第8話
「はぁ......」
ノアを追い出した後、疲れた俺はベットで寝転がり、ため息をつく。
「全く、変な奴に見つかったモノだ。それにお世話係って......絶対になんか起こるわ!」
顔は良いのに性格がクソ残念過ぎる。とそんな事を思っているが時間は過ぎない。
「ゲームやネットさえあれば時間を潰せるんだが......」
などとインターネット依存症がよく言いそうな事を言う。
「アイツいま何してんだろ......俺が聞かれたら、異世界で勇者やってます。って言えるんだよな…...ははは......」
親友の事を思い出し、乾いた微笑みで冗談を言う。
「ああ。する事ないし、スキルポイントも無いから何も出来ないな......っと?」
トウヤは起き上がる。すると部屋にあった机に置かれているモノが目に入る。
「ペンと紙か。......そうだ!」
トウヤは何かを閃いたかのように机に近寄り、ペンと紙をとる。
ペンは羽根ペンだし、紙は少しゴワゴワしており、現代のモノとは全く別物。
トウヤはペンにインクを補充した後、紙に書き始めた。
「難しい......」
慣れない羽根ペンに苦戦しながらもペンを書き進める。
「はぁ......これぐらいか」
トウヤが書いたのは思いつく限りの料理や計算式。
「記憶はやがて消えるが紙は残る......出来るだけここで書いて置かねば......」
トウヤは記憶の限り、頭を捻る。その時、ドアからノック音が聞こえた。
「トウヤ様、ご夕食の準備が出来ました。」
「5分待ってくれ」
ノアの声がドアから聞こえる。だが俺は集中しており、"あの"ノアの声だと言うことを忘れていたのだ。
ドアには鍵が掛かっており、鍵開けしても、カチャッとなるはずだ。さっきも鳴ったのでなるはずだと思い、今出た案を紙へと書いていく。
「ふぅ......」
「っ!?」
耳元に掛かる息。トウヤは驚き、すぐさま後ろを振り返る。
「官能小説ですか?えへへ......!読ませてくださいよぉ〜~!」
そこにはなんとドアの向こうにいるはずのノアが居たのだ。
「って!違うわ!!」
「えへへ............えへへへ............」
それにツッコミを入れるがノアはモジモジしながら恍惚の表情をし、妄想に勤しんでいる。
「ああ、もういいや......下に行くぞ。」
「ええ?もう良いんですか?せっかく二人っきりなのに......」
「さっさと行くぞ」
そんなノアを放置して俺自ら、1階に夕食を食べに行く。それにノアが後ろから追いかけて来る。
「トウヤ様ぁーー!」
「ああもう、鬱陶しいぃーー!!」
ノアはトウヤの腕に抱きつくがすぐさま、振り解かれる。
「むふふっ!離しませんよ~!」
再びトウヤに抱きつこうとするノアを対処しながら、トウヤは向かっていく。それで1階に着いたのだが......
「トウヤ様がお着きになりました。トウヤ様。どうぞこちらに......」
そう、ノアがキチンとしており、対応も完璧な事。コレを見たら誰だって言う。彼女が清楚で可憐なメイドであるという事を。
「......」
さっきのを見た俺は複雑なのだが…...
そう思いながら無言で席へと近付く。
「遅かったわね」
「......」
そこには、動きにくそうなフリフリが多い赤いドレスを着たロザリーと先程のことなのか、着替えた服装が恥ずかしいのかは分からないが、ラフィーはピンクのドレスを着て恥ずかしそうにしている。
「色々あってな。」
「そうなのね」
トウヤは席に座る。席は6人掛けのテーブルに向かい側にロザリー。横のはラフィーが座っている。
「お待たせしました。」
執事やメイド達が料理を運んでくる。そう、ノアも含めてだ。
俺はそのノアを凝視した。
「......」
「......」
「......」
俺とノアの間に沈黙が流れるがノアは至って真面目に黙々と料理を運ぶ。一瞬顔が緩んだ。と言うより顔が崩壊したというレベルに近い。
そして、そのままトレーを持ってどこかへ行っていった。
「おおっ......」
「はわわわ.......」
運ばれた料理。ソースで彩られた皿に乗る赤みがほんのりとあるステーキや海老やトマト使われたスープ。
肉汁滴るソーセージ。フランスパンやその他、パスタやサラダとワイン。
ワインはロザリーやラフィーの所にもある為、お酒は二十歳までと言うルールは無い。だけど罪悪感があるので少し遠慮しておく。
「美味い。」
「......トウヤしゃん~~!」
隣を見るとラフィーが酔っており、ワインの入ったグラスが空になっていた。
「......今後、飲ませないようにしないとな」
それでラフィーを放置して、手を進める。
「こんなぁ......ベットでわぁ~〜一人でわぁ......寝れましぇぇ~~んッ!」
「......」
ああ、ステーキ美味い。
「トウヤしゃ〜ん~~!一緒に寝まふぉ〜~!」
ああ、フランスパン。ふわっとしてて美味い。
「えへへへへ~~~~......」
「ふぅ......美味しかったな」
「少しはかまって上げなさいよっ!」
ラフィーが酔ってひたすら俺に話しかけているのをスルーし、食べ進めて食い終わったのだが、ついにというかようやくロザリーが話し掛けた。
「いやぁ......逆効果だからな。後は頼むぞ」
そういって俺は部屋に戻っていく。
「ちょっとっ!......これ、どうすればいいのよ」
「俺じゃあどうしようも出来ん!頑張れ!」
そして、俺はその場から去って行くのであった。
それで部屋に戻ったのだが、ベットに謎と言うか中身に予想がついている膨らみがあった。
「......」
それにトウヤは無言で近付いていき、毛布を剥ぐ。
「......何してんだ?」
「......」
そこには、眠ったノア。
「はぁ......起きろ」
俺はノアを揺するが全く起きない。
「起きろって!」
声を大きめにして揺するが起きない。
「......」
どうやら微塵も起きる気が無いようだ。
「はぁ......」
そして俺は机の上のあるペンを持って。先程の作業に戻る。
「ご............く.......そ...........こそ......」
微かにノアの声が聞こえた。だがその声がうまく聞き取れなかった。
それで俺は振り返る。
「......起きてんなら早く廊下出ろ」
「......へっ」
無言のノアを俺は起き上がらせようと肩を掴んだノアの目が開き、口元がニヤッとしたその瞬間!!
