表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/50

第8話 アルベルティーナ

 私の名前はアルベルティーナ。この星シュトラウスの神よ。


 まだシュトラウスが若かった頃に夫のダンケルティーガとやって来て、それからずっとシュトラウスを見守ってきたわ。


 シュトラウスには生き物の血管にあたる竜脈があり、生き物の命が尽きるとその記憶とエネルギーが竜脈に還る。そして時が巡れば、竜脈から命が生まれる。その循環を繰り返すことでシュトラウスは成長し、多くの命を抱えることができるようになった。


 ある日、私とダンケルティーガは衝撃的な場面を目撃した。本当に偶然だった。


 手足を鎖に繋がれながら、竜脈に突き落とされたひとりの少女。その少女を笑いながら見つめる集団。


 人間が、儀式と称して自分たちに生き物を捧げていることは知っていた。だけど、こんなのは知らない。魂が悲痛な叫びをあげる、こんな儀式なんて求めたことはない。


 竜脈に落とされた少女を助けたかった。だけど、少女の身体はあっという間に竜脈に溶け、流され、魂ごと飲み込まれた。救い出すことはできなかった。


 それからしばらくの間、私は悲しみに暮れた。泣く私を、ダンケルティーガが優しく慰めてくれた。


 そして、見つけた。あの、光り輝く魂を。もう後悔するようなことはしたくない。


 ダンケルティーガと、大事に、大事に守っていこうと決めた。


 いま、私は空を飛んでいる。青い翼を広げ、風を受け、手紙を運ぶという役目を果たすために飛んでいる。あの子の役に立てることがたまらなく嬉しい。



○○○


 アルに手紙を託したあと、わたしたちはフィリルの宿屋に一泊し、翌日の朝に街を出てプルフ村へ帰った。


 せっかく街まで行ったからと、お父さんはプルフの村長にお土産のお酒を買っていた。そのお酒を持って村長宅を訪れたわたしたちに、村長はわたしたちを自分の家に招き入れることもなく話し出した。


「本当にすまない。君たちに貸している家が売れたんだ。あと三日で荷物をまとめて出ていってほしい」


 わけがわからない。


 あの赤い屋根の家は、お金を払って借りているんだよね。その状態の家を、家主の都合でほかの人に売るなんてできるの?


「待ってください。その、家を買ったというのはどなたなんですか?俺たちがいまも住んでいるのに、三日で出て行けなんて乱暴な話じゃありませんか?」


 お父さんが動揺を堪えながら言った。


「家を買ったのは貴族様だ。昨日、ふらりと村を訪れて、あの家を見て気に入られたんだ。わかってくれ。貴族様の頼みを断るなんて、とてもじゃないができなかった」


 え、貴族がプルフ村の家を買ってどうするの?ここは観光地じゃないし、保養地でもない。ありふれた人口三百人ほどの小さな村で、畑と森があるだけで、特に見る物もないでしょ。


「貴族様の三男の方が冒険者活動をされていて、村にいらしたときにあの家を見て気に入られたんだよ。活動拠点にされるそうだよ」


 やっぱり、よくわからない。貴族の三男が冒険者になるのは、まあ、いいと思う。でも、なんで活動拠点をプルフ村にするの?プルフ村でなにするの?


「四日後に仲間を連れて引っ越して来るとおっしゃっていたが、あの様子だと、もっと早く来るかもしれないな」


「わかりました。明日、出て行きます。お世話になりました。これはフィリルの土産です。どうぞ」


 なにを言っても、話が覆らないと悟ったのだろう。お父さんは村長にお酒を押しつけると、赤い屋根の家に向かって歩き出した。


 家に帰ると、玄関の扉が壊されていた。鍵が開けられなくて、中に入るために扉を壊したのだと思う。家の中は荒らされていた。台所は無事だったけど、寝室も、物置も、ほかの部屋も、しまってあった物が出されて踏み荒らされてグチャグチャだった。


 まるで、強盗に荒らされたみたい。


 うちで唯一、高価な物と言えば、わたしが作ったエメラルドだけ。そのエメラルドは巾着に入れてお父さんが持っているから、荒らされた以外に被害はなかった。


 でも、服も日用品も、どれもこれも思い入れのある物ばかり。足跡がついているのを見ると、悲しい気持ちになる。


 なんとか寝室を眠れる状態にして、簡単なご飯を食べて眠れる状態にしたときには疲れていた。



○○○


 夜空を星の明かりを頼りに飛び、私は予定より速くグリーシャ辺境伯の領都へたどり着いた。


 領都グレゼは高い壁に囲まれた城塞都市だった。魔物への備えが必要な土地ということなのね。


 グレゼの中心には城があった。うん。グリーシャ辺境伯がいるのはあそこね。


 私は目標を定め、風に乗った。


 気配察知をすると、一際大きな気配を見つけた。カーテンの隙間から室内を覗くと、中は寝室だった。大きなベッドと、少し離れた場所に応接セットが置かれている。


 その応接セットのソファにどっかりと座り、グラスを傾けているひとりの老人がいた。どこか、ルルアーナの母親に面影が似ている。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