乙女ゲームの舞台建設を頼まれました
自分は、いわゆるネット小説に出てくる完璧平凡キャラでは無い、もちろん最強系主人公でも無い。
いちおう厨二病者だから、「学校に行く途中で召還してくれないかな〜」と考えた事も一度や二度以上あったし、乙女ゲーをモチーフにした悪役令嬢物も大好物だ。
大好物だけど、
「うちの世界を乙女ゲーに、替えて欲しいんだぁ」
こんな理由で呼び出されると誰が思うデスヨ?
***
まとめると、
私はさっき階段から落ちて死んでしまい、神が自室|(どこぞの汚部屋のような場所)に私の魂を呼びつけ、自分の世界を今ハマっている乙女げーに創り変えてほしいとのこと。チート特典無しで。
もう一度言おう、チート特典無しで。
「はぁ!!?? チートないんかい!!」
叫ぶ私に、ゲームコントローラーを操作しながら投げやりに説明する神。
「あたし、もう創世タイム使いきったから神的チートとかあげちゃた駄目なんだよね〜」
そんな軽いノリなんすか創世って。
全身が黄金に輝いている事以外、神様らしさが1ミクロンも感じられない。
お前は何処のJKだ。
「んじゃ、4649(ヨロシク)」
そう言って神が話を切り上げたので私は慌てた。
「ちょちょっと待て! 私、一般人だよ? チート無しとかガチで死ぬから! おいこら神、待て!」
慈愛に満ちた顔でテレビ画面を見て微笑み神は呟いた。
「人間あきらめが肝心ですわ」
「いやいや、諦めたらそこで試合終了だよ! 私より乙女ゲーに詳しい適任、絶対いるからそっちにしろよ! それかもっと転生したがってる奴にしてよ!」
「チッ」
神は私の言葉を聞き、あきらか「この人間面倒くせぇ」という意味の舌打ちをし、ずっと見ていたゲーム画面から目をこちらに向けイヤホンを片耳外した。
「あんたを選んだ理由は、あんた以外殺……適任が居なかったから。以上。」
「今、『殺』っていったよね? 私が死んだ原因はお前(神)かい!」
「死んでしまった貴方を助けたのだから、感謝してほしいくらいだわ」
飲みかけの缶ビールを煽り、床に散らばっていたスルメをかじる神。
だめだ、人の話聞かない種類の神だ。
もはや諦めつつ抗議してみる。
「乙女ゲームなんてやった事ないんすけど」
「指示するから無問題」
「私が死んだら?」
「魂崩壊するまでリトライよ。資源は大切に」
口の端からスルメを覗かせ、輝くような笑顔で新しいビールを空け微笑む神。
「拒否権は?」
「無いわね」
私は大きく息を吸い、腹を括った。
「分かった、やりゃあいいんでしょ!」
神はにやりと嗤った。
「ふっ、これであの憧れの世界(二次元)が手に入るぜ」
「もう好きにして……」
こうして後の『フォローラル魔法学園』を作った、初代校長が生まれたのだった。
注、いつもは部屋きれいだからね? by神