俺は宙に投げ出され、ベットへとダイブする。
ベットへとダイブするという事は、ベットにいるノアの真上に落ちる。腕によって引っ張られてる為、確定だと言える。
「三度目の正直ってね!これ以上のチャンスは見逃さないですよ!」
「ふぐっ!?」
そして俺はノアに抱き着かれるのであった。
「は、なっせ!」
「断る~!」
そして俺はノアとベットの上で取っ組み合う。
「っく!」
「無駄だよ!」
「おまえっ......レベルはっ!なんだっ?」
「お、と、め、のっ!秘密ですよ!」
ノアのその体では有り得ない力でトウヤと同等。いや、彼女は息切れ一つ起こしやしない。同等では無くそれ以上だ。
「えへへ......な~にしてりゅのぉ?混ぜっふぇ~~!」
そこに新たなる変態。いや、ラフィーがベットにダイブしてくる。
「邪魔しないでよ」
「えへへ......トウヤしゃん〜〜!」
「おわっ......!ってナイスッ!!」
飛び込んだラフィーはベットにダイブするがノアを俺だと思ったのか、そのまま抱き着き、ベットから落ちていく。それで俺は寝転がった状態から起き上がると目の前にはロザリーが居た。
目を手で塞いでいたがその隙間からガン見している。それと目が合い、ロザリーが口を開く。
「......ウチの別荘でなぁーーにっ!!やってんのっ!!お前らっ!!正座っ!!」
「っく、俺は何もしてないのにっ!」
「口答えしないっ!」
そしてロザリーは俺、ラフィー、ノアを床に正座させる。
「なんでああ、なったのっ!!答えなさいっ!」
そして、説教女による説教が始まったのである。ああ、夜は長いな。
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「ーーーーだから。それで何故、俺が土下座を......」
「黙りなさい」
トウヤが正直に話した後、ロザリーは正座のトウヤを蹴る。
「っえ!?」
「まずねっ!あの鉄壁人形メイド神がアナタに自分の欲のままに襲いかかることは無いっ!よってっ!死刑っ!」
ロザリーから死刑宣告された俺は意味が分からない所が何か聞き返す。
「ちょっと待てっ!?鉄壁人形メイド神ってなんだよっ!?」
「鉄壁人形メイド神。それはノアの事よ。ノアはハイエルフでレベル140を超える化け物にして、王家に仕えているメイド。いや、仕えてた。だったね」
「ふぁ!?レベル140!?」
「ノアはその圧倒的レベルで敵を蹴散らし虐殺するメイド。何を言っても無表情を突き通し、何にも無関心。それで鉄壁人形メイド神という称号がつけられた。それがその子よ」
そういったロザリーはノアを指さす。
「なにそれ強い。勇者要らないんじゃね?」
「出ないと、物語は進まないからです。」
トウヤの言葉にノアが謎な言葉を無表情で真剣な顔で言う。
「ノア......おまえは何を知っている?あと、真剣で気持ち悪いからやめてくれ」
「未来。それは無理です」
トウヤはノアに問いかけ、答えを聞いて頭の中で考え出す。が。
「はいはい、そこまでよ。話がズレている。も、ん、だ、い、はっ!なんでノアがトウヤに抱きついていたか、よ!!」
「本人が抱きついてきましたっ!」
「神に誓える?」
「はっ......」
俺にとって神の存在を思い浮かべる。俺にとっての神。それは............変態だった。
「ちかっ............いません!!」
そう、俺は言い切ったのだ。
この後、俺は冤罪をくらって、ビンタをくらいました。