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第2話 さらさらの神様

 わたしには、お母さんとお父さんとふたりの神様がいる。


 兄弟はいない。一人っ子なの。


 わたしたちが住んでいるのはプルフ村の端っこ。森の側にある赤い屋根の一軒家を、村長さんから借りているんだって。


 お母さんは洋裁が得意で、村に来る行商人から布や糸を仕入れて服を仕立てては、村人に安く売っている。すごいんだよ。縫っているときのお母さんの手は、動きが見えないくらい早いの。


 お父さんも手先が器用で、いろんな物を作ってくれる。それに狩りが上手で、森にいる動物や、村の家畜を狙ってやって来る魔物を狩っているの。


 ふたりとも、村の人から頼りにされているんだよ。


 今日は女の人が三人来ていて、玄関でお母さんから服を受け取っているのが見える。


 わたしはいつもの木の下で、その様子を眺めていた。


 三人の女の人のうち、ひとりは村長の奥さんで、あとはその取り巻きだ。手にした服を広げて、お母さんに向かってなにか怒鳴っている。


 庭で薪割りをしていたお父さんがそれに気づいて、駆け足でお母さんのところへ行った。すると、村長の奥さんたちは大人しくなり、今度はお父さんにベタベタ触り始めた。なんだか、気持ち悪い。


『ルルアーナ、あの人たちを懲らしめてあげましょうか?』


 今日来ているのはふわふわの神様じゃなくて、さらさらの神様。


 さらさらの神様は、とっても声も姿も綺麗。だけど、その綺麗な声でときどき毒を吐く。


『ふふふ。どんなお仕置きがいいかしらね?風を起こして服を切り刻んでやろうかしら』


 それはだめ。お母さんが新しい服を仕立てることになっちゃうよ。


『そう。それじゃあ、髪を切る?それとも、動物をけしかけて怖い思いをさせる?』


 もう、神様ったら!そういうことをするから、村の人が家に来ることを怖がるんだよ?


 そのせいで、わたしは友達ができないんだからね。


『なに言ってるの。ルルアーナくらいの子供なんて、まだおむつも取れない赤ちゃんじゃない。なにして遊ぶのよ』


 うっ、確かに。年の近い子と、なにをして遊べばいいのかわからない。


 あ、村長の奥さんたちが帰って行く。よかった。これでいつもの平和な状態に戻れるよ。


『う〜ん。私が手を出すのが嫌なら、ルルアーナが自分でやってみる?』


 え、なにを?


『草を結んで簡単なトラップを作ったり、魔法を当てて転ばせてやるのよ』


 魔法?魔法があるの?


『あら。当然でしょ。ルルアーナの中にも魔力があるわよ。ほら、感じるでしょう?まずは、風を吹かせてみなさいな。そよ風がいいわね』


 そんな、魔法が使えてあたりまえみたいなことを言われても………。


『いい?魔法はイメージが大事なの。できると思えばできるし、できないと思えばできないわ。さあ、できると信じてやってごらんなさい』


 魔法はイメージ………。それじゃあ、木の葉が揺れるところを想像しながら………風よ吹け!


 ここの中で声を上げると、一部の木の葉が揺れた。


 やった!できた!


 わたしは声に出さずに、両手を上げてバンザーイ!とやった。


『ルルアーナ、なにをしている?』


 あ、神様!あのね、風の魔法で木の葉を揺らすことができたの!


 木の上に現れたふわふわの神様に向かって、わたしは褒めてほしくて言った。だって、初めての魔法だよ?成功して嬉しいに決まってる。


 ふわふわの神様は、前足を交差させたところに頭を乗せてわたしを見た。


『おまえがやったのは、風の魔法ではなく植物を操る魔法だ。まったく違うぞ』


 ええ?!


『ルルアーナ、魔法を使えたのはいいことよ。でも、イメージはしっかりしてね。そうじゃないと、望んだ結果とは違う結果になるわ』


 そうか、イメージか。わたしがイメージしたのは木の葉が揺れるところで、風が吹くことをしっかりイメージできてなかったと思う。だから、植物を操る魔法になったのね。



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