第34話 魔宝石に属性を持たせよう
ふたり部屋なせいで、客室に置かれているベッドはシングルベッドがふたつだった。だから、ふたりで並んで寝るには少々狭い。そして、家族三人で寝るのは無理がある。
というわけで、大人たちは、誰がわたしと寝るかということで揉めていた。
「ねえルルアーナ。ルルアーナはお母さんと一緒に寝たいわよね?」
「あい」
「お父さんと一緒に寝たら、色んな話をしてやれるぞ。ルルアーナはお父さんがいいよな?」
「あい」
「いや、ルルアーナと寝るのは私だ」
「あい」
もしも、お母さんとベッドで寝ると、お父さんがひとり床で寝ることになる。これはお父さんが可哀想。
次に、お父さんのお話は魅力的だけれど、お母さんを床で寝かせるわけにいかないので、ティガにお母さんと添い寝してもらうことになる。………これは、なんか嫌。
で、ティガとわたしが一緒に寝る場合。もうジュードはいないから、ティガに猫の姿になってもらってもふもふを堪能することができる!
「いいだろう。ルルアーナ、十分、堪能するがいい」
言うが早いか、ティガは黒猫の姿になった。さっそくティガの首に抱きついて、その毛を吸う。うふふ、猫吸い最高〜!
「あらあら。ルルアーナ、よかったわね」
「そのお姿なら、ルルアーナと寝てもいい………です」
お母さんとお父さんがベッド割りに納得してくれたので、わたしはティガを撫でたり、抱き着いたり、枕にして楽しむことができる!
お母さんはオルクスひいおじい様への手紙を書き始め、お父さんは剣の手入れを始めた。
書き上がった手紙は、いつものようにアルが届けに行ってくれた。
そして、ジュードがいないことでライラもポーチを出ることができた。テーブルの上で、魔宝石を味わうようにして食べている。
それぞれがまったりした時間を過ごしたあと、アイテムボックスから干し肉と果物を出し、わたしたちは簡単な食事をすませた。
夜ご飯を食べに行かないのは、宿屋に着いた時間が遅かったせい。今頃の時間はどこのお店もお酒を楽しむ大人たちで賑わっているから、二歳児のわたしを連れて行くのは危ないだろうと皆が判断したの。
確かにね。北区は、比較的裕福な人が出入りする区画だよ。バカ騒ぎする客はいないと思う。だけど、裕福な商人や貴族に絡まれる可能もあって、地位と権力をかさに言うことを聞かせようとする人間に睨まれても困る。
ここは国境近くの町だから、問題を起こして国境を渡れなくなったら困るもの。
翌朝、やっぱり早く目が覚めた。
特にすることもないから、宝石を作ったあとで魔宝石へ加工することにする。
宝石を作る準備をしていると、人の姿になったティガと、鳥の姿のアルがわたしの手元を覗き込んできた。
「ルルアーナ。そろそろ、ただの魔宝石ではなく属性を持たせた魔宝石にしてはどうだ?」
『そうね。まずは、水属性がいいんじゃないかしら。火属性から試して火事になったら困るでしょ』
あはは。そうだね。ティガ、宝石に属性を持たせるってどうするの?
「なに、簡単だ。基本は普段やっている魔宝石作りと同じだ。魔宝石は、純粋な魔力を込めて作るが、属性を持たせるには魔力の方向性を示してやる必要がある」
『魔力に、水属性になれ!って命令すればいいのよ』
「アルの言う通りだ。難しく考えず、やってみるといい」
命令か………お願いしてみようかな。
わたしは一番小さなサファイアの石を手にとって握り締めた。そして、「水属性になって!」と願った。身体から魔力が抜けた感じはするけど、成功したかはわからない。
ティガがわたしの手からサファイアを取って木のコップに入れた。なにをするの?
ティガはコップに向かって「水を満たせ」と言った。ドキドキしながら見ていると、サファイアから水が溢れ出してコップのフチまで水でいっぱいになった。
「ふむ。成功したようだ。ルルアーナ、よくやったな」
やったー!嬉しい。
『ルルアーナ、いい?いまのは、宝石に水属性魔法を付与した、付与魔魔法と言うのよ。本来なら複雑な魔法陣や魔術回路を使うのだけど、さすがルルアーナ。私たちの愛し子だわ。魔法にも愛されているのね』
ん?えと、アル?いま、大事なことをサラッと言ったよね。
「………言ったな」
ティガもそう思うよね?!
あぁ、もう、わたしだって、薄々気づいてはいたんだよ。どう呼んでいいかわからなかっただけで。
だって、いまの状態はどう考えてもおかしいもんね?生まれる前から神様が付き添ってくれて、手取り足取りなんでも教えてくれて、いつもわたしの望みを叶えようとしてくれるなんて、わたしは恵まれすぎだもの。
ここまでしてくれるのは、神様にとってわたしが特別な存在だから。
わたしは、ダンケルティーガ様とアルベルティーナ様の【愛し子】だからなんだよね?




