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いつかの恋を待ってる  作者: かようこ
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アイスランドスパーとアーモンド 答え合わせ

 アーモンドの木と薄いブルーの石のことを何気に友人の亜紀に話した。


 そしたら、彼女の彼が、アーモンドってねと、豆知識を披露したそうだ。

 石のことは、私もその彼も同じことを思いついていた。

 

 それは、その一週間くらい後のこと。

 瀬戸さんの家を通りすがると、お庭で、相田さんが花が満開に咲いたアーモンドの木を嬉しそうに見ていた。


 玄関が開いて、瀬戸さんと田辺さんが出てきて、そのまま、相田さんと三人で話しを始めた。

 ふと、田辺さんが相田さんに小さい紙袋を渡して、彼女は頭を下げる。


 門から出てきたのは、田辺さんだけ。


 少し歩いて、鉄格子の辺りで止まり、お庭の方を見た。

 その瞳の先には、まだアーモンドの木の側にいる瀬戸さんと相田さん。

 唇をゆがめるように笑みを浮かべ、うつむいて、こちらに向かって歩いてくる。


 そして、立ち止まってる私を見止めた。


 この前と同じ香りが近づいてきて、通りすがる時にあの視線を流すような横目で見て、

「サヨーナラ」


 瞬間見えた、今日のピアスは白い石。


 私の視線に気づいた彼は、立ち止まり、

「アイスランドスパー、だよ」


 すっと、背に力を入れて、私は首を振る。

「……知らない石です。今までのは〝誘惑〟で、今日のは?」


 瞳を見開いて、彼は、そのまま腕を組んで胸を張り、見下すような態度。

 右手の薬指には、ピアスと同じ色の石がついた指輪。


 そして、親指を瀬戸さんの方に向け、

「あのひとが通りすがりの子に、バラの剪定でズバズバ言われたって。やっぱり、君か」


 私はうなずいてから、おへその辺りで手を組んで、お腹に力を入れる。

「好きな色の石で知らない名前だったから、調べただけですよ。パワーストーンかなって」


 口元を上げて、笑っているような表情だけど、薄くした瞳は睨んでるようだ。

「俺の仕事にふさわしい石だったデショ。ホスト、には」

「ですね。で、ここに来るときは、いつも、その石だと、あのひとが」


 私も、田辺さんがしたように、親指をお庭の方に向けた。

 彼は、少し驚いた様に瞳を見開き、顎を引いた。


 そして、私は、ちらっと、お庭を見る。


「友人の彼からも、ひと言ありました。アーモンドの花言葉。アーモンドに花言葉あるとは思わなかった。でも、綺麗な花が咲くから、そうかって」


 亜紀が彼から聞いた話しは、

(アーモンドの花には、〝愛〟のある花言葉があるって。その花は許すことで咲くっていう神話もあるんだって。あと、石〝誘惑〟だけど、愛と友情、心の傷の癒しって意味も持ってるから、なにもかも意味深だね)


 意味深、そう、すべてに意味があるのかもしれない。


 アーモンドもブルーの石もその名前を私に教えたことも、すべて含めて。 


「自分ちで、持て余した〝愛〟の花言葉を持った木をあげただけ。いつも、〝誘惑〟の石をつけて、レッスンに来てただけ、ですね」

 彼はふんっと喉を鳴らした。


「……ゲス」


 ささやくようなその言葉で肩の力が抜けて、微笑む。


「あんな小難しい名前のなんの石か一見でわかんないようなのじゃ、アピールにもならないですよ。アーモンドも、花言葉まではたどり着けない。あのひと無神経ですもん」

 彼は、はっと息を吐くように、笑って、首を振った。

「ずっと、ほったらかしのバラを知らない女が手入れをしてて、なんで? って聞いたら、言いにくそうに、棘が苦手だから、任せてるって」


「指が大事だからですよ」

「そんなの理由にならないね。苦手なのは、バラ自体、俺のこと気づいてるのかもって」


 その通り。百合も、そう思ったから、あんな話になったんだ、今も。


「苦手じゃない、複雑、らしいです」


 これは、田辺さんのじゃない別の話しだけど。


 これで、彼のバラが苦手な理由がリンクした。

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