第49話 魔法を使おう
「………ルルアーナ様。いま、魔法名を唱えずに魔法を使いましたね?」
「そうですね?お母さんもお父さんも、魔法名を言わないので、そういうものかと思っていました。違うんですか?」
「ええ。普通は、魔法名を口にすることで魔法は発動するのですよ」
「………そうなんですね。では、今度は魔法名を言ってみますね。ええと………トーチ」
………………………
「ん?」
おかしいな。魔法が発動しない。
「さっきは魔法が発動したのに、おかしいですね」
「そうですね、ライザール様。それでは………ウォーター?………クリーン?」
他のふたつの魔法名を言ってみたけど、やっぱり魔法は発動しない。
もしかして、わたしは魔法名を言うと魔法が発動しないのでは?!
「ルルアーナ様。試しに、魔法名を言わずにウォーターを使ってもらえますか?」
「いいですよ」
フッフッフ。水の魔法は、毎日の水やりで使っているから使い慣れているんだよ。ほら、できる!
人差し指の先に、水球が現れた。ジョッキ一杯分というところかな。ちょっと多かったね。
「ルルアーナ様。それは、コップに水を満たす魔法ではありません。それより高度な、ウォーターボールという魔法です。これがウォーターですよ。………ウォーター」
ライザール様の指先から水が出てきた。水はその場に留まることはなく、チョロチョロと流れて地面を濡らした。
「あ、それならできます」
わたしは、指先の水球を操作して、水球から水をチョロチョロと流れるようにした。
「………ルルアーナ。あなたは、ご自分がどれほど高度なことをなさっているかおわかりではないのですね」
「え?違いました?」
わたしは水球から流れる水を止めると、最初と同じ大きさの水球を地面に置いた。これは、あとで畑に持って行って水やりに使おう。
そして、改めて指先から水を出した。
「ライザール様、できました!」
ニコニコ笑ってライザール様を見ると、ライザール様は、わたしが地面に置いた水球を見つめていた。どうしたんだろう?水球は、珍しい魔法じゃないよね?
「素晴らしい!この水球はどうなっているんですか?どうして地面に置いたのに弾けないのですか?あぁ、興味が尽きません!」
だって、入れ物がないときに水を運ぶには、誰でも触れるようにしないといけないよね?
「なるほど。ウォーターボールを風の膜で包んでいるのか。大したものだ」
オルクスひいおじい様がそう言い、水球を両手で持ち上げた。水球は、オルクスひいおじい様の手の中でプルプル震えている。
「オルクスひいおじい様、何をされているんですか?」
「なに。風を当てているだけだ」
シュッ
パシャッ
オルクスひいおじい様ひいおじい様が水球に風の刃を当てると、水球が壊れて水が溢れた。
「大した強度だ。石と同じくらいの硬さだったぞ」
「それほどの強度があれば、入れ物がなくても溢れることなく水を運べますね」
オルクスひいおじい様とライザール様は楽しそう。顔が輝いているよ。
ちらりとゼノお祖父様を見ると、無表情だった。その隣のエレーナお祖母様は、赤い顔をしてプルプル震えている。
「こんなの、なにかの間違いよ。ルルアーナ、あなた、本当は六歳なのではなくて?隠れて魔法の特訓をしていたのではないの?!」
「落ち着け、エレーナ。もしお前の言う通りだとしても、わずか一年でできることは限られている。おそらく、ルルアーナは天性の魔法使いなのだろう」
「不愉快です!わたくしは帰ります!」
「待てエレーナ。私も一緒に帰ろう」
そうして、ゼノお祖父様がエレーナお祖母様をエスコートして去って行った。
お母さんとお父さんを見ると、ふたりとも苦笑していた。
………わたし、やっちゃった?でも、どうしようもないよね。わたしは、自分にできるだけ魔法の威力を抑えたもの。あれ以上、できることはなかったよ。




