怪物の企み
ええ。私もあなたと同じよ。
その言葉を聞いた俺は、一瞬理性が吹き飛んだ。10年前も思い続けたあの人が、結婚していいのだと。嬉しかった。本能が俺を突き動かし、彼女の唇を奪う、でも、重ね合わせるだけでは足りない。もっと深く、深くあぁ、なぜ、彼女の唇は、こんなにも魅力的でその体液は、いかなる媚薬をも凌駕する。あぁもっとだもっと。深くあの人に俺を刻みたい。
気付いた。ユイは、俺らとは違う。脆い人なのだ。こんな激情をぶつけたら壊れてしまう。焦った。たった1つの愚かな欲望のために愛しい人を無くしてしまうなんて。我に帰った俺は、口付けをやめ、彼女を見る。ユイは、目を見開き驚愕している。怪我や異常もない、ただ驚きのあまり自分の状況を理解できていないようだった。良かった。彼女は壊れていない。
「ユイ、大丈夫か?」
自然と声が不安を帯びる。その声にユイは、我を取り戻して、
(えっあうん。大丈夫。こんな事始めてだから、どうしていいのか分からなかったの。でも気持ち悪いとかそういうのはなかった。寧ろそういう風に触られて嬉しかった。だからもっと、)
その言葉に歓喜を上げそうになる。今なんと言った。もっとだと、ユイを見ても分かる。嘘は言ってないのに、それなのに信じられない。でも、もう押さえられない。だから、ユイこんな俺も受け入れてくれ、
そう思ったと同時に俺は、意識を手放し。気付いた時には、いつの間にかベットで、そしてその横には、幸せそうに眠っているユイがいた。俺も今までにない幸福感に満たされていた。でも、残念だった。だって俺が触れて歓ぶユイの表情、声色々見逃したのだ。まぁ、仕事は、ここ一年分は済ませてある。じっくり楽しもうではないか。それに、ユイをもっと俺に染めるためにあともうひと段階、そして、俺の激情をぶつけたのに生きているユイの謎を解明していこうではないか。お楽しみは、これからだ。