1:ヴォアラ
「全て返してもらう――。『利息』付きでな」
そう言ったのは、俺の『腹の内』に住まう悪魔の王――。
魔王様サタンだった。
腹が立って怒りや不満を抑えれない状態を「腹の虫が治まらない」とは言うが。
俺が彼の存在に気づいたのは、ふとした時に感じる違和感に対して――。腹の底から湧き上がる、まさにその言葉しか当てはまるものは無いだろうと思った時だった。
そして、その気づきが確信へと変わったのは――。
久しぶりにイリアとパーティーを組んで、三カ月経った頃に彼女が発した一言に対するさっきの返答でだ。
その日、ギルドの一角で三カ月前とは様子の変わった彼女に聞いた。
「俺は待ってればいいのかな?」
――――と。
すると、勘違いに勘違いをミルフィーユの層のように重ねたイリアは俺にこう言った。
「勘違いさせたのならごめん! 私、ゼンタとはどうこうなる気はないの」
はあ?
開いた口が塞がらないとは、こういう時のことを言うのだろう。
そもそも、パーティーを組もうと声をかけて来たのは向こうだというのに。
人間の出来た俺は……一度目のパーティー解散時のことを俺が悪くもないのに再び謝罪し、新たな門出に花を添えた。
また、ここ三カ月――度重なる違和感を抑え、彼女を信じようとしていたのに……。
結局――。彼女は俺の善意をドブ池のフナのように貪り食えるだけ喰ったらこれだ。
五年以上前にパーティーを組んだ時と何ら変わらない。
一ミリも成長してない――、むしろ悪化した彼女は害悪でしかないと悟った。
だが、以前のようにはいかない。なんせ、今の俺の「腹の内」には目覚めた魔王がいる。
ギルドをあとにする彼女の背に向け――、口が自然と動く。
「ヴォアラ――――」
ーー
彼女とはあれ以来、会っていないが『腹のウチの魔王様サタン』の話では、これから三カ月かけてイリアにはさまざまな不運・不幸が降りかかり。
逆に俺には、彼女に分け与えていた幸運が利息付きで返ってくるとのことだ。
「にしてもゼンタ。おぬし、ゴミクズのような奴らにわしのチカラを分け与えすぎじゃ。これから回収しに行くぞ、利息付きでな」
目を閉じると、不敵に笑った顔を見せる――俺の『腹の内』に住まう魔王様サタン。
「こちら側にも多少の非があった」などという大人ぶった綺麗ごとを並べることをしない彼は、どんな人間よりも俺を理解している。
俺は彼の悪意に満ちたその表情を見ることが、今は何よりも落ち着き――安心する。




