第24話 解体作業
お父さん目指してわたしは歩く。歩く………ある………く?
隣を歩いていたジュードが繋いでいた手を離し、わたしをひょいっと抱き上げた。細い見た目に反して、力があるみたい。
「ありゅけるよ?」
「うん。知ってる。でもおまえ、歩くの遅すぎ」
ガーン!
え、そんなこと言われたの初めてだよ?
お母さんを見ると、首を可愛らしく傾けて微笑んでいた。
否定、してくれないの?!
うわ~ん!
ショックを受けたわたしは、お父さんのところに着くまでジュードに抱っこされたままうなだれていた。
ジュードに下ろしてもらって顔を上げると、解体を始めているお父さんと、身を隠して森の入り口に佇むティガとアルが見えた。
ビックホーンブルから少し離れた場所では、なぜか女冒険者ふたりが参加しようとしていて、若い冒険者ふたりと揉めていた。
「こっちは親切で解体してやるって言ってんのに、なんで止めるんだよ。どうせお前らみたいな初心者じゃ、解体なんてできないだろ」
「俺たちだって解体はできる。それに、こいつは俺たちの獲物だ!横取りしようたって、そうはいかないぞ!」
「はあ?そんなおもちゃみたいな剣で、ビックホーンブルが解体できると思ってんのか。ばっかじゃねえの。だいたいさ、荷馬車もないくせにこんな大物をどうやって運ぶ気だよ。魔石と討伐部位と、あといくつかの部位しか運べねーじゃん。どう残りは捨てて行くんだろ?それをあたしらがもらったっていいじゃない。違う?」
女冒険者の言葉に、若い冒険者は言葉が出ない。正論だから。
わたしたちが乗ってきた馬車は近くにあるけど、あれはあくまで乗合馬車。解体直後の血まみれの部位を乗せることはできない。
わたしのアイテムボックスを使えばいくらかは運べるけど、こんなところでアイテムボックスの存在を明かす気はない。それは、お母さんもお父さんも同じだと思う。
ということは、女冒険者が言うように、持って行けるのは魔石に、討伐部位と言われる耳か鼻(わたしは、どこかは知らない)、あとは防具などに重宝される革と、食用の貴重部位くらいかな。
ビックホーンは巨体だから、若い冒険者ふたりとお父さんで分け合ったとしてもかなりの部分が残る。女冒険者が欲を出すのもしかたない。
「ラズ、トーリ。気持ちはわかるが、解体を早く終わらせて、血の匂いで魔物が集まって来る前にここを立ち去ったほうがいい」
「アスラさん………わかりました。アスラさんの言う通りにします」
「俺も、それでいいです」
いつの間に自己紹介を終えていたのかな?お父さんが若い冒険者を説得すると、ふたりは素直に頷いた。
「最初からそう言えばいいんだよ!このガキ共が!あははっ」
「やったねユスカ!」
高笑いする女冒険者。嫌な感じだよ。
「ただし、解体の手伝いはいらない。俺たちが作業している間は手を出さないでくれ。それが守れるなら、残りはすべて君たちの物だ」
お父さんの提案に、女冒険者たちは大喜びした。
「あははっ。その言葉を守んなよ」
「リールたちを呼んで来る!」
女冒険者は、ユスカと呼ばれた女が残り、もうひとりが馬車に向かって走って行った。
それから、お父さんは若い冒険者ラズとトーリに手伝ってもらいながら革を剥ぎ、胸を切り開いて魔石を取り出した。
魔石は綺麗な透明で、大きさはお父さんの拳ほどもあった。それを見た女冒険者たちが色めき立つ。
「これは君たちの物だ。こっちもな」
お父さんがラズとトーリの手に、魔石とビックホーンブルの鼻を乗せた。
「だめです!ビックホーンブルを倒したのは、アスラさんじゃないですか」
「ビックホーンブルを先に見つけたのはラズとトーリじゃないか。俺は、倒すのを少しばかり手助けしたに過ぎないよ」
「でも、俺たちだけじゃやられていました。アスラさんが来てくれたおかげで、いま、こうしていられるんです」
「それなら、革をもらっていいか?あと、肉を少し」
「「はい!」」
お父さんたちがそれぞれ欲しい肉をカバンに詰めると、ソワソワしながら待っていたユスカたちが前に出た。
「こいつは、もうあたしたちのもんだからな!」
「それはいいが、乗合馬車をもうかなり待たせてしまっている。これ以上待たせるのはよくないが、どうする」
その乗合馬車は、女冒険者の残りふたりがこっちへ来るときに一緒に来ている。馬車を守ってくれる冒険者がいない状況で、御者と老夫婦の三人だけで待つのは危険だから。
「行っていいよ。あたしらは解体が終わったらここから離れた場所でキャンプをして、近くの村でも目指すよ」
そういうわけで、空いた馬車の席にラズとトーリが座り、乗合馬車は出発した。
当然、魔物が寄ってこないように周囲を警戒していたティガとアルも出発した。
女冒険者たちが、無事に近くの村にたどり着けるといいね。




