西の巫女と怠惰の守護者1
賢者と言ってもとある事情(言いたくない)でソフィアは人に教えたりすることはなく引きこもっているが、一つだけちゃんとやっていることがある。
それは人に知られることなく歴史にうずもれていった者たちを記録することだ。
今日はもうずいぶんと前まだソフィアの髪も黒かったころの話。
アレクが東洋の神秘を見たいだとごねよったおかげでソフィアが引きずられるようにして連れられて行った東の国「蓮」での出来事だ。
「蓮で何が見たいっていうのよ」
やってきたとはいえ来たのは首都とは違った西の都市「朱」であった。
「お前は知らないのか…」
大きくため息を吐きながら肩をすくめるアレクにソフィアは怒りを抱きながらも答えを待った。
「今回この西を守護する巫女の代替わりが見られるんだぜ!」
「……?」
「おいおい本当に知らないのかよ!」
呆れ顔のアレクから説明が始まった。
東の国「蓮」は首都と四方にある都市には国を守護する巫女が存在する。
巫女はその力尽きるまで魔物や害のある者たちから国を守っている。
特に朱は魔物が多く存在する西の大陸に近く重要な要所となっている。
現在の西の巫女は在位450年と最も長く近年少しずつその力が弱まり始め、代替わりすることがわかっている。
「ふ~ん、まぁそんなのおいおいみられるもんじゃないから…ちょっと待ってよ!そんな時にここに来たら魔物とか来て危ないんじゃないの」
「ご名答!だけど心配すんなって、俺をだれどと思っているんだ?大魔法使いアレク様だぜ!自分の身くらい守れるって」
往来でかっこをつけるアレクだが…
「ちょっとあんたはいいでしょうけど私は!守ってよ」
「まぁそれは置いといて、それに朱はなかなか面白い話を聞くから興味があったんだよ」
「話を変えるな!!」
ソフィアはアレクにとびかかると首を締め付けはじめた。
「おまっ!この俺様に何…ぐるじいぃぃ」
往来を忘れて喧嘩が始まった時だった。
「陣さま!巫女様は大丈夫なのですか?」
「朱は危なくないのですか」
「どうか陣様、巫女様に合わせてくださいませ!」
一人の男が何人もの人が縋り付かれていた。
「何あれ?」
そんな情景にソフィアはアレクの首をしめたまま首をかしげた。