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第43話 可愛い人

 魔力を使いすぎて倒れたあと、わたしはどれくらい寝ていたんだろう?


 チラリと窓の外を見ると、まだ明るい。何日も寝たままだったのか、それとも、すぐ目が覚めたのか、どっちかな?


『ルルアーナは二時間くらいで目が覚めたわよ』


 あ、ライラ!


 頭をぐりんっと左に向けると、そこにはライラがいた。ライラはわたしと目が合うと、頬をぺろりと舐めてきた。


 ふふふ。くすぐったい。


『これでも、あなたのことを心配してたのよ。魔力枯渇状態から、こんなに早く回復するとは思わなかったけどね。ルルアーナ、あんた、どういう回復力をしてるのよ?』


 ………わかんない。


「ルルアーナ、喉が渇いてないか?水を用意しようか?」


「あい。おとーしゃん」


 お父さんの心配そうな声が聞こえて、反射的に返事をした。お父さんの方を向いてニコリと笑うと、なぜかお父さんは無理やり笑顔を作った。


 お父さんがコップに水と入れて持って来てくれて、まだメソメソと泣いているお母さんがわたしの身体を起こしてくれた。


 身体を起こしてもふらつかないし、頭もクラクラしない。お父さんが持たせてくれたコップを持つ手が震えることもない。


 ライラが回復したと言ったのは本当みたいだね。


 水を飲み干すと、コップをお父さんに返して、枕元に置いてあったふたつのポーチを肩にかけた。


 よし、支度はできた。「話」をしようじゃないの。


「おとーしゃん、ぴんくだいやはどこ?」


「え?」


「だいやはどこ?」


 お母さんとお父さんは、ライラのご飯となるいつもの宝石を作ることにはなにも言わなかった。それなのに、ダイヤを作ったときの反応はいつもと違ったし、ピンクダイヤを見たときは、卒倒しそうになっていた。どうしてそうなのか、わたしは聞かないと。


「ダイヤも、ピンクダイヤも、俺が預かってるよ。持ってくるね」


 お父さんは自分のカバンから、お金を入れるようなサイズの革袋を持って来た。わたしの脚の上に置いてくれたので中を見ると、確かにダイヤとピンクダイヤが入っていた。


「ルルアーナ、ダイヤとピンクダイヤはポーチにしまっておいて」


「あい」


 返事をしたけれど、いらない物だと言われたようで悲しい。ただ、出しておいてもしかたないので、言われた通り黄色のポーチへグイグイと押し込む。


 ふと、視線が気になって顔を上げると、お父さんが真剣な表情でわたしの手元を見ていた。


「おとーしゃん?」


「あ、ごめんよ。ルルアーナの魔法はすごいな。と思って見ていたんだよ」


「 しゅごい?」


「あぁ、すごいよ。………さっきピンクダイヤを見せてくれたときは、すぐに褒めてあげられなくてごめんね」


 ………うん。悲しかったよ。あんな、お説教のようなことを言われたら悲しくなるよ。頑張ったから、褒めてほしかったよ。


「ルルアーナはしっかりしていて、神様に愛されてもいるから、つい大丈夫だと思ってしまうけど。まだ二歳なんだもんな。俺が悪かったよ」


「ルルアーナ、お母さんも悪かったわ。ごめんなさい」


 お母さんはグズグズ鼻をすすりながら謝ってくれた。


「私は貴族の娘として育てられたから、宝石は見慣れているの」


 んん?急に自慢?


「だから知っているの。宝石というのは、原石から削り出して磨き上げて加工するものなの。だからあんな、ルルアーナが作ったみたいな大きさの宝石は存在しないのよ」


 大きさが問題なの?もっと小さかったらよかったの?


「ルルアーナがあんな美しい宝石を作れることが悪い人に知られたら、攫われて、宝石を生み出すことだけをさせられるんじゃないかって………そう想像したら、怖くなったのよ」


 そう、だったんだ。わたしの心配をしてくれたんだね。


 あれ?でも、宝石が作れるということが心配なら、サファイアを作った時点で心配するものじゃないの?小さなダイヤをいっぱい作ったときは、目がキラキラしていたでしょ?あれはなんだったの?


 ジーッとお母さんを見つめていると、お母さんが両手で顔を覆った。


「だって、ダイヤがいっぱいで嬉しかったんだもの!」


 え?


「私は貴族の娘として育てられたし、ラングレー辺境伯家は裕福だけど、あんなに多くのダイヤ………しかも大きくて、傷も曇りもなくて、キラキラしたダイヤを一度に見たりしたら欲しくなっちゃうのよ!」


 つまり、あれは貴族令嬢として育ったからこその反応だったということ?こんなに真っ赤な顔で叫ぶほど、欲しくなったの?


 ………そっか。そうだったんだ。


「もう、恥ずかしい………!」


 お母さんは心の声を吐き出し、恥ずかしさに身悶えしている。


 ふふっ。可愛い人だね。


『ルルアーナも可愛いわよ』


 そう言って、わたしの肩によじ登ってきていたライラがわたしの頬をツンツンとつついた。


 ふふふ。ありがとう。









 

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