなに良い点数とれるの?」と質問したら当然のような顔をして「え?1回見たらある程度覚えるからそれを3回ぐらい繰り返したら全部覚えるよ。」と言われた。俺はその時本気でその才能が恨めしいと思った。でもそれを口に出せば俺は感じの悪い凡人に成り下がってしまうから無理矢理に笑顔を作って「さすが天才は違うなー。」と適当にやり過ごした。

 今俺は天才は妬ましい存在だという話をしたが、俺は天才にも大変なことがあるのだと知っている。もしかしたら矛盾するかもしれないけど聞いてほしい。

 俺達が思っている天才とはどのような存在なのだろうか?何でも完璧にこなし不可能なんて存在しない人だと俺は思っていた。でも蓋を開ければ 天才はもっと弱い人間だった。俺がテストで天才に10点以上差をつけられたときに、親に「あの子は100点をとれているのになんでお前はとれないんだ。」と怒られた。まぁ確かに天才といっても人なんだから俺にも100点をとれる可能性がないわけじゃなかった。ただそんなことで俺が怒られるのなら天才にもうこれ以上100点をとるなと言いたくなった。でもその次のテスト期間に俺はすごく青ざめた表情で勉強している天才を見てしまった。俺はその理由をなんとなくだがわかっていた。これまで100点しかとってこなかった天才は次も100点をとって当たり前なんだと親や周りの人間に期待され続けている。だから、きっと俺達のような凡人よりも天才の方が崖っぷちなんだと思う。最初にも言ったことだが、これは中学生から見た天才だから本物の天才のことはわからない。本物の天才ならもしかしたらそんな悩みを持ったことが無いのかもしれない。逆に同じような悩みを持っているのかもしれない。だが、中学生からしたらそのプレッシャーは想像以上に重たいものだったのだろう。その後テストが返ってきたが天才は初めて1門間違いの98点をとってしまった。まあ人間だからミスをするのは当然なんだなと俺は少し安心していた。しかし、その時に教師の言った一言が今でも忘れられない。「ずっと100点をとってたのに。これじゃあ俺の授業が悪かったみたいになるじゃないか。」と笑いながら言いはなった。俺はその言葉を聞いた時に屑だなって思った。でも今思えば100点以外をとった時に安心していた俺もその屑の1種類だったのだろう。ただ、俺は今でも天才は嫌いだ。それだけは変わらない。でもそれ以上に今は人の苦労や努力を知らずにデリカシーの無い台詞をペラペラと語る屑が嫌いだ。

 天才と凡人はきっと相容れない存在なのだと思う。凡人からしてみれば天才の悩みは少し自慢のように聞こえるかもしれないし、逆に天才からしたら凡人の会話はつまらないものなのかもしれない。まあ結局何が言いたいんだって話になるんだけど、めちゃくちゃ簡単に言えば俺は天才と凡人は受け入れあうことはできないと思う。表面上では揉め事を起こさないように何も言わないかもしれないが心のなかでは俺みたいに妬んだり羨んだりしているかもしれない。凡人は天才と比べられるのが嫌いだ。でも天才は凡人のように普通の点数をとるのを羨ましいと思う。だが、これだけは誤解しないでほしい。決してどちらかが悪いと言っているわけではない。天才も凡人もどっちも正しいからこそすれ違いが起こるんだと俺は思っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