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複利の外側  作者: otu
5/12

ep4  独り言・・・

インフレは、経済にとって「必要なもの」として語られてきた。


インフレは賃金の調整装置でもある。

名目賃金が上がらなくても、物価が上がることで実質的な負担の再配分が行われる。

企業は人件費を直接下げなくても済み、失業を抑えることができる。

これは、急激な賃下げや大量解雇よりも、社会的な摩擦が小さい方法だとされてきた。


「摩擦が小さい」

その言葉は、どこか遠くの話のように聞こえた。

物価が上がるたび、生活の中では確実に小さな擦れ音が増えている気がするのに。



さらに、インフレは負債を軽くする。

国債や住宅ローンのような長期の借金は、時間とともに価値が目減りする。

国にとっては財政の持続性を保つ手段であり、個人にとっても借金を抱えたまま経済活動を続ける余地を与える。


借金が軽くなる。

その言葉は救いのようにも聞こえるが、

同時に「借金を前提に続ける」ことが当たり前になっている気もした。


中央銀行がインフレ率に目標を設定するのも、そのためだ。

年に2%前後のインフレを維持できれば、

・経済は極端に冷え込まず

・過剰なバブルも抑えられ

・将来の見通しが立てやすくなる

そう考えられてきた。


2%。

その数字が、どこから来たのかは、ここには書かれていない。

ただ「ちょうどいい」とされている。




インフレは単なる物価上昇ではなく、社会全体を動かすための潤滑油のような役割を持つ、と教科書には書かれている。


――潤滑油、か。

確かに、止まった機械よりは、少し油を差したほうが動く。


まず、適度なインフレは消費を促す。

物価が少しずつ上がると分かっていれば、人は「今のうちに使おう」と考える。


企業は売上を見込み、投資を行い、雇用を生み出す。

経済は循環し、停滞を避けられる。


理屈としては、分かるがこの仕組みが「うまく機能している状態」と、

自分の生活が重なる場面が、どうしても見つからない。


そして自分が「今のうちに使おう」と思える場面は、ここ数年ほとんどなかった。

むしろ、少しでも先が見えないから、使えなくなっている。


使ったほうがいいと言われながら、使えない。

動くための仕組みのはずなのに、足元では小さな摩擦だけが増えていく。


この違和感には、インフレの裏側に置き去りにされてきた、デフレマインドに当てはまっている気がした・・・


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