彼氏との悩み 亜紀
待ち合わせのカフェで通りすがりに私を見つけた友人が、少し彼氏の話を聞いて欲しいと言う。
「何? ひとりなの」
「ううん、弟と待ち合わせ。もうそろそろ来ると思うけど」
「あぁ、アメリカにいる一つ下の……ずっといるの?」
「たぶん、長くはいない。少し早いけど、バースディプレゼント持ってくるだけだと思う」
「ふーん、そう」
「そうだ、弟も、さ来月誕生日なのよね。すぐ、同い年になっちゃう。何にしようかな」
「同い年? 弟でしょ?」
「両親、連れ子持ち同志の再婚だから」
「なるほど」
話の飲み込みが早く、これ以上、追求しないでくれるところがありがたい。
頼んだカフェオレがきて、一口すすったところで、話し始める。
彼氏のアパートに行ったときに見つけた女性もの。
これ何? と聞けなくてそのまま帰ってきてしまったという。
「浮気かな、ふた股かなぁ」
カフェオレを冷ますのか、ため息なのかわからないような息をカップにあてている。
「聞けないの?」
「うーん、なんか、怖くて。動転してたし」
彼女はそう言って瞳をふせた。
「怖い?」
なんか意外な感じがした。
この亜紀という高校からの友人はバスケットをやっていて、背が高く、髪もショートで顔つきもきりっとしまっていて美形。だから、女子に人気がある。
でも、クールな容姿とは対照的に性格は猪突猛進。
年上の彼氏にも、猛アタックして、ゲットしたという。
そんな彼女の気弱な態度に少し、驚く。
亜紀は私を見て、弱く微笑む。思わず、大丈夫? と彼女の頭をなでる。
「怖いっていうか、ん、問いつめて、今の関係が無くなるのがイヤ」
「うん、うん」
「好き、だから」
そうなんだ。彼への想いがこんなに彼女を弱くさせている。
それならば。
「私が何気に聞こうか?」
真剣な顔を作り、亜紀をじっと見ると彼女は驚いた表情をし、ぷっと吹き出した。
「朝陽が、彼に? 会ったこともないのに、何気って……」
「いや、亜紀からの話しは聞いてるからさ。全く、知らん相手じゃないわけだし」
亜紀はくすくす笑い続けてる。私はバックから携帯端末を出して、
「どうにかなるわよ。その人のアドレスか電話番号教えてよ」
今度は亜紀が笑いながら私の頭をなでた。
さっきまでの弱々しい表情が消え、すっきりとした顔はいつもの彼女。
「ありがと。朝陽に話せてよかった。もう少し、様子見る。それでどうしょうもなくなったら、助けて?」
「亜紀がそれでいいのなら……」




