第50話 属性鑑定
さーてと。ゼノお祖父様とエレーナお祖母様が帰って行ったから、話がしやすくなったね。
ふたりが離れの敷地から出て行き、こちらの声が届かない距離まで離れたところでベイルが姿を現した。さっきまで離れの建物の中にいたはずだけど、しれっと何食わぬ顔で茂みから出てきたよ。
ちゃんと仕事してましたよー。とでも言いたいのかな?
でも、オルクスひいおじい様なら、ベイルがちゃっかり離れで休んでいたことは分かってると思うよ?
「大旦那様、ご報告に参りました」
「………口の端に付いているものはなんだ?」
「………はっ。いえ。これは、花粉です」
「そうか………」
もう。ベイルがあまりに堂々と言うものだから、オルクスひいおじい様も話を合わせてくれたじゃないの。
もちろん、ベイルの口の端に付いているのは花粉じゃなくて。今朝、わたしとベイルで作ったクッキーのカケラだよ。
甘い物好きなベイルは、食べるだけじゃなく、自分で作るのも好きなの。それで、よくわたしと一緒にお菓子作りをしているんだよ。
今朝作ったのは、昨日のうちに生地を仕込んでおいたガレットブルトンヌ。甘じょっぱくて、サクホロの食感が楽しめる厚焼きバタークッキーなの。
ベイル曰く、「こんな美味しいクッキーは食べたことない!王都にもないぞ!」とのこと。この台詞からわかるように、わたしは食べたクッキーを再現したわけじゃないの。作り方が頭に浮かんできて、不思議と作ることができたんだよ。
というのも、わたしが【星の記憶】を持っているからなんだって。
この星に生きる者は、死ぬとその記憶や魂、エネルギーが星へと還るの。星に生命が誕生してから今日まで、星は膨大な知識を蓄えてきた。その知識の一部を、わたしは持って生まれたんだって。
だから、五歳なのに、こんな大人みたいな考え方をするんだね。
わたしが【星の記憶】を持っていることは、ティガとアルと、わたしだけの秘密。お母さんやお父さんにも話していないの。だって、五歳児の中身がこんなじゃ、気持ち悪いでしょ?
お母さんとお父さんに嫌われたくないの。
他の人に話さないのは、わたしの知識を利用されないため。オルクスひいおじい様がわたしを利用するだなんて思っていないけど、他の人はわからない。でしょ?
「………それで。報告とはなんだ」
気を取り直したオルクスひいおじい様が、ベイルをジロリと見た。
「ルルアーナお嬢様の、魔法属性のことです。ルルアーナお嬢様は、全属性に適性があります」
「「?!」」
「なんだと?どうしてそれを黙っていた!………いや。そもそも、どうしてわかった?」
「ルルアーナお嬢様は、全属性の魔法を使えるんです。初めて見たときは、幻でも見せられているのかと思いましたが、現実でした」
「どうしてすぐに報告しなかった」
「ルルアーナお嬢様に口止めされまして。話すのは祝福の儀式を受けてからだと、約束させられたんです。申し訳ありません」
「制約の魔法か」
「はい」
すぐに【制約の魔法】に思い至るのは、さすがオルクスひいおじい様。
制約の魔法というのは、約束したことを破ると罰則がある魔法なの。商人や貴族の間で交わされることが多い魔法で、けっこう一般的な魔法らしいよ。
ベイルとは、わたしの秘密について誰にも話さない。という制約を結んでいた。破れば身体が動かなくなる。という重い罰則にしていて、これまでベイルはきっちり制約を守ってくれていたの。
「それで。ルルアーナ譲になにができるか、私も聞いていていいのだろうか?」
ライザール様が、確かめるようにオルクスひいおじい様に聞いた。
「あぁ、もちろんだ。ライザールのことは信頼している」
「ありがとう、オルクス」
あれ。ふたりが、様付けもしないで呼び合っている。本当に友達なんだね。
「ライザール、属性鑑定の水晶は持ってきているか?」
「祝福の義だからね。当然、持ってきているとも」
そう言ってライザール様がカバンから取り出したのは、無色透明な水晶玉。直径は十三センチくらい。
「ルルアーナ様、この水晶は魔力属性に応じて色が九色に変わります。魔力を込めてもらえますか?」
「はい」
わたしの魔力属性は、火、水、風、土、氷、雷、光、闇、無の全属性ある。どんなふうに現れるんだろう?楽しみ。




