異世界召喚
和也は視線を上から元に戻し、周りを見渡しながら動き周り、善吉たちがいないかを捜した。
そして周りの景色に違和感を感じる。
自分が立っているのは間違いなく学校のグラウンドだ。体育で走りなれたグラウンドだ。
そして目の前にある学校の校舎はいつも通っている学校だ。
けど周りの景色がまるで違っていた。
学校の近くには銭湯があり長くてデカイ煙突が建っていた。けど、どこを見渡しても見当たらない。学校の校舎周りには家がたくさん建っていたがそれも見当たらない。
見えるのは空と小さな緑が見える程度である。
「ここはどこだ?」
和也は思わず呟き、不安がどんどん募っていく。
「ようこそ、皆様」
突然の発声に和也も含めて生徒たちの視線が一斉に声のした方に集まる。
声は校舎の屋上から発せられ、みんなの視線の先には一人の男が立っていた。
その男は初老のような感じで神父のような服装をしていた。
「遠い世界から我がトテンの園にようこそお出でくださいました。私の名はマーデル=クライシスと申します。このトテンの園を管理している賢人の一人です。」
遠い世界?トテンの園?
校庭のいるものたちの頭の上に?マークが浮かぶ。未だに状況が掴めているものは恐らくいないだろう。
みんな状況が理解しきれていないからこそ、泣き叫ぶ者や暴れ叫ぶ者がいないのだろう。
けれど、生徒たちの反応を気にせずマーデルは話を進める。
「しかし、困ったことにですな。我々の求める天力を持たない方々が多数こちらに来てしまったようです。まぁ大勢の方々を一斉にこちらにお招きしたので致し方ありませんがね。」
天力を持つもの?持たないもの?
和也はマーデルの訳のわからない話を集中して聞いていた。それこそ一字一句聞き逃さないように集中して聞いている。なぜなら先程周囲を見渡してここが自分の今までいた場所ではないということに気づいてしまった為、それを受け入れられず、善吉たちも見つけられず、込み上げてくる不安を押さえる為に何かに集中する必要があったからである。
「あなた方に用は御座いません。天力を持たない者はゴミ同然です。なので、ゴミははゴミ箱に捨てさせていただきます。天力を持たない皆様、お元気で。」
そう言うと和也たちに手を振りマーデルは煙のようにフワッと消えてしまった。
そして、その瞬間地面に亀裂が入り、校庭が真っ二つに分かれる。
次回は2月22日の7時頃更新します。