西の巫女と怠惰な守護者2
ごめんなさい、ごめんなさい。
何度となく繰り返されるその言葉に耳をふさぎたかった。
けど悲しそうにするその瞳に少しでもやさしい言葉をかけたくて…
そっと伸ばしたその手は赤く濡れていた。
やっと首を解放されたアレクは地面に手をついて粗い息を吐いている。
「殺す気か…呪詛してやろうか」
不穏な言葉にソフィアはそのまま足をアレクにめがけて振り下ろした。
「問題ない、代替わりも滞りなく終わる。俺の邪魔をするな、消えろ!」
陣と呼ばれた男はそういってまとわりついていた者たちを引き離すとソフィアたちの方へとやってきた。
ただ立ち尽くすソフィアと地面に顔をうずめ身動き一つしないアレクを一瞥するなり手を軽く上げた。
「不審者だ。捕えろ」
ソフィアがその発せられた言葉を理解したときには二人して牢屋の中だった。
「出しなさいよーー!ただの観光客にひどすぎるでしょうがぁぁ」
「ソフィアはお前静かにしろよ。叫ぼうが誰もいないんだからどうしようもないだろう」
アレクは冷静にそういうとお茶を飲んでいた。
「何でそんなに冷静なのよ!ってかお茶はどこから出したの?」
「ふびんな頭だな…俺が大魔法使いアレク様だということを忘れるとは、俺のファンとして嘆かわしい」
「誰がファンよ!ああもうあんたと話していてもらちが明かんわ。誰かぁ責任者呼びなさいよ」
「うるさい」
低く響いたその声にソフィアとアレクはその声のした扉へと顔を向けた。
そこには不機嫌そうな陣が立っていた。
「やっと来たのね!」
ソフィアが陣に声をかけたが陣はソフィアには目もくれずアレクの前に立った。
「お前はジーラ国の魔法使いアレクだろ?」
「ああ、やはり俺様はどこに行っても有名だな」
「貴君のことは知っている。ここに来た理由も察してもいる。どうだろう、代替わりのその瞬間を見届けるのを許す代わりに私と取引しないか?」
「ほぉなかなか魅力的な取引だが、なんか裏があるんじゃないのか?俺もあんたのことは知っているぜ。蓮国の恥とまで言われてる御仁だもんな。怠惰な守護者の陣殿?」
なにやら思惑のある会話が始まってはいるが…
「ねぇもしかして私のこと無視ですか?」