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複利の外側  作者: otu
10/12

ep9|役割として成立した低成長

日本の低成長と低賃金は、

しばしば国内経済の失敗として語られてきた。

しかし視点を少し引いて、国際社会の中に置いてみると、

それは別の姿を見せる。


日本は長いあいだ、

急激に変動しない国だった。

景気は大きく跳ねず、通貨は信認され、

金融危機や地政学的ショックの中でも、

比較的安定した状態を保ってきた。


円は安全通貨とされ、

世界に不安が広がる局面では、

資金の逃避先として選ばれることも多かった。

そのため、日本の金利は容易に引き上げられなかった。

金利を上げれば、

円高と資金流入が起き、

国内経済に別の歪みを生む可能性があったからだ。


結果として、日本経済は

急成長もしなかったが、

急激に崩れることもなかった。

世界的なショックが起きるたびに、

日本はその衝撃を和らげる

緩衝材のような役割を果たしていたとも言える。


重要なのは、

この役割が意図的に選ばれたというより、

いくつもの条件が重なった結果として、

そう振る舞う国になっていった点にある。


その役割が成立するためには、

いくつかの条件が必要だった。


まず、

大きな低賃金層が存在すること。

賃金が急上昇しなければ、

物価も急騰しにくく、

内需は安定する。


次に、

賃金が上がりにくい構造が維持されていること。

一部で賃金が上昇しても、

全体としては平均値が大きく動かない。

これにより、

企業行動も家計行動も、

急激な変化を起こしにくくなる。


そして、

内需が暴れない社会であること。

消費が急拡大も急縮小もしない社会は、

金融政策や為替の変動を

穏やかに受け止めることができる。


これらの条件は、

国内の豊かさを最大化するためというより、

国際経済の中で

安定を提供する役割と整合的だった。


低成長・低賃金は、

成長戦略の結果というより、

変動を起こさないための前提条件として

機能していたとも言える。


この視点に立てば、

日本が長く「おかしな状態」に見えながらも、

致命的な破綻を避けてきた理由は、

ある程度説明がつく。


しかし、

ここで一つの問いが残る。


こうした役割が成立するための条件は、

国内では、

どのような形で実現されていたのだろうか。

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