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第7話 お母さんの実家

「………それでは、今後について話そうか」


「「はい」」


「あい」


 ティガの言葉に静かに返事をしたお母さんとお父さん。そして、ひとりだけ甲高い声で返事をしたわたし。


「ふふふ。ルルアーナは可愛いわね」


「むう。ばかにしにゃいで」


「バカになんてしてないわよ」


 クスクス笑うアル。バカにしてはいなさそうだけど、わたしの話し方を面白がってそう。


 仕方ないじゃない。幼児の口は、滑らかに言葉が出て来ないんだから!


「………ひとつ。いまの生活を続けつつ五歳の祝福を受け、祝福後に魔法の力に目覚めた風を装う道がある。ふたつ。権力者の後ろ盾を手に入れ、その庇護下で暮らす道がある。みっつ。旅をしながら、人との関わり合いを避けて暮らす道がある」


「あ、はい。そうですね。色々な選択肢があると思います」


 突然、今後の選択肢を提示したティガに対して、お父さんが頷いた。


「そして、よっつ。ガランドへ行くという道がある」


 へえ。魔族の国があるんだ。でも、なんで魔族の国?人間の国じゃだめなの?


「ガランドはだめです!あそこは、魔族の国ですよ?!」


「魔族は実力主義だ。ルルアーナのことは少し変わった幼子というだけで、大した抵抗なく受け入れるだろう」


「いまの時代、魔族との戦争はありませんが、かつて人間と魔族は戦争をしていたんですよ。長命な魔族の中には、まだ戦争を覚えている者も少なくないでしょう。そんなところへ行けば、ルルアーナはつらい思いをします」


「戦争など、人間同士でもやっていただろう。小さな争いは、いまもあちこちでやっているぞ」


「ですが、ガランドはだめです」


「ではどうする。ルルアーナをいつまでも隠しておくことはできぬぞ。ルルアーナの力が露見したとき、おまえたちはなにができる?権力者にルルアーナを奪われて、使い潰されるのを見ているだけか?」


「そんなことは、させません」


「口ではなんとでも言えるな。私は、どう行動するのか聞いている」

 

 ティガに言われて、お父さんは悔しそうに握った拳を震わせた。


 そのとき、お母さんが意を決した様子で話し出した。


「ティガ様。私の実家を頼ろうと思います」


「ミーア、いいのか?」


「ルルアーナのためですもの。意地を張っている場合じゃないわ」


 ん?お母さんの実家になにがあるのかな?


「権力者の後ろ盾を手に入れ、その庇護下に入るか」


「はい、ティガ様。私の本名はミシェル・グリーシャと言います。セスト国の隣国ファルースの、グリーシャ辺境伯の長女です」


 びっくり。お母さん、貴族令嬢だったの?!確かに背筋はピンと伸びていて綺麗だし、立っているだけでも絵になるよね。貴族令嬢として教育を受けたからだったんだね。


「まずは実家に手紙を出して、実家の援助を受けられるか確認します。祖父が健在であれば、ルルアーナのために動いてくれるでしょう」


「それで。グリーシャ辺境伯家の援助を受けて、どうする。ルルアーナをグリーシャ辺境伯領へ連れて行くのか」


「はい。グリーシャ辺境伯家は、ファルース国の北の地を守る一族です。王都から離れた辺境の地ですから、人々の結束力は強く、内に入れた者は全体で守ろうとします」


「ふむ。いいだろう」


「ありがとうございます」


「グリーシャ辺境伯家に、取り込まれなければよいがな」


「「………」」


 ティガの言葉に思うことがあるのか、お母さんとお父さんは言葉を発さなかった。



○○○



 プルフ村からグリーシャ辺境伯領へ行くには、徒歩と乗合馬車を乗り継いで半月かかるらしい。準備が必要なので、まずは手紙を出すことになった。


 ただし、貴重な紙がプルフ村にあるわけもなく、近くの街まで行って購入し、冒険者ギルドに配達の依頼を出すことになる。


 この配達依頼料が、すんごく高額らしい。ランクの低い冒険者に依頼すれば多少は安くすむらしいけど、それだと、途中で魔物や盗賊に襲われたりして依頼失敗する可能性が上がる。


 高いお金を払っても手紙が届かなかったら、お金を捨てるのと一緒だよね。


 だから、依頼を出すのは最低でもDランク。できればCランク以上。貯金のほとんどを使うことのなるだろうと、お母さんが言っていた。


 それを聞いたアルが、自分が届けると言ってくれた。なんでも、本気を出せば音速を超える速度で飛べるらしい。


 音が届くスピードより速く飛べるって、すごいよね。


 ただ、音速で飛ぶと手紙がだめになってしまうので、往復四日で行ってくれることになった。


 そしていま、わたしたち家族は神様と一緒に近くの街フィリルに来ている。神様の姿は目立つので、姿を隠して付いてきてもらっている。


 フィリルに来たのは、もちろん手紙を用意するため。


 まずは宿屋を確保して、次に紙屋さんに行って便箋と封筒を買った。紙屋さんの店内には休憩スペースがあって、ペンとインクのレンタル料金を払ったお母さんがそこで手紙を書き始めた。クセのない綺麗な字だった。





 

 

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