異世界にポイ捨て
真っ二つに分かれた校庭は更に枝分かれするようにどんどん地面にヒビをいれていく。
生徒たちは声にならない声を上げて叫んでいる。必死に助けを求める。
「たすけてー!」
しかしどんなに声を上げても助けは誰も来ず、どんどん地面に亀裂が入っていく。
そして、一ヶ所が崩壊し、生徒たちを巻き込みながら崩れる。生徒たちの足場は崩れ、足は地面出なく、空気と接する。
「いやだぁーーー」
「死にたくないよーー」
「たすけてーー」
「いやぁーー」
崩壊した地面の上に居た生徒たちは空に投げ出され、落ちていく。
崩壊した地面の下には大きな森が見える。マーデルの言うトテンの園というのは空にあり、和也たちはそこにいる。
そして唯一の足場は崩れ始めている。その先は言わずとも想像出来る。地面が無くなれば堕ちる。そしてこの高さからパラシュートも無しに落ちれば間違いなく死ぬ。
周りでどんどん地面が崩壊して、生徒たちの叫び声が聴こえる。
遂に和也の足下の地面にも亀裂が入る。
「やばっ」
和也は慌てて周りを見るがなすすべなく、あっという間に足下の地面は崩壊していった。
「うわぁぁぁぁぉぉぁぁ」
足下の地面はなくなり、和也にとっては今までに感じたことのない重力で石のように地面に落下していった。
落ちながら物凄い突風に煽られたことで、和也はぐるぐる体全体を回しながら落下していく。落下しながら、黒いフードを被った女の子も崩壊に巻き込まれているのが見えた。
「あの子はまさか。ってかなんなんだこりゃ~もうどんだけ~~」
周りの景色は落下速度が早すぎて視界がぼやけているため、空の青や山の緑などいろんな色がぼやけてみえる。その間も地面はどんどん近づいていく。
「しぬ~~~」
『と、、とな、え、て、』
和也の心の中に突然声が聞こえてくる。
『唱えて!』
「なんか聞こえたぞ。幻聴か?けどまぁいいや、何を唱えればばばばばいいんだぁ?」
心の中で聞こえる声に疑問を一瞬持ったが何もしないと死ぬというこの状況。頼るしかないと和也は悟った。
『光よ集え、我が衣に』
「光よ集え、我が衣に」
和也は藁にもすがる思いで叫ぶが何も変化しない。心の中でやっぱりダメかと思ってしまう。こんな言葉で何が変わるって言うんだと落胆し、全てを諦めた。そして最後に全ての思いを込めて叫んだ。もう思い残す事がないように腹の底から全力で声を出した。
「こんなことなら、あの子に告白しとけば良かった~~!」
最後の遺言としてはどうかと思うが、叫ぶと同時に和也の回りに徐々に光が集まり、和也の体を黄色のオーラが覆った。