第2話
「くっそ、先にコイツを黙らせてやらー!」
トウヤはそう思い、きっかけを見つける為に走り出した。
そこには、先程のスライムと剣を持ったピンク髪の革の防具をつけたちんちくりんな少女。
「きたっ!うおぉぉぉ!」
そしてそれに全力疾走。少女の肩を叩く。
「はぁ......!はぁ......!嬢ちゃん!お前は先に行けっ!」
「えっ?でも最弱の魔物、スラ」
少女の声を遮り、トウヤは言う。
「いいから先に行くんだっ!!」
行ってくれ!マジで!あっちへ行け!!このあと、謝りますからっ!!ホント、ホントひと逃げだけでいいから逃げてください。お願いしますっ!!
「......は、はひ(こ、この人の顔が怖い。......さっさとあっち行こ)」
よっしゃぁああああ!!勝ち確ぅ!これで!どうだ!【物語の主人公】っ!!
トウヤは通知を見る。しかし何も来ない。
「そ、そうだよな......庇って、スライム倒さないとセリフ通りじゃないよな、な?」
そう思い、スライムと対立する。
「......悪しきものには罰を。神より与えられる炎......聖なる炎〈セイントフレア〉」
スライムに直撃。スライムが転げ回る。
「ふぅ......ふぅ......ふぅ............ふ、ふぅ............」
トウヤは頑張って堪える。その体は微妙に振動している。
「ふぁああああああああああああ!!」
だがしかし、羞恥心が限界を達しのたうち回った。
そして......
ピロンッと音が鳴る。
正気に戻り、それをゆっくりと覗く。
レベルが1上がりました。これにより、spが1、加算されます。
「意味無しだったんかい!何この転がり損......」
少し、遅れたがトウヤの姿はマントと布の服、上下。靴は歩きにくい木の靴。
さんざん地面で転げ回ったせいでマントは汚れ放題。外で馬鹿みたいに遊んでいる子供のように泥まみれである。今すぐ脱ぎたいがこれから転げ回らないとは言えないので仕方なく着る。
するとその後に突然、ピロンッと音が鳴る。
「おっと、【物語の主人公】さん。ホント、ツンデレなんだから〜」
それで通知を見ると…...
【物語の主人公】の効果により、spが1、加算されます。
※あの子、アナタの顔見て引いてましたよ
「ふぐァああああああああああああああああ!?」
それは、トウヤの今期で一番の後悔だった。
「他人の心情を伝えられるのがここまで恐ろしい事とは......」
トウヤはしばらく四つん這いで後悔しました。
「って......スライムが落とした石。さっきのを回収し忘れてた......」
そしてトウヤは青い石をポケットの中に入れる。
「さて......ステータスを確認するか」
[トウヤ・リュウザキ]
【性別・歳】男・17歳
【Lv】3
【職業】勇者
【称号】〈アルリアの未来のお婿さん♡〉〈真なる勇者〉〈物語を始める者〉
【スキルポイント】残り3
【スキル】〈聖炎魔法 Lv.1〉
【ユニークスキル】〈物語の主人公〉
スキルポイントが3あるな。前みたいみたいにあの女に使われる訳には行かん。早速使おう。
[スキルポイント]スキルを習得する為に必要なポイント。1Lvで1sp
スキルを習得する際、そのスキルにきっかけすることが必要です。
習得したいスキルは検索して探してください。
〔検索する名前を念じてください〕
っとスキルポイントの説明とスキルの習得についての青いプレートが出てくる。
まず俺が取りたいのは身体強化系。そして何より、精神耐性系だな。精神耐性の方が重要だしそっちを先に調べよう。
そ
〔耐性〕と調べる。
検索結果(習得可能スキル一覧)
・毒耐性
・麻痺耐性
・盲目耐性
・電気耐性
・火耐性
・精神耐性
・煽り耐性
・羞恥耐性
この他は現在。きっかけが無いため、習得できません
ふむ......思った通り、精神耐性が......って!?羞恥耐性がある!これはいいな!これで俺は地面をのたうち回る事も無くなるぞ!
羞恥耐性を取得しよう。
そう決定すると羞恥耐性の表記が大きくなる。
習得しますか?sp消費、1 はい/いいえ
とか書かれているため、はい。と頭の中で選択。するとピロンッと通知が届く。
〈羞恥耐性Lv.1〉習得しました。
横のステータスを見る。
[トウヤ・リュウザキ]
【性別・歳】男・17歳
【Lv】3
【職業】勇者
【称号】〈アルリアの未来のお婿さん♡〉〈真なる勇者〉〈物語を始める者〉
【スキルポイント】残り2
【スキル】〈聖炎魔法 Lv.1〉〈羞恥耐性Lv.1〉
【ユニークスキル】〈物語の主人公〉
と書かれている。よし。習得した。次は強化系だな。
次は強化と検索する。
検索結果(習得可能スキル一覧)
・身体強化
・魔力強化
・魔法強化
・五感強化
なるほどというか、魔力というものがあるのか。ゲームの割にMPとか書いてくれないんだな。
とりあえず、魔法は間に合っているので身体強化と五感強化を習得する。
ポンポンと選択して〈身体強化Lv.1〉〈五感強化Lv.1〉を習得した。そしてsp、2消費したので今のspはゼロとなった。
レベルをあげるにはどうするんだろうな......?
