第26話 手紙を書こう
冒険者ギルドは、冒険者のお金を預かってくれる所謂銀行業務もしている。その受付カウンターに移動して、ラズとトーリは二つに分けた報酬のほとんどを預け入れた。
うんうん。現金を持ち歩くのは危ないから、そのほうがいいよ。
なんて言いつつお父さんは冒険者が垂涎のビックホーンブルの革を背負っているんだけどね。
受付嬢の反応を見たお母さんが強盗に遭うことを警戒して、わたしたちはラズたちの一軒家ではなく、少しお高い防犯のしっかりしている宿に泊まることに決めた。
ラズとトーリは残念がり、わたしたち家族と一緒に泊まることになったジュードはしきりに恐縮した。
「俺たちで役に立てることがあれば、なんでも言ってくださいね。今度ソランの街へ寄ることがあれば、声をかけてもらえると嬉しいです」
「わかった。また会おう」
ラズとトーリと別れを告げて、わたしたちは宿にチェックインをした。
その宿は、下級貴族や裕福な商人が泊まる少し高級な宿だった。わたしやお母さんの質素な格好や、防具や剣を身に着けたお父さん、ヨレヨレの格好をしたジュードを見て、一瞬、宿泊を断ろうとしたの見てとれた。
でも、お父さんが背負っているのがビックホーンブルの革と気づいたようで目の奥が光り、それからはきちんと客として扱ってくれた。
宿の対応は間違ってないと思うの。だって、客商売だもの。支払い能力のない客や、宿の格に合わない客は断る権利があると思う。そこに高級品を持っていることに気づいて、将来の上客になる可能性を見越して泊める選択をしてくれたのはありがたいことだよ。
わたしたちは全員一緒に泊まるため大部屋を選んだ。というのも、ジュードを個室に泊めようとしたら全力で拒否されたから。泣いて嫌がられたら、諦めるしかないよね。
この宿には珍しくお風呂があって、食堂でご飯を食べたあとに男女別々に交代でお風呂に入った。部屋に泥棒が入るとは思わないけど、用心するに越したことはないもんね。
先にわたしとお母さんが共同のお風呂に入りに行き、そのあとお父さんとジュードがお風呂に行った。
部屋の扉が閉まったところで、ポーチからライラが飛び出してきた。背中の翼をパタパタ動かし、部屋の中を何周かしてからわたしの腕の中に飛び込んで来た。可愛い。
『ルルアーナ、ご飯ちょーだい!』
いーよー。
アイテムボックスから前回の残りのルビーを取り出してライラにあげると、嬉しそうに飲み込んだ。
それでライラのご飯がなくなったので、今度はアイテムボックスから土の入った巾着と石を取り出すと宝石を作り出す。前回と同じエメラルド、サファイア、ルビーと、おまけのガーネットができた。四つの宝石に魔力を込める。
ライラにエメラルドをあげるとバリバリ食べ始めたので、その間に土入り巾着と石、残りの宝石をアイテムボックスにしまう。
その後、食事を終え、ポーチの中で丸くなったライラを抱えながらわたしはベッドの上でウトウトしていた。ライラのぬくもりが心地いい。
そうしているうちにお父さんとジュードが戻り、ジュードは戻ってすぐベッドで寝息を立て始めた。
そうだよね。疲れてるよね。わたしも同じだよ。
『ルルアーナ、ちょっといい?』
ん。アル、いいよ。ふふっ。まだ起きてるよ〜。
『もう、ルルアーナったら。ちゃんと聞いてね。私、あのじいさんの様子を見てきたの。ダフネって言う町に着いてたわよ』
え、おじいさん?
『そう。セスト国に入ろうとして、ふたりの部下に止められてたわよ。手紙でも出して、ダフネで待つよう伝えたほうがいいんじゃない?」
そうだね。じゃあ、手紙書くから届けてくれる?
『いいけど、急いだほうがいいわよ』
うん。そうする。
わたしはぼ〜っとしたまま身体を起こし、黄色のポーチに手を入れた。ジュードは寝ているから、アイテムボックス使ってもいいよね。紙とペン、インクを取り出すと、ベッドの上で書こうとしてやめた。二歳の身体じゃ、不安定なところで手紙を書けると思わないし、そもそもわたし、字を書いたことないんだった。
「ルルアーナ、どうしたの?お絵かきがしたいの?」
お母さんがそう声をかけてきた。
「ん〜ん。ひいじーじにおてがみかく」
「あら、ルルアーナは偉いわね。でも、ルルアーナはまだ文字を書けないでしょ?お母さんが代わりに書いてあげるわ」
お母さんは紙などを持ってテーブルに置き、今度はわたしを抱っこして一緒にソファに座った。
「ミーア、手紙を書くのか?」
「ええ。おじい様に返事を書いていなかったでしょう?きっと、待ってくれている思うの」
「そうだな。ソランの街からダフネの街までまだ距離があるし、手紙を出しておいたほうがいいな」
「そうね」
そうしてお母さんが手紙を書き、ジュードが寝ていることから、またアルにお願いして手紙を届けてもらうことにした。
前回より距離が短かったことから、アルはすぐ行って帰ってきた。けれど、すでに睡魔に襲われていたわたしは、ひいおじい様からの返事を見ることなく眠ってしまった。




