パソコンのEscキー押したら世界が滅亡した。
なんじゃこりゃ。
あっ、待って、そこは、そこはらめぇぇぇぇ!!!」
俺はカーテンで光を遮った薄暗い部屋でエロゲに熱中していた。
ハアハアと息を荒くしながら所々に丸めたティッシュが落ちている部屋の中でエロゲに熱中している。
旗から見たらただの変態だろう。通じ合える人もいるかもしれないけど。
しかし、発見される心配は無い。今のところは。
なぜなら、今は家族が全員家を出ているから。俺を家において。
別に悲しいとか寂しいとかそういう感情があるわけじゃぁない。
「買い物にいってくる」この一言すらなかったことに少し驚いているだけだ。
寂しかったらこの部屋でエロゲなんかしていない。
すぐに追いかけるはずだ。
しかし俺にはそのどちらの感情も無かった。
家に誰のいなくなったからこれは好都合とエロゲをはじめただけだ。
そんなモノローグを自分で語りながらお楽しみなシーンを繰り返し視聴していた。
それから30分ぐらいたっただろうか。
ガチャリ、というというかすかな音が階下から聞こえてきた。
家族が帰ってきた。
急いで部屋の中のティッシュを処理する。
そして俺はキーボードのEscキーに目を向ける。
このゲームには一つのお得機能がついている。
Escキーをカチッと押すだけでゲームを強制終了し、デスクトップに戻るという最高の隠蔽プログラムだ。
俺は迷うことなくEscキーを押した。カチッ。
そこで俺の意識は強烈なめまいとともに、闇のそこへと引きずり込まれていった。
それからどれくらいたっただろうか。
俺の意識はだんだんとであるが、覚醒に向かっていった。
とても重たく感じるまぶたを上げようと試みる。
しかし、その前に風が頬をなでて言った。少し生暖かい感じだ。
ん?風?
確か俺は部屋の中にいたはずだ。
しかも部屋中の窓という窓は閉め切った。
しかし風を感じる。
何故?
まぶたを上げる。
そこで目に入ったのは――――
廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟廃墟。
ただただそれだけだった。
「は?」
思わず間抜けな声が漏れてしまう。
上体を起こす。
やっぱりあるのは廃墟だけだった。
周りを見回す。
やっぱりあるのは廃墟だけだった――――――――というわけでもなかった。
ほぼ風化しかかっているが、看板だとわかるものがあった。文字が書かれている。
何が書いてある?、と思いつつ目を凝らす。
かろうじて読める文字が四文字。
ゲ、-、キ、ム
この四文字だけだった。
だけど、俺はその四文字で思い当たる建物を知っていることに気づく。
「ゲーマーキングダム」というゲーセンだ。
昔よく遊びに言ったのを覚えている。
その情報から解析して、俺の脳みその冷静な部分が結論を出す。
ここは俺の住んでいた町だ、と。
まあ、残りの九割ぐらいはフリーズしてて使い物にならない状態だったんだけどね。
そのおかげでパニックにはなってない。ありがたいことだ。
とりあえず立ち上がってみた。
体の節々が痛むが、立てないわけじゃない。
そしてもう一度辺りを見回す。
やっぱりあるのは廃墟ばかり。
そしてここは俺の住んでいた街。
しかもここに人のいる気配はない。
さて、
これからどうしよう。
まずは持ち物の確認だ。
Q.水は?
A.無い。
Q.食料は?
A.無い。
Q.やる気は?
A.何それ美味しいの?
結論。
もう死ぬしかないだろうこれ。
というわけだからまずは、
寝よう。
俺は寝続けた。
どれくらい寝たかわからないくらい寝続けた。
のどの渇きも空腹も、感じる前に寝た。
そしたら俺はあっさり餓死した。
もう一度言おう。
なんじゃこりゃ。