そう思ったら、横に説明の書かれた青いプレートが出てくる。
[スキルのレベル上げ]スキル一つ一つには熟練度があり、それを超えるとレベルが上がり、必要熟練度も上がる。
ほう。熟練度って事は例えば剣術だったら、ひたすら素振りでもいいのか。なるほど。
「そういえば、あっちにピンク髪の子が走っていったな。あっち側に街があるのだろうか…...?」
とトウヤはピンク髪の子を追い、平原を歩いていく。
しばらく歩くがスライムには遭遇しない。おそらくだが、あのピンク髪の子が倒したのであろう。
安全に進めて、ピンク髪の子には悪いが助かった。そしてそこからずっと歩く。するとそこには......村があったのだ。丸太の外壁だがとても頑丈そうだ。
そこには門らしき開閉する入口がある。門番はいないがやぐらに人は居る。
そこへ近づこうとするとやぐらにいる者から低い、おそらく男性の声が掛かる。
「そこの者!!貴様!ラフィーが言っていた不審者では無いか?すぐさま去るか、貴様の横にあるステータス水晶にさわれ!」
やぐらにいる者は革の防具を着ており、弓に矢を継がえ、こちらに矢先をこちらに向け、すぐさま撃てるようにしている。
「......絶対あの子だわ」
ピンク髪の事を考えながら、ステータス水晶とやらに触る。それはおそらく、名前通りステータスを表示するものだろう。まあ、ステータスぐらい見せてもいいか。
チラっとやぐらにいる者を見て、右手で水晶に触る。
「はぁ!?」
やぐらにいる者が弓と矢を引く腕が緩まり、自然と矢が下がる。
「勇者だと......!?貴様......いや、勇者様はその場でお待ち下さい!!」
そういい、やぐらにいる者が下へ降りて誰かを呼びに行く。
数分たった頃だろうか。村の入口から誰かが出てくる。それは白髪のじっちゃん。80歳ぐらいだろう。
「おぬしが勇者様か!まさかここに勇者が召喚なされるとは......早めに処理しとかねえとなぁ?」
突然、白髪のじっちゃんの声が青年の声となる。
「はぁ!?それは敵のセリフ。敵だな!てか、異世界ハード過ぎんだろ!少しは休ませろ!」
トウヤは戦闘態勢......というか遠距離攻撃しか出来ないため、逃げ腰となる。そしてトウヤは気付く。
「あれ?もしかして!?カッコイイセリフのチャンスだったんじゃね!?」
言うのをというか、そもそも考える自体が出てこなかったよ。カッコイイセリフ。
「何を言っている? 我から行くぞ」
白髪のじっちゃんが黒い豹へと変わり、そこから五メートル程の巨人へと変わる。髪は白髪のままだがよぼよぼだった体はムキムキ。肌には黒い何かが波打っている。
「くっそ!?バランス壊れ過ぎ!こんなん序盤に出ねえよ!?」
トウヤは村から離れ、巨人から逃げる。が歩幅の差かすぐに追いつかれ、軽く蹴られ、吹っ飛ぶがすぐさま起き上がる。
「ぐはっ!!......くっそ!」
「この程度かぁ?勇者よ」
「まだ......まだだ!!くらえ!!これが、俺の全力だっ!!悪しきものには罰を。神より与えられる炎!聖なる炎〈セイントフレア〉」
白いバスケットボール程の白い火の玉が放たれる。
「がぁ!!っぐ!?召喚されたての勇者が聖炎魔法だとぉ!?ありえん!」
巨人の体に向けて放つが右腕によって阻まれるしかし、その腕は黒いモヤとなって消滅した。
「しかし、打たれるのが分かるのならば避けるのは容易。そして聖炎魔法は消費魔力が多い。貴様の負けだな!」
「ぐっ!左足がっ!!これでは......もう......」
腕は消えたが巨人は平然としている。そしてトウヤは足を痛めたポーズとる。
「うむ。殺された者の名前を知らないのは実に酷だ。我は57柱、オセ。…...悪魔だ。」
オセ......豹の姿をしてし変身能力がある悪魔。聞いた事が......いや、中学の厨二の友達が言ってたヤツや。それで村長に化けていたのだろうか…...?
「っく!と、思うだろ?......残念だったな。チェックメイトだ。後ろを見ろよ後ろ。ちなみに足は痛くありません。」
巨人、オセが後ろを見た瞬間、オセの元へ突っ込む。
そこに百ほどの矢が放たれ、五十程がオセを貫く。それを避けるために盾となるオセの元へ駆け寄ったのだ。
「勇者様!」
「ああ!」
そこには弓を持った村人たちと見覚えがあるのはやぐらにいる者とピンク髪の子。
「老人で騙せても、巨人ではただの魔物だぜ!オセ!天罰だ!お前にはふさわしいだろう!悪しきものには罰を。神より与えられる炎!聖なる炎〈セイントフレア〉」
「ぐわぁああああああああああ!!」
オセの体に白い炎が至近距離で直撃し、オセは黒いモヤとなって消滅した。
正直、村人が来てくれてよかった。じゃなかったら死んでいたかあの女に助けられていただろう。
村全体が乗っ取られていたら詰んでいたがオセの詰めの甘さが仇となったな。
そして俺は......
「ぐはっ!もうダメだ......!ぐわぁああああああああああ!!」
ピロンッ
そして、地面へと体を転げ回る。これはもう一日中続くかもしれない......
通知が来たが俺はそれの音を聞けない程の羞恥心がMAXになっていた。
「の、呪いじゃあああ!!勇者が呪いにかかったぞぉーー!!聖水をもってこーい!」
「悪魔の仕業だぁー!!」
「取り押さえて、神官を連れてこい!!」
「駄目だ!鈍器で誰か気絶させろぉーー!!」
そして俺は強い衝撃と共に気を失うのだった。