トイレ改修工事
2025.8.8投稿
職場の男子トイレ改装工事がやっと終わった。
2週間近く、多目的トイレを使用させられ、1人が入ってしまうとなかなか開かずイライラさせられた。普通だったら仮設トイレとか設置して工事やるだろうに、上司がケチったせいで置かなかったらしい。今は女子トイレを改装しているが、かなり女子社員から不平不満、クレームを集めている状況だ。
それはさておき、男子トイレは綺麗に生まれ変わった。内装が木目調に変わり、小便器はオシャレな台形のような形に変わり、一つ一つの個室にはベビーチェアや簡単な荷物置きができていた。便器も便座も最新の物に変わり、センサーで便座の蓋の開け閉めを行ったり、立った時に自動で水を流すのは勿論のこと、人が入った時点で便器内を予め洗浄したりする。作りもセフィオンなんとかという汚れ落ちがいい物に変わっていた。音姫も完備され、川のせせらぎや鳥の鳴き声みたいなものも入るたびに聞こえてくる。脱臭器具もそれぞれの個室に配置され、カシャカシャと音を立てながら頑張っていた。便器だけじゃなく、水道も手を出すと自動で石鹸が出てきたり、間接照明で温かい色で彩られていた。ジェットタオルも水が跳ねない構造になり、軽い除菌作用があるものになっていた。まるで上司がこれだけやれば文句は言えないだろうと言っているかのようだった。
そんなトイレになってから数日が経った。最初のうちは慣れないところもあったが、毎日のように使っているうちに大分慣れてきた。
今日は朝から掃除のおじさんが久しぶりに入っていた。工事後、初の清掃業務のようだった。
「お疲れ様です。久しぶりにウチのトイレですよね。どうですか?いろいろ変わってすごいですよね。」
「ああ、お疲れ様です。いろいろ変わりましたけど、アレは変わらないんですね。」
「え?アレって…?」
おじさんは一瞬、目を見開いて、しまったという顔をしたが、観念したように
「ああ、アレですよ。見たことないですかね。だったらすみません。あなたが入社する前からここのトイレ、出るんですよ。なんでかはわからないんですが。ほら、そこに。」
そう言って鏡を指差した。
そこには髪の長い女性が青白い顔で立っていた。が、すぐに消えてしまった。
「気づいてしまうと何度も見えるようになっちゃうんで、ここの課長さんからは誰にも言うなと言われてたんですがね。せっかくトイレが綺麗になったばかりなのに…。すみません。これから難儀すると思いますが。やっぱりリフォームじゃなくてお祓いでもしないと駄目ですね。」
そう言っておじさんはバケツを持って外に出ようとした。
僕はその場に立ち尽くすことしかできなかった。