触れる
ここは何処だろう?
目が覚めると、私は、何かの液体に覆われていた。それは、淡い黄色で.....
って、言ってる場合じゃない。何で私は、こうなったんだ。状況を整理しよう。まず、覚えていること。それは、怪物さんの匂いで眠らされたことだけ。ダメだ。これじゃ。何がどうなっているのか分からない。一旦保留だ。現状把握しよう。と言うか何でそもそも、この液体の中で窒息しないのか?それにこの匂い。眠らされる時とは違うけど、怪物さんの匂いがする。これから導き出される答えは、
(おはよう。ユイ。)
怪物さんの声だ。
反応しようと、挨拶をしようとしたが、
「・・・・」
ダメだ。発音が出来ない。
(問題ない。別に話さなくても思ってくれれば。いい。)
どうやら、意思疏通は問題ないようだ。まず、疑問に思ったことを聞く
(此処はあなたの中?)
(そうだ。よく分かったな。)
そうか。でも、それを聞いても怖くはなかった。寧ろ安心してしまう私はおかしいのだろうか。
(あの、その、だな。)
(?どうしたの?)
(その、俺がお前を取り込んだことを嫌悪しているかと思ったのだが。)
(そんなことないよ。此処は、とても優しくて暖かくてそれに......)
(それに?)
(あなたの匂いがするから。)
やばいな。今の私は、とても顔が熱い。凄いとんでもない変態発言をした気がする。心の中であたふたしていると。
(そうか。そうかそうか!!俺はとてつもなく嬉しい!!なぁ俺はでかいままだと、こんな風にしか、お前と接することが出来ないのだ。外だとあなたを傷つけることがあるかもしれないから。でもこれは、あなたには、恐怖を感じて欲しくなかった。だが、ユイは恐怖どころか、嬉しそうにしてくれるのが、堪らなく嬉しい。)
(そう。私もあなたが嬉しいのなら、私も嬉しい。でも、言葉だけじゃなくて、あなたとふれあいたいな。)
(それは、俺も同じだ。ちょっと待ってろ。)
(えっ?)
「これならお互いにふれあえる。ユイ。」
不意に、後ろから、褐色の太い腕が私を抱き締めた。そして私の背中に、温かみのある引き締まった肉体が触れる。余りの出来事に私はビクン!としてしまったが、顔を見て納得した。黒い髪にあの血のように深く濃く輝く深紅の瞳が優しく微笑んでいた。
「いきなりですまなかったユイ。だが、我慢出来なかったのだ。」
(大丈夫。あなた、人の姿をとれるのね。)
「ああ。だからこそ、改めて言おう。ユイ、俺は、10年前も、そしてこれからもお前のことが好きだ。結婚してくれ。」
(ええ。私もあなたと同じよ。怪物さ....)
私の言葉はそこで途切れてしまった。だって怪物さんが深い、深いキスを突然してきたもの、突然のことに、私の意識は一瞬真っ白になった。