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第39話 ラグナ騎士団長

 オルクスひいおじい様が騎士たちに連れて行かれたあと、馬車はダフネの町へ向けてゆっくりと走り出した。


 そして、馬車の中は微妙な空気が流れていた。


「ルルアーナは私のことが好きなのか?」


「………あい」


 ニコニコニコ


「ルルアーナはいい子だな」


「………あい」


 ニコニコニコ


「ルルアーナは………」


 なぜか、ティガはこんな調子でずーっとわたしに話しかけてくる。しかも、なぜだかすごくご機嫌で、ずっと笑顔を浮かべている。ちょっと………いや、だいぶ怖い。


 なぜなら、このやり取りを聞かされているアルが、ティガを見ながらずっとため息をついているから。


 当然、こんなやり取りに入る勇気がお母さんとお父さんにあるはずもなく。ふたりとも、困惑を顔に浮かべながら、いつ終わるともしれないやり取りを黙って聞いている。


「お客さん方!ダフネの町に着きましたよ!」


 御者席から御者さんの嬉しそうな声が聞こえ、窓から町の賑やかな声や音が聞こえてきた。町に活気があるようでなにより。


 馬車が止まるのを待って、すぐに騎士が顔を覗かせた。さっきオルクスひいおじい様を連れて行った騎士のうちのひとりだよ。


「皆さん、すぐに馬車を降りてください。騎士団長が大旦那様を抑えている間にここを離れます」


「「はい。わかりました」」 


 元々、すぐに馬車を降りられるよう準備だけはしていたお母さんとお父さん。動きは早かった。スッと立ち上がり、ティガを促して馬車を降りると御者に一礼すると、人混みをかき分けて走り出し騎士の後を急いで追いかけた。


 騎士は金属の鎧ではなく、動きやすさを重視した革鎧を身に着けている。身軽だから、グリーシャ辺境伯領から馬を飛ばして来ることができたんだね。


 わたしはいつものようにティガの左腕に座った状態で、移動はティガ任せ。ティガにしがみつく以外にすることもないので、ぼんやりと色んなことを観察して過ごしていた。


 ダフネの町はレウリコの町と違い、ちょっとした丘を中心に作られていた。町の中心から外側へ向かって何重にも壁で仕切られていて、見るからに防御力が高そう。人々は笑顔が多く町全体に活気があって、通りすがりに見たお店は色々な品が並んでいる。


 いい町だね。


 わたしたちの先頭に立って道案内をしてくれている騎士は、どうやら町の中心に向かっているらしい。町区切る壁には兵士が立ち通行人に目を光らせていたけれど、騎士の革鎧に刻印された紋章を見ると皆、優先的に通してくれた。


 騎士が向かっていたのは、やっぱり町の中心だった。貴族の邸なのか、広い敷地と立派な建物が建っていた。門の前にいた兵士は騎士の姿を確認すると急いで門を開けてくれて、騎士は吸い込まれるように敷地内へ入って行った。


 騎士は、敷地内に入ってすぐ右へ飛び退いた。びっくりしたけど、しっかり受け身をとっていたので怪我はなさそう。横に転がったあとすぐ立ち上がり、次の行動に備えている。普段からしっかりと訓練を積んでいるんだろうね。


 騎士の動きに気を取られていた隙に、邸の方から人のものとは思えない威圧が発せられた。咄嗟にお父さんが動いてお母さんを身体を張って守り、騎士がいる方へ移動した。


 ティガは当然のように自分の威圧で相手の威圧を弾き飛ばした。おかげで、わたしは無事だった。


 ドンッ!


 それは、地面を蹴る音だったように思う。目で追えるスピードじゃなかった。気づいたら、目の前にオルクスひいおじい様がいた。………ううん。ティガが右手でわたしの目を隠したので、なにも見えなくなった。


「ルルア………」


「大旦那様!」


 わたしを呼ぶ声が、べつの男性の声にかき消された。声の感じから、怒っているのがわかる。

 

「大旦那様、よろしいですか」


 静かな声なのに圧を感じる。さっきの威圧を放ったのはこの人だ。


「いや、よくない。後にしろ。いまはルルアーナを可愛がり………」


 この声はオルクスひいおじい様だ。


「いけません」


 あ、また話をぶった切った。


「久しぶりにお会いになられたご家族様とは、積もる話も御座いましょう。邸の応接室を借りております。お話はそちらでどうぞ」


「嫌だ。儂は今すぐルルアーナと話すのだ。抱っこもするぞ」


 ティガの手をトントン叩くと、顔から手を退けてくれた。


 視界に映ったオルクスひいおじい様は、革鎧を身に着け腰に剣を()いた騎士と向かい合っていた。


 あ、この人、強い。


 次に騎士に感じたのは、身体の大きさ。背が高くて鍛えられた筋肉が大きいから、身体そのものが大きく見えるよ。年は三十代後半かな?それから、意思が強そうな整った顔をしている。


 平民が就く兵士と違って、騎士になるのは貴族が多いの。だから、彼は貴族で間違いないはずだよ。


 この貴族も、道案内をしてくれた騎士も、顔を見る限り貴族の血を引いているはずなの。


 見た目を気にする貴族たちは、美しい者と結婚することが多く。代々がそうだから、必然的に子供も美しくなることが多いんだよ。


 それに、貴族は一族の繁栄のために優れた血を欲しがるから、身体能力が高かったり、魔力が多かったり、勉強が得意だったり………秀でた能力を持っている者が求められることが多いかな。貴族に魔法使いが多いのも、この血統を優先する思考のためらしいよ。


「ラグナ騎士団長、そこを退け!」


 オルクスひいおじい様が叫んだ。


 わぁ。オルクスひいおじい様ったら、わたしたちの迎えに騎士団長を連れて来たの?安全のためにはその方がいいかもだけど、こんなことに騎士団長を連れ出していいのかな?






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