不思議な薔薇の香り
不思議な薔薇の香りに懐かしさを感じたローズ。
第5幕 ー不思議な薔薇の香りー
「さあ、座って話そうぞ。」
国王陛下がお父様とお兄様を誘い
王妃様が私と王子を見て
「子供達は、子供達で楽しんでらっしゃい。」
「王妃様、ローズを1人にしては...。」
「大丈夫よ。あの子強いし、それに…。」
扇で口元を隠しながらクスッと笑う王妃に
ハインとオルが心配そうにローズを見ると
「お父様の近くで、お食事していますわ。」
「そうか?くれぐれも、王子からは…。」
「過保護な父よ!さあ、行くぞ!」
国王陛下に言われて後ろ髪を引かれてる
お父様にローズが手を小さく振り
クルッと王子様の方を見てにっこりと
ローズが笑いかけながら
「ねえ、お腹空かない?何か食べましょ?」
「嫌、私は…。」
手を引っ張るローズに戸惑う王子を知り目に
周りの令嬢が、ヒソヒソと話していた。
「これと、これと、あっ!これ、私好き!」
お皿に料理があれこれ載せるローズを見て
呆気にとられてると
「さあ、食べましょ!」
テーブルには色んな食べ物が並べられていた。
「こんなに食べるのか?」
「あら、女の子は少食って訳ではなくてよ。」
ローズは、口にパクパク食べ物を入れては
美味しい、美味しいと喜ぶ姿を見て
王子が思わず、クスッと笑った。
「とってもおいひいから!」
ローズが前のめりで王子の口元に
ローストビーフを差し出すと
後ろにいた執事と護衛が止めようとしたが
スっと王子が手を上げ止めると
サッと所定位置に戻っていった。
「はい、あーん!」
「えっ?」
「早く!この体勢、辛いわ。」
ググッとテーブルに前のめりな体制で
ローズの手がぷるぷると震えるのを見て
恥ずかしいが、仕方なく口を開け食べてる姿を
ローズがジッと見ていてた。
「うん、本当だ、美味しいね。」
「でしょ?でしょ?」
ローズが喜びながら、笑顔で私を見ている姿に
何故か、自分の頬が熱くなってるのを感じた。
「デザートでも、とってこよう。」
「わあ!ありがとう! 」
ローズがニコニコと食事をする姿に
王子は、不思議な子だなと思った。
席を離れた王子を見て1人の令嬢が
ローズに声をかけてきた。
「ねぇ、少しいいかしら?」
ローズの目の前に人影が見えて
顔をあげようとした時、ぱしゃっと何かが
かかる音がして、胸元のドレスを見ると
赤ワインが、かかっていた。
「あら、ごめんなさい。手が滑ったわ。」
後ろの令嬢が扇で口元を隠しながら
クスクスと、ローズを見て笑っていた。
「あ…。」
泣いてその場から立ち去るかと思ったが
ローズが立ち上がると
「あの、ドレスに、かかってませんか?」
自分の置かれてる状況よりも
ワイングラスをローズにかけた令嬢を心配する
姿に驚いて見ていると
「何をしている?」
「これは、その…王子様…。」
ローズのドレスを見た王子が
令嬢たちを睨むとローズが
「わざとじゃないんで、いいんです。」
気丈に振る舞うローズを見て王子が
「何かないのか?」
「ローズ嬢、も…申し訳ございません。」
「いえ、ドレスが汚れてなくてよかったですわ。」
ササッと、その場を後にする令嬢たちは
去り際にローズを睨みつけて去って行った。
「ワインのシミって、落ちるのかしら?」
ハンカチを取り出してドレスについた
シミを拭くローズを見た王子が執事に話すと
「お嬢様、お召物を変えに行きましょう。
これでは、目立つので暫し
お身体に触ることをお許しください。」
「えっ?」
椅子に座ってるローズを執事が抱きあげると
王子がスっと着ていた
王室専用の正装の上着を脱ぐと
ローズのドレスの上に被せて
ワインのシミを見えないようにしてくれて
私を控え室に連れていってくれた。
(執事の方は、お兄様くらいの歳かしら?
黒髪に、目鼻立ちが綺麗だし、細いのに力もあるのね。)
その時、薔薇の香りがフワッと香ったような
懐かしいようなくすぐったいような
変な感覚にローズは、チラチラと何度か
執事の顔を見てしまっていた。
執事は、気にもせずに、まっすぐ前を見ながら
ローズを抱き抱えたまま廊下を出て
控え室に入りソファーに
ローズをソッと降ろしてくれた。
「すぐ、侍女たちに着替えと
湯浴みの準備をしますので
お嬢様は、こちらでお待ちください。」
深いお辞儀をして部屋を出る執事の姿に
目が離せないまま、目で追ってると
王子が、部屋の扉をノックし
中に入るとローズの隣に座って
「ローズ嬢、寒くない?」
「いいえ、寒くないですわ。」
「湯浴みの後に、温かい飲み物を用意させる。」
足早に王子が部屋を出ると1人で
ポツンと部屋に残されたローズは
あの香りに物思いにふけるように
思い出していた。
ローズは、変わりのドレスを着て髪を直して
もらってると慌てて部屋に来た
お父様とお兄様、部屋に入って来て
心配していたけれど、大丈夫と笑って答えたが
「屋敷に帰ろう。」
と、お父様に言われて王子様や国王陛下
あの執事に、お礼を言えず屋敷に戻る
ローズなのでした。
少しずつ輪廻の歯車が動きだしてきています。
ローズが気付いた薔薇の香りがする執事とは?
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