赤い鍵の秘密
ローズが生まれ、マレンが亡くなりオルは
憔悴しきるなか、夢枕で最愛の妻と再会し
屋敷に戻るオル。
赤い鍵を握っていた、ローズの秘密とは?
ー第3幕ー赤い鍵の秘密
「奥様!もう少しです!頑張ってください!」
「ううっ!」
部屋の扉の前で、オル・ドールが
ソワソワと部屋の周りをウロウロしていたのだった。
「セバス!マレンの様子は?赤子はまだか?」
首を振るセバス。夜が開ける時間になっていた。
「奥様!奥様!後、少しでございますよ!」
「うぅぅ…!!ああああっ!!」
マレンの叫び声と赤子の泣き声が屋敷中に響くと
オルが部屋の扉をバンッと開けた。
侍女が赤ちゃんを抱き抱えて
体を綺麗にお湯で洗い流し、タオルで体を包むと
オルの腕に、生まれたばかりの赤ちゃんを託すと
赤ちゃんは、オルの腕の中で元気に泣いていた。
「おお!元気な赤子だ。」
「はい、旦那様、待望の女の子でございますよ。」
赤ちゃんを抱き上げて喜ぶオル。
マレンにも見せようとベッドに近付くと
彼女の様子がおかしいことに気付いた。
「マレン?どうしたのだ?」
「奥様は…。」
医師の話を聞いてる最中、看護師たちや
侍女が慌ただしくマレンの体を綺麗に拭いていた。
元々、体の弱かったマレンは
最後の力をふりしぼり命懸けで赤子を産んだ
代償に自らの命を落としたのだった。
「母様!!」
翌朝、ベッドで眠るマレンの手を握り
ハインが、泣いている姿に
オルは最愛の人を目の前にしているのに
突然の別れと、悲しみに、涙が出なかったのだ。
腕の中で、笑う顔は最愛の妻とよく似ていて
余計に、オルの胸を締め付けていた。
マレンの