幕間
ピー。
何かの機械音にハッとする。時計を見ると夜中の二時を指していた。パソコンに向き直ろうとすると、スマホの通知が目に入った。
寒ざむからの久しぶりのDMだった。寒ざむは俺と同じく小説投稿をしているやつだった。
お疲れ。連載のホラー作品、なかなかいいじゃないか。最初はどうなるかと思っていたがよく頑張ってるな。お前らしくない話もあって楽しませてもらってる。
久しぶりに筆が乗って楽しいだろうが、無理はするなよ。仕事もある中で投稿ペースもなかなか早いから無理してるんじゃないか。
体を壊したら元も子もないぞ。自分のペースで完結まで頑張ってくれ。
一読者より。
そんな内容だった。
俺の作品を読んでくれてるのは嬉しい。だが、無理するなとはどういうことだろう。
俺は十分に俺のペースでやってるし、今はたくさんの人が俺の作品に注目してくれてるんだ。
もっともっと俺は注目されなくてはならない。これが最後になるかもしれないのだから。
実は、コイツが言っている通り、俺の作品ではあるのだが、そうでないものもあった。書いた覚えのない話があるのだ。俺が気づかない間に話が増えているのだ。
だが、これは天が俺に力を貸していると取ることにした。
良いじゃないか。ホラー小説らしくて。作者も知らない話があるなんて。
そう思いながら、ペットボトルのブラックコーヒーを飲み干した。
ピー。
また何か機械音が聞こえた。一体何の音だったか。
いや、このまま書き進めよう。書き終えたら調べれば良い。
それにしても暑い。
買い置きのスポーツドリンクは一昨日なくなったか。
だが、今書かなくてどうする。書き終えたら買いに行こう。
時間は待ってはくれない。締切まであと少しであるし、運良くできた連休だ。今書かずにいつ書くのか。
そう思いながら俺はまたパソコンに向き直した。