複利の外側 プロット
主人公設定
・地方都市在住
・非正規と正社員の境界を行き来し、業界内を長年漂流
・給料は横ばい、税と社会保険料だけが静かに増え続ける
・大きな失敗はしていないが、成功の物語からは常に外れている
「自己責任」と言われるほど派手な失敗はなく、
「努力すれば報われる」と言われるほどの余力もない存在
第一部|日常(見えない圧力)
テーマ:これは自分の失敗なのか?
ニュースでは
・株価最高値
・景気回復
・雇用改善
しかし主人公の生活には何も反映されない。
象徴的な出来事
・住宅ローンの事前審査で静かに弾かれる
・親の介護の話が現実味を帯び、自分の老後と時間軸が重なる
「もっと努力すれば」と言われるが、何を・いつ・どのルールで努力すればよかったのか分からない
ここでは複利は数式として存在しない
あるのはただ、
・毎年少しずつ重くなる負担
・説明されない「遅れ」
第二部|気づき(構造が滲み出る)
テーマ:これは個人の問題ではない
旧友との再会
・外資系で成功した者
・早期退職して資産運用に移った者
・何も変わらず同じ場所にいる自分
同世代でありながら、時間の流れ方が違うことが明確になる。
きっかけ
副業として始めた事務仕事で、
・国債
・金利
・インフレ
といった言葉に日常的に触れる。
主人公は専門家ではない。ただ、ある違和感に気づく。
「これは“返すための借金”じゃない」
ニュースの断片
・アメリカの利上げ
・戦争
・物価高
それらが抽象的な出来事ではなく、
自分の家計・賃金・将来不安と一本の線でつながる瞬間。
ここで初めて
複利が「報酬」ではなく「構造」として立ち上がる
第三部|選択(何も解決しないが、変わる)
テーマ:それでも、どう生きるか
主人公は理解するが、
・金持ちにはならない
・世界は変わらない
・不条理は残る
しかし一つだけ変わる。
・自分を責めるのをやめる
・勝てない競争から一歩退く
・「皆が信じている物語」を信じるのをやめる
ラストに近い出来事
若い世代から問われる。
「どうして、こんな社会になったんですか?」
主人公は説明しない。専門用語も使わない。
ただ一言。
「俺たちは、逃げなかっただけだ」
それは誇りでも反省でもなく、事実の確認に近い言葉。
物語は、救済も破滅もなく、静かな受容で終わる。
あとがき|思考の保管庫
物語の外側で、読者にだけ示されるメモ。
・複利が成立する前提
・基軸通貨の寿命
・インフレという“調整装置”
そして問い:
・犠牲になるのは誰か
・誰が逃げ、誰が逃げなかったのか
あとがき
複利は、長いあいだ世界を動かしてきた。
それがなければ、今の社会はなかっただろう。
それでも私は、
その仕組みが成熟した社会において、
なお同じ形で使われ続けていることに、
小さな疑問を感じている。
この小説は、その疑問を否定も肯定もせず、
一人の人間の生活の中に置いてみた試みである。




