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第28話 平均値とは?

 オルクスひいおじい様の手紙には、挨拶をすっ飛ばして、お母さんとわたしを心配する言葉や早く会いたいということが言い方を変えて何度も書かれていた。


「幼いルルアーナの体調はどうだ?」

「馬車の旅はつらくないか?」

「今すぐにでも迎えに行きたい」

「騎士たちが邪魔だ」

「人助けもいいが、ほどほどに」


 等々


 この手紙のサイズで、よくこれだけ詰め込めたものだと思う。


 初めて会う親戚が、オルクスひいおじい様でよかったと思う。

 

 オルクスひいおじい様、わたしも会いたいです。


『それなら、私が連れて行くか?』


 あ、ティガ。背中に乗せてくれるの?


『あぁ。乗り心地は悪いかもしれんが、ルルアーナがよければ………』


 嬉しい!ありがとう、ティガ。


『そうか。いつ行く?』


 ううん、行きたいけど、行かない。


『………なぜ』


 ティガに触ったり、撫でたりするのは大好きだよ。乗れるのも嬉しい。だけど、ここは人が大勢いる人間の街だから、ティガの姿見える人がいるかもしれないでしょ。騒ぎにはなりたくないよ。


『ふむ。では、こうしよう』


 ??


 宿屋の屋根の上にいるティガの気配が動いた。そして、音もなくするりと室内へ入って来て、室内に入るなり音もなく歩くとテーブルのそばにいたわたしの隣へやってきた。


 ティガ、どうしたの?


 ティガはわたしの質問には答えず、その場におすわりした。 


 そのままティガを見ていると、すっと姿を現した。そして、その姿がふっと揺らぐ。揺らぎの中で、今までの黒猫の姿から全身黒尽くめの男性に変わった。


 その姿は、人間そのもの。背が高く、身長は百九十センチほどもあり、長い黒髪に金色の瞳、きっちり着込んだ服は黒地の魔法使い風のもので、羽織った短いマントも黒。手袋も黒だった。なにより目を引くのは、男性にはもったいないほどの美貌だよ。長いまつ毛に、シミ一つない褐色の肌、左右でバランスが取れた顔は、ため息が出るほど美しい。


「ため息などついて………この姿は不満か?」


 ティガの言葉は、いつもの念話じゃなく口を使って放たれた。低音ボイスが心地いい。


 えっと、その姿はどうしたの?


 神殿に飾られている神像とは姿が違うよね?


「確かに、これまで人に見せてきた姿とは違うな。人に見られたときに私だと気づかれないよう、この姿を選んだのだ」


 そうなの………でも、そんなに綺麗になる必要ある?


 これ絶対に人の注目を集めるよ!


「人の平均値にしただけだ。他意はない」


 ………なぜだかわからないけど、どこかで人の平均値は美人になるって聞いたことがあるよ。あれ、本当の話だったんだね。


 じっとティガを観察していると、ティガは床に膝をつき、背中を丸めてわたしと目線を合わせた。


「 この姿は嫌か?」


  嫌じゃないよ。すっごい美人でびっくりしただけ。


「嫌ではないが、不満はあると?」


 その姿はあんまりにも綺麗だから、人目を引くでしょ。目立ちそうだな、って思っただけだよ。


「では、こうしよう」


 そう言うと、ティガはマント付いていたフードを目深に被った。


 そうすると確かに顔は隠れるけど、見えている口元だけでも美人だとわかってしまう不思議。


「おいで、ルルアーナ」


 言われて一歩前に出ると、ティガが嬉しそうに笑ってわたしを抱き上げつつ立ち上がった。


 その動きでわかった。見た目は細いのに、ティガの身体はしっかり筋肉がついている。腹筋割れていそう。


 そしてティガが着ている服は、おそらく、とんでもなく質がいい。しっとり滑らかで手触りがよく、生地の厚みは十分にある。これは、貴族と間違われてもおかしくないほどだよ。しかも、高位貴族ね。


 わたしを抱き上げたティガは、椅子に座ってわたしを自分の膝の上に座らせた。お互いの顔が見える横座りだよ。


「ふむ。悪くないな」


 え、なにが?


「こうしてルルアーナに触れるのはどんな感じかと、時折、考えていた。うむ。悪くない」


 言いつつ、わたしの頭を撫でるティガ。その手つきは優しく心地いい。


 思わず、ティガにぎゅっと抱きついた。


「うむ。悪くない」


 そんなふうにしていると、お母さんが寝返りをうって顔がこっちを向いた。そっとまぶたが上がり、ぼーとしたままわたしたちを見つめてきた。ふと、その顔が驚愕に変わる。


「誰?!」


 その声でお父さんとジュードが飛び起きた。ふたりは部屋を見回して異変を探し、わたしを見て固まった。


「ルルアーナ、その方は?」


「お母さん、ティガだよ。来てくれたの」


 わたしがティガを紹介すると、お母さんお父さんはぽかんと口を開けた。ジュードは、ティガの格好を見て動揺している。


「あの………ティガ様、ですか?」


 お父さんが、恐る恐るティガに問いかけた。


「そうだ。ルルアーナがオルクスに会いたがっていたので、私が連れて行ってやろうと思い姿を現したのだ」


「 いえ、それはちょっと………困ります。ルルアーナは、俺たちと一緒に馬車で向かいます」

 

「そうか。ルルアーナはそれでいいのか?」


 ティガがわたしに話を振ってきたので、注目がわたしに集まった。


「てぃがとみんないっちょにばしゃのりゅ」


「そうか。皆一緒に馬車に乗る、か。それなら、アルも一緒でいいな?」


「「「「………」」」」


 ええと。アルも人の姿になってついてくるのかな?






 

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