第7話
起きると横にいたロザリーは正面に戻っており、膝を抱え、ブツブツと自分を否定するかのように言葉を永遠と繰り返す。
「......私何してたの......私何してたの......私何してたの......私何してたの......私何してたの」
よくあるよくある。同感出来る光景だわ。自分が間違った事をやってしまったらたまになるよね。
そして、その光景を人に見られると余計恥ずかしい。
という事で空気を読める俺は二度寝します。
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「......お............って」
微かな少女の声。それと自身の揺れ。それにより、トウヤの脳が覚醒する。
「起きてってば!」
「ふぁ......ここは......?」
細めている目に見える紫髪。ロザリーだ。俺はロザリーに現在地を聞く。
「もうセレストの中よ!トウヤってホント、何度起こそうとしても起きないんだから」
「んぁ.....?」
俺は馬車の窓から外を見る。
そこに広がるのは空と同化した屋根達に白色の雲を模したであろう壁。
そう、建物全てがその色だ。高い塔から見下ろせば、地上に出来た大空と言ったところだろう。
「おお......」
「綺麗でしょ?」
と、ロザリーが言う。確かに綺麗な街並みだ。
「ここは帝国有数の観光地。王都からもかなりの観光客が来るわ。」
「......なるほど。だから馬車が結構多いんだな」
トウヤは視線を下に落とすと前と後ろには大量の馬車が走っている。
「これから私の家の別荘に向かうわ。ちょっと離れているけどいい場所よ」
そういい、今まで大きな通りにいた馬車が小道に進む。
ラフィーを見ると馬車の壁に寄っ掛かり、俺にずっと体重を預けた事により、プルプル震える。俺が何を言っても逆効果となるだろう。
「なあ」
「なにかしら」
そういえばロザリーの爵位はどのぐらいの爵位なのだろうか。
「ロザリーって貴族だよな。爵位ってどれくらい?」
え?そもそも俺が爵位の位がなにだとか分かるって?残念だったな。中学時代に厨二病四天王の一角の自称亡国の貴族が言ってらした。っく!蘇る記憶っ!
「ぐふぁああああああああ!!」
「......無よ。鎖となりて、かの者を束縛せよ!〈バインド〉......ふぅ。......伯爵よ」
ロザリーは発狂するトウヤを一度見たため、迅速に縛り上げる。トウヤは馬車の床、ロザリーの足元に倒れた。
「っ!?ふがァあああああああ!ふぐっ!ふぐっ!」
しかし、その縛り上げた魔法はトウヤが作った魔法でトウヤに余計にダメージを与える。そんなトウヤにロザリーは懐から出したハンカチでトウヤの口と鼻を塞いだ。
「もう、五月蝿いわね!なんで質問してきて自ら暴れるのよ!アナタ、いつもコイツこんな風になってるわけ?」
「う、うん。そ、そ、そ、そおです…...かねぇ......?」
ラフィーに向けて言われたロザリーの言葉に挙動不審に返す。
「てか、アンタ達ねぇ......これじゃラチがあかないわ。無は汝を停止させる。無に我が命じる。停止せよ〈マテリアルロック〉」
「ふごっ!ふごごっ!」
トウヤはハンカチによって塞がれている口によって喋れない。もう、既に正気を戻し、復帰出来る時間なのだが伝えられない為、ずっとバインドされている状態で行動不可。
それから更にロザリーはハンカチに魔法を掛ける。マテリアルロック。それは物質を固定させる魔法である。
「ふぅ......」
ロザリーは席に座り、寛ぐ。
「勇者が呪いでこんなんじゃ、世界を救う事なんて出来ないわね。先に呪いを解かないと......」
ロザリーはそう、しばらく考え事をする。それが無意味であると気付く日はいつになることだろうか。
しばらく時間が過ぎると、馬車の揺れが止まった後、ドアがノックされる。それにおれを踏みながら、ドアを開ける。
「ふぐっ!?」
「何かしら?じいや」
「別荘にお着きになりました。どうぞ、コチラです。」
年をとった老人の執事は別荘に案内する。
「知ってるわ。ここに何度来たことか。」
「そちらの方々は......?」
と、床に倒れているトウヤと馬車の壁に寄っ掛かってプルプルしているラフィーに視線を送る。
「ああ、〈解除〉。アナタは......大丈夫そうね」
トウヤに掛かった魔法を解き、ラフィーを見ると、トウヤを踏むのを避けて馬車から出てくる。
「よいしょっと......」
「土で汚れたマントと服は幾ら踏んでも踏まなくても変わらないのになんで避けるのかしら......」
起き上がるとラフィーがトウヤの上を通る様子を見ていたロザリーが言った。
「おいおい、失礼だな!服はな、服は変わらないよ。そりゃそうだ。だが、俺自身が傷つく。」
「あら、ごめんなさい」
文句を言うとロザリーに軽く謝られる。
「全く、もう......」
軽くだけれど謝られた為、言い返せなくなった俺はこの話を止めた。
「では、私は勇者様御一行に別荘を案内、致します」
「頼むわよ」
そして、ロザリーは別荘の方に行った。俺はその時にやっと別荘を目に捉える。
「おおっ......」
そこには大きな空色の屋根、白色の壁。それに街であまり見なかった大きなガラス板が貼られたお屋敷。
外は広い庭があり、バスケットコート程の空間がある。
「では行きましょう。勇者様とお嬢様。」
「ああ」
「ん......」
そして俺は執事と横になって歩くがラフィーが俺のマントの端を摘んで移動する。
確かに男性恐怖症には酷だろうなぁ......
