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第33話 治癒魔法を使ったあと

グロい表現があります。苦手な方は、読まずに飛ばしてください。

 ベッドの上では、光に包まれた人物が横たわっている。治癒魔法によって全身の治療が進むにつれて潰れていた胸や腹が膨らんだり、粉々になった脚の骨が正しい位置に戻ろうと皮膚の下で動いたり、赤黒く(ただ)れた皮膚が綺麗になりハリを取り戻していく。


 正直言って、見ていて気持ちのいいものじゃない。もっとはっきり言うと、胃液が迫り上がって来るほどには気持ち悪い。


 実際、そばで見ていたジュードは床に吐いている。


「あああああっ!」


 ベッドの上で、包帯だらけの人物が悶え叫んでいる。


 麻酔で痛みは抑えられているけれど、全身を(いじ)くり回されている感覚はあるの。その感覚と恐怖に、叫ばずにはいられないんだと思う。


「よし、これで終いだ」


「うわああああっ!」


 ティガが潰れていた目の修復を終えると、パッと右腕を引いた。


 その直後、ベッドの上の人物が叫んでガバっとベッドの上に起き上がった。そして、チラリとジュードを見ると、胃から迫り上がってきたものをベッドの横の床に向かってぶち撒けた。もちろん、ジュードがいない方だよ。


 腐ったりして再生できなくなっていた部位は、無理に身体に吸収させると回復が遅くなるんだって。だから、身体から排出させるんだよ。


 ゲーゲー吐いていた男は、もう吐くものがなくなったところで涙を流しながら身体を起こした。床は男が吐いたものでグチャグチャだ。


「はぁっ………はぁっ………ジュード、なのか?」


「あ………父さん………!」


 見つめ合ったふたりは、抱き合おうとして、はたとお互いに酷い格好でいることに気づいた。


 ベッドの上の人は全身に包帯を巻いていたけれど、その包帯は血に汚れてドロドロ。本人も、綺麗な身体とは言えない状態になっている。


 ジュードは、自分が吐いたものや、父親が吐いたものが跳ねてかかっている。


 わたしとティガとアルは、ティガが結界魔法で防御してくれたのでまったく汚れていないよ。さっき空から落ちて来て、地面に着地したときには結界魔法を発動していたと思う。


 ちなみに、部屋の入り口にも結界が張ってあって。結界の向こうには受付にいた女性やいかつい男がいて、ジュードの父親の治療を見てしまったのか、やっぱり吐いていた。


 ジュードの父親を治療したあと、ティガは「 ついでだ」と言って指をパチンッと鳴らした。すると建物内のあちこちから叫び声や悲鳴が聞こえてきた。何人かは、吐いていたように思う。


 静かになるのを待って、もう一度、指を鳴らすティガ。すると、室内の汚れが一掃された。壁も床もピカピカで、ジュードやジュードの父親に、他の患者も綺麗な身体になっている。


 取り除かれた汚れはどうなったのかと言うと、まとめて建物の外に出されたあと高温で焼却処理し、建物裏手に置いたらしい。


 建物中からうるさいほどの歓声が響いて、建物の外にいた男たちが恐る恐る中の様子を見に建物内へと入って来た。


 そして、いかつい男たちのリーダーが部屋の入り口にやって来たところでティガはわたしごと姿を消し、転移魔法を使って建物の入り口に移動した。


 建物の外には人だかりができていて、怯えながら建物の中の様子をうかがっていた。そんな人々を避けて進み、ティガお母さんとお父さんが待っている東区の入り口へと向かった。



○○○



 お母さんとお父さんと合流したあと、わたしたちは宿屋を確保するためレウリコの町の北区へ移動した。東区の宿屋は満室だったから、一縷(いちる)の望みにかけて、空室のある宿屋を探してやって来たの。


「申し訳ありませんが、本日、空いているのはふたり部屋が一室のみです。ですから、四名様でいらっしゃるお客様をお泊めすることはできません」


 宿屋の受付にいた男性の言葉に、わたしはショックを受けた。ここを断られたら、町の外で野宿することになっちゃう。あまり治安のよくないレウリコの町だから、野宿は危険だと思う。


「料金は四人分お支払いますから、ふたり部屋に泊めてください。お願いします。一泊だけでいいんです」


 お父さんがお金が入った革袋をカウンターに置いた。たぶん、四人分の宿泊料金よりずっと多い。


 受付の男性は、革袋の中身を確認することなくカウンターの下にしまった。


「ご宿泊のお申し込みありがとうございます。こちらがお部屋の鍵でございます」


 受付の男性は鍵をカウンターに置くと、ニコリと笑った。


「ああ、ありがとう。」


 本当に、無事チェックインすることができてよかった。


 客室にはベッドがふたつと、小さなテーブルと椅子が二脚、荷物を置ける棚がひとつ置いてあった。全員が動き回れるほど広くはないけれど、それぞれがベッドや椅子に座っていれば問題ないほどのゆとりがあった。


「 そういえば、おじい様から手紙のお返事が来てないわね?」


 お母さんがポツリと言ったことで、オルクスひいおじい様からの手紙をアイテムボックスにしまったままだったことを思い出した。


「おかーしゃん、ごめしゃい。これ、ひいじーじのてがみ」


「あら、来ていたのね。それじゃあ、お返事を書くから。アル、おじい様に届けてもらえるかしら?」


 ティガの肩に止まって姿を消していたアルが、姿を現すとピーと綺麗な声で鳴いた。







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