エイプリルフール
今日は水曜日なので……『水曜真っ黒シリーズ』です(*^^)v
今日は4月1日。
新年度で大抵の企業では入社式が執り行われる。
きっと佐和子も……どこかの会社の入社式でリクルートスーツの胸を膨らませて居るのだろう。
その彼女より何倍も聡明で美しい……つまり才色兼備な私も今日はリクルートスーツに身を包んでいる。
とは言ってもこれはお店の……『初めてのお客様限定! “新入性”キャンペーン』のコスプレ衣装だ。
私はこのコスプレ衣装のまま、お店を抜けて、お店御用達のクリニックへ月に一回の性病検査の結果を聞きに行っていた。
検査は自費で毎月15日までにお店に結果報告する義務がある。
つまり猶予はあと14日と半日と言ったところか……
今までNNしてても尖圭コンジローマや性器ヘルペスにも罹った事の無い私だったから……『私はこんな悪運は当たらない』と言う理由なき確信があった。
いや、それは日頃は聡明な筈の私が……逃れる事のできない不安を覆い隠す為に行った自己欺瞞。
私が超一流大学2回生の時に立ち上げたベンチャーが莫大な負債を抱えた。
その利息支払いの充当の為に私が最も効率の良い方法として選択した“仕事”がホテヘルだった。
カラダを売るのはJKの頃からのパパ活で慣れている。
目的が学資から利息支払いに変わっただけだ。
それに店に所属した方がリスクヘッジできるからね。
幸いこの土地はソープが存在しないので“真の目的”を遂げたいオトコは『NN神話』に引き寄せられる。
これは私にとっては大歓迎だ!
いくら若くったって“本業”でクタクタになっている私は……頑張ってオトコをイかせるのがダルい。
ヘルスで奨励されている技を駆使したりいちゃいちゃするのもダルい。
どうせオトコは本番目的なんだから、足さえ広げて置けば勝手に満足してハイ! 終了だ。
しかしそれらもつい数分前までの事……
私はクリニックで社会的な死刑宣告を受けた。
『HIV陽性』と言う……
治療費で月額8万掛かるらしい。
そんな話を聞きながら私は段々冷めて来ていた。
その金をプラスアルファで捻出する方法は一つしかない!
明日からの私のコスプレ衣装は学生服。
捨てないで置いて良かった。
クローゼットから制服を取り出すと、これを着ていた頃の事を思い出した。
◇◇◇◇◇◇
「愛莉、一人暮らししてまで、その大学に通う意味があるの? それに誰の目から見ても憧れの対象でしかない才色兼備なあなたがあんなジジイと!」
「あの大学へ行く事が私の夢の達成のショートカットなの! それだけの事よ」
「だからと言って援交するなんて!!」
パンッ!って音と共に私は左頬に衝撃を受けた。
私を引っ叩いた佐和子はボロボロ涙を流している。
私は頬に手を添えながら佐和子を睨めつける。
「どういうつもり?!」
「こういう時、親だったらこうするの! 不幸な道へ進もうとする娘を力づくで引き留めるの! オジサンやオバサンがしないんだったら私がそれをする!」
私は大きくため息をついて佐和子に言ってやる。
「それができない父母だから、私はカレの包容力に恋したの。カレは当然のごとく私を援助し、私はカレに自分を預けたの。それが男と女の恋なのよ」
聡明な私がこんな薄っぺらの事をほざくのは笑止千万なのだが……うっとおしい佐和子にはちょうどいい按配だ。
「その言葉、エイプリルフールじゃないのね?!」
そう言って佐和子は背を向け、走り去った。
そして、佐和子との見せかけの親友関係もこの日終わった。
◇◇◇◇◇◇
あれからちょうど5年経った今日、悟った事がある。
私は佐和子の事が好きだったんだ。
だから佐和子との想い出の中の言葉が心の片隅に引っ掛かっていて私の目を曇らせ、私は散々な負けを喫した。
彼女と私とは住む世界が違う。
彼女の言葉は彼女の世界では『正義』だけれど、私の世界では『愚か』だ。
だから私は彼女の『言葉』に惜別する。
「佐和子! キミの幸せを心から願っているよ」との言葉を添えて……
私? 私は佐和子の『言葉』の呪縛から解き放たれたから今度は負けない。
今までの私は金を作るのに……どこかで『身綺麗にする』事に拘っていた。
だから
負けた!
もう負けはしない!
復活して今度こそ勝利を掴む。
この私がJKになる事など容易い。
そして“NN”に惹かれて私を援助するのは彼らの勝手で自業自得だ。
その結果、どうなろうが私の知るところでは無い。
勝つ為に淡々と生き延びるのが今日からの私!
その『入射式』がエイプリルフールなんて最高じゃないか!
私は店へ向かう道すがら歩きスマホでアプリ登録した。
早いトコ店を辞めなきゃ……プロフィールに貼った私のキラースマイルにスマホが鳴りっぱなしなるのが目に見えているから……
おしまい
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