「そのお嬢様は......?」
「男性恐怖症でして......まあ、お気になさらず。」
「なるほど......では、ご案内を......」
「ああ。」
屋敷内へと入ると白い石で造られた大きなエントランスと目の前には、2階への階段。
「右は使用人専用で左はご夕食や朝食の際にご用意をさせて頂く場と遊技場、風呂場などが御座います。」
「ああ。」
「夕食の際はまた、ご案内致しますので続いては2階です。」
2階への階段を登っていく。
「はい。右が客室です。三部屋あり、奥にはトイレが有ります。お好きな部屋へお泊まりください。左には旦那様や奥方様。ロザリー様がお泊まりになられる所でございます。」
「なるほど。では俺は真ん中の部屋。ラフィーは......一番奥ですかね」
ラフィーを見るとブツブツなんか呟いている為、勝手に決めておく。
「では、案内はこれで終了でございます。服を後でもって行かせますのでまた夕食の際は呼びに行きます。」
そういい、執事は去っていった。
「ラフィー?」
「ん......」
「ラフィーは奥だからなー」
後ろにはマントの端を摘んでいるラフィー。ラフィーを奥の部屋へと連れていったのち、自分が止まる部屋である真ん中の部屋に向かう。
ドアを開けると質素だが高級な物が並ぶ部屋。ベットがあり、座ろうとするが、汚れた服で土が着くと思い、バックを置いて、しばらく、立って待っているとノックの音がした。
「どうぞ」
「失礼致します。」
入ってきたのは黒髪のメイド。ぱっつん前髪で肩にかからない程度に切っていて、清楚だ。衣服を持ってきてくれたようだ。
「お世話係へとなりました。ノアです。」
「ああ。俺はトウヤ。リュウザキ・トウヤ」
俺の好みの容姿だ。そして小柄で美形。あと、性格が良ければ完璧では無いか?
「はい。トウヤ様ですね。では衣服のお着替えをさせて頂きます。」
ノアは俺に近づいていき、俺は次の行動に驚く。
「あの、なんで脱がせようとするんですか?」
「使命ですので」
そう言いノアは俺のズボンを脱がせ始めたのだ。俺は必死でそれを上に上げる。
「結構です。服だけ置いて言ってください。」
「結構です。」
俺の結構を断り、ノアはズボンを全力で下げに掛かる。
そこにノックをせずに人が入ってくる。
「と、と、と、トウヤ様!あ、あの部屋に一人では落ち着けませ」
それはラフィーだった。ラフィーの言葉は止まるそれはこの現場を目撃したからだ。
「チッ! ......キャー勇者様ぁー私の前で下半身を露出させようとしないで下さいぃー」
「ねえ!?今、舌打ちしたよね!?あと露骨過ぎる棒読みやめい!」
言葉と裏腹にノアは現在進行形でズボンを下げている。
「で、で、で、出直してきまふ!!」
そして、ラフィーはこの場から退散。ドアがバタンッしまって部屋に戻っていった。
「チャァーンス!」
「何がチャンスじゃぁーーーー!!」
俺はノアを振りほどき、廊下へ出す。あと鍵があったので閉めとく。
「ふぅ......なんとかだな。というか、一体あれはなんなんだ。」
とりあえず、ノアが来る前に着替える。
着替えると黒いタキシードと蝶ネクタイとなった。
鍵を開けようとドアに近づく。
カチャッと音が聞こえ、扉が開く。
「ッチ!一足、遅かった」
「聞こえているぞ?おまえは何者だ?」
鍵を開けたのは。ノア。それに問いかける。
その最中にピロンッと通知が来る。今のかっこよかったの?
「私はただのメイドです!!」
「嘘つけぇええい!!」
「いや、本当のメイドなのです。」
「いやいや......」
ノアは自分をタダのメイドと言っている。明らかに嘘だ。
「勇者となればいつかは成る、この世界の救世主。その家族となれば未来栄光、将来が約束されたモノとなります。玉の輿、それは女性誰しもが羨むことでございますがそれは別として私は!一目惚れをしたのです!!アナタに!!」
「俺は言っておくが、奴を殴る為に強くなろうとしているだけだ。そんな性格の悪いやつについて行かない方がいい。」
そういってノアを着替え終えた服を持たせ、ドアの鍵を閉めて、ドアを押さえておく。
「はぁ......」
そうした後、トウヤはため息を着くのであった。
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廊下ではーーーー
「いやぁ......トウヤきゅん、カッコイイねぇ。早く、お婿さんにしたい......!!......まあ、まだ僕は遊ぶけどね!」
そう、ノアは呟くのだった。