第25話 ソランの街の冒険者ギルド
乗合馬車は、予定を大きく遅れたものの、なんとか日暮れまでに王都の隣街ソランにたどり着いた。御者の隣に座ったお母さんが定期的に馬へ回復魔法をかけたり、ティガとアルが馬車に魔物が近づかないように警戒してくれたおかげだよ。
わたしもお母さんと一緒に御者席にいたかったけど、馬車のスピードが出て危ないから。と、お父さんとジュードと、それからラズとトーリと一緒に馬車の中で過ごした。
街に着いたのが夕方だったこともあって、手頃な宿は空いていなかった。そこで、ラズとトーリが冒険者の仲間たちと一緒に借りている一軒家へ招待してくれたの。
その家は職人街にあって、まだレベルの低い冒険者が仲間同士でお金を出し合って借りている一軒家なんだって。レベルがDランクに上がれば出て行くという暗黙の了解の元、大家さんが格安で住まわせてくれているらしいよ。
という説明でわかったと思うけど、ラズとトーリはEランクだった。田舎から出て来て、まだ半年なんだって。
ラズたちの家へ行く前に、皆一緒に冒険者ギルドへ行く。昼間倒したビックホーンブルの鼻と魔石を提出し、換金してもらうためだよ。
このソランの街にある冒険者ギルドも立派な造りで、中に入ると混んでいた。そして、皆でカウンターに並んでいると、少しづつお父さんが背負って革に気づいた人たちがざわめき始めた。
ようやく順番がやってきて、お父さんとラズとトーリは身分証となるプレート状のギルド証を見せてから、カウンターにビックホーンの討伐証明部位となる鼻と魔石を置いた。それを見た受付嬢の顔色が変わった。
「どこで遭遇したんですか。他に、持ち帰った部位はないんですか?革は?肉は?骨と内臓は?!」
「王都とソランの街の間にある森で薬草採りをしている最中に出会いました。魔物討伐は予定していなかったので、多くを持ち帰るための手段がありませんでした。持ち帰ったのは、鼻と魔石と少しの肉です」
あらかじめ馬車の中で打ち合わせをしていたので、ラズはスラスラと説明することができた。
「なんてことなの!持ち帰らないなんてありえないわ!」
「あ、でも、通りすがりの女性冒険者パーティーがいまして。彼女たちに残りのビックホーンブルを譲ったので、なんとかして運んでいるかもしれませんよ」
「そのパーティーの名前は?!」
「ええと。パーティー名は聞いていませんが、リーダーはユスカさんと言ったかな?四人パーティーでした」
「わかりました。すぐに人を募って派遣しましょう。それで。後ろのあなた。革の売却ですよね?」
受付嬢はお父さんが背負った革を睨みつけるように見ながら言った。目つきと顔が怖い。
「いえ。これは防具に加工するのでお渡しできません」
お父さんはにこやかな、だけど譲らないぞ、という笑顔で言った。
「そうですか。では、少々お時間をください。ギルド長とお話しを………」
「いえ。俺はフィリルの街の冒険者ですし、人を待たせている旅の途中なものですから。申し訳ありませんが、ここで失礼します」
すると、受付嬢の目つきがつり上がった。うわあ、ひどい顔。
「ですが、ラズさんとトーリさんはソランの街の冒険者ですよね。報酬に少し上乗せをすぐので、革を譲ってもらえるよう説得してくださいますよね」
「いや〜。じつは、ビックホーンブルを倒してくれたのは彼で、俺たちは報酬を譲ってもらった側なんです。なんせ、Eランクですから。この上、革まで欲しいなんて言えませんよ」
「はあ。わかりました。それで、薬草はどこに?薬草採取のクエストを受けて出掛けていたんですよね?」
「いえ?薬草採取は常時依頼の物を取りに行っただけで、クエストは受けていません。それに、摘んだ薬草はビックホーンブルに追われて逃げている途中になくしてしまいました」
「………」
これは、クエスト失敗にしない代わりに革を出させようとしてたな?クエスト失敗は、冒険者としての評価に繋がるから冒険者は嫌がるもんね。
言うことがなくなった受付嬢が、カウンターに革袋をどんっと置いた。引きつった笑顔を浮かべながら。
「「ありがとうございます」」
にこやかな笑顔を浮かべると、ラズとトーリは報酬の入った重い革袋を受け取った。




