廃工場にて
「じゃあ、俺は帰るね。失踪するなよ。」と雲雀は言う。
「いやいや、そんな事あるわけないって!」と僕は答える。
このとき僕は全く思っていなかった。
――雲雀の言うことが、本当になってしまうとは。
僕と翠はかなり道を進み、林のあたりまでやってきた。このあたりになると、まともな街灯がない。けれど、町の人たちが置いたであろうランプが置かれている。
「まだ着かないの?」と翠が言う。
「ほら、見えてきたよ。」と僕は答える。
そこにあったのは、まるで教会のような佇まいの工場があった。でも、見た目は本当に教会であるかのようだ。
「うわ、不気味だな…。」と翠は言う。
僕も同じ事を思った。
とりあえず、僕らは中に入ることにした。
「で、その噂の場所ってどこだったっけ?」と僕は聞く。
「屋上だよ!」と翠は答えた。
「うわ、階段壊れてるじゃん!」と翠が言う。見ると、確かに螺旋階段が壊れていた。
しばらく上がる方法を探していると、翠が「はしごがあったよ!」と言った。
屋上に行く登ると、満月が出ていた。
独り言なのか、翠が惚気ていると
「あれ…?誰かいるぞ?」と僕が言った。事実、柵のすぐ近くに紫色の髪、紫色のパーカー、(左目は髪で隠れて見えないが)紫色の目の少年がこっちを見ているのが見えたからだ。
翠が「お祈りに来たのかな?」と言う。
「いや…なんか様子がおかしいぞ…?」
その直後のことだった。
――彼は踵を返し、飛び降りた。
「おい!」と僕はとっさに叫び、下を見た。
「まさか…遺体、そこにある?」
「あれ…ない…」
僕はそう言った。その言葉通り、遺体がないのだ。
その怪奇現象に、僕たちは呆然とするしかなかった。




