第47話 ルルアーナ五歳
あれから約三年が経ち、わたしは五歳になった。今日は、神官様がルナール城へ来てわたしに祝福を与えてくれることになっているの。
平民が祝福を受ける場合は、毎月決まった日に神殿へ行って、他の子供たちと一緒に祝福を授けてもらうけれど。貴族は神官を邸へ招待して、家族や一族の者と一緒に祝福を授かることを祝う一大イベントとすることが多いんだって。
わたしの場合も、神殿へ行くのではなくて神官様を招待することになっている。でも、大げさにはしないで、ひっそりと執り行われることになっているの。
なぜって………わたしが変わり者だから?
わたしは二歳の頃から魔法を使えていたけど、そのことを知っているのは、いまでも一部の人に限られているの。ほら、普通は、魔法を使えるようになるのは五歳の祝福を受けてからだからね。
わたしが魔法を使えることが知られたら、わたしを取り込もうとする人間が現れるだろう。だから、祝福を受けるまでは魔法を使えることを隠す。ということで話がまとまり、わたしが関わる人間を限定することで守ろうとしてくれたの。
だから、わたしたち家族とティガたちはルナール城の本館じゃなくて離れを与えられて、そこで生活していたの。
そんな事情を知らない人からすれば、わたしたちはグリーシャ辺境伯当主であるゼノお祖父様たちに冷遇されているように見えるらしく、冷たく当たってくる人は少なくない。
離れに使用人が出入りすることが許されていないから、わたしたちは世話をしてくれる使用人もなく、平民のような暮らしをしていた。それが、余計にルナール城の人たちに誤解を与えるきっかけになっていたんだと思う。
あ、使用人はいないけど、影から護衛をしてくれる【影】と呼ばれる組織の人はいるよ。どこに隠れてもわたしたちが見つけてしまうから、いまはもう隠れないで一緒に生活しているの。偽名だと思うけれど、ベイルという名前の男の人。年は三十代前半だよ。
ベイルにはわたしが魔法を使えることや、ドラゴンのライラを飼っていること、ティガが猫に姿を変えられることを伝えているよ。
だから、ベイルがいてもライラのご飯を作ることができるし、猫の姿になったティガに甘えることができるの。
さすがに、ティガとアルが神様なのは秘密だよ。
それで、話は最初に戻るのだけど。今日は神官様が来てくれるの。
いまはお父さんが本館へお迎えに行っているんだよ。
………あ、来た!
白と青の神官服を着た、地位の高そうな神官様が見えた。神官様は、オルクスひいおじい様とお話しをしている。ふたりの後ろにはゼノお祖父様と、意外にもゼノおじい様の妻であるグリーシャ辺境伯夫人のエレーナお祖母様。最後尾にお父さんがいる。
エレーナお祖母様はティガの顔を気に入って自分専属の従者に誘ったけれど、すげなく断られたことを根に持っているの。だから、離れには近づきもしないし、ティガのお気に入りであるわたしのことは嫌っているんだよ。
「あら。お父様だけじゃなくて、お母様も来ているのね。ルルアーナがどんな魔法を授かるか気になるのだわ」
本館から離れに続く道を見ていたら、隣にお母さんがやって来ていた。
五歳のときに受ける祝福は、生活魔法を授かるのはもちろんだけど。魔力の多い貴族は、生活魔法以外の魔法を授かることも多いの。そして、生活魔法が使えるようになること体内の魔力を扱えるようになり、適性のある魔法が使えるようになるんだよ。
「ゼクスは先週、祝福を受けたから。ルルアーナの祝福の結果次第では嫌味を言われるかもしれないわね。お母様がなにをおっしゃっても、気にすることはないわよ」
「うん。わかってるよ、お母さん」
ゼクスというのは、お母さんの弟で王立騎士団長を務めるジーベルの息子だよ。わたしから見るといとこになるね。
ベイルの話では、ゼクスは火属性と風属性に適性があったんだって。
複数の魔法適性があるのはいいことだよね。
「あら。アル様だわ」
普段はルナール城を離れて近くの森で過ごすことの多いアルが、ふわりとわたしの肩に止まった。
『ルルアーナ、ティガからの伝言よ。エレーナが来ているから私は姿を隠す。ですって』
あ〜、ティガはエレーナお祖母様が嫌いだもんね。わかったよ。
『それと、ライラが魔宝石を食べたがっているの。森の魔物を食べ尽くす前に用意してくれると嬉しいわ』
あははっ。それもわかったよ。神官様やゼノお祖父様たちが帰ったら魔宝石を用意するね。
ライラは、成長してポーチに入らなくなった二年半ほど前から近くの森で暮らしているの。ドラゴンだから、自然の中で暮らすのが一番だもんね。ライラは自分で狩りができるけど、おやつに魔宝石を食べるのが好きで、アルが離れと森を行き来して魔宝石を届けてくれているんだよ。




