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砂漠の旅人

 見渡す限り一面の砂景色です。


「タロくん。水」


 勇者さんは水分をご所望のようですが、


「マンドラゴラなら」


 自業自得どころの話じゃありません。


「なんで?」


 勇者さんは、なおも食い付いてきます。


「なんでタロくんは事前に用意しておかないの。こうなるの、分かってたでしょ? ねえ、なんで?」


 むしろ僕が聞きたいです。


「タロくん、そこ座って。正座」


「……はい」


 僕は大人しく従います。熱した砂がじりじりと肌を焼きます。


 勇者さんは、じろじろと僕をねめつけたあと、おもむろにアイテム欄を開きます。


「じゃん、玉手箱」


 …………捨てろって言ったじゃないですか。何を後生大事に隠し持ってるんですか。


 勇者さんは、大地主さんから貰った呪われたアイテムを突き出して、僕に強く迫ります。


「タロくんは、あたしとあの女のどっちを選ぶの?」


「どっちって……」


 僕は種族の壁を乗り越えるつもりはありませんし、警察のお世話になるつもりもありません。しいて言うなら、どちらもごめんです。けど、言えません。エンドロールには早すぎるという、ささやかな願いが僕の口を閉ざします。


 一方、勇者さんはますますエキサイトして、


「そう。そうやって女心をもてあそぶの。……しょせん身体が目当てなんでしょっ!」


 暑さのあまり、駄目な人になっちゃってます。


 何を思ったのでしょうか、不意にクールダウンした勇者さんは、ご自分の平坦な部位を見下ろして、


「……あたしには未来がある」


 ここです。ここぞとばかりに僕は褒め称えました。


「そ、そうですよ。勇者さんには未来が……」


 平坦です。これは……くっ……正直、厳しいかもしれません。


 僕の視線に気付いた勇者さんは、顔を真っ赤にして怒鳴ります。


「ケダモノ! 犬! ゴクツブシ!」


 どうしろとおっしゃるのですか。


 勇者さんに罵られながら、ふと辺りを見渡すと、ラクダに乗った行商人の方々が物珍しそうにこちらを見てらっしゃいます。誤解です。誤解なんです。ああ……。


「タロくん! ちゃんと聞いてるの!? ホントに駄目な人ね! この宿六!」


 怒られました。


 ――歩いて五分で横断できる小さな砂丘での心温まるエピソードです。






「もっと罵ってくださいと言えーっ!」


 星空が綺麗でした。


第六話です。

動物と魔物は共存しているようです。

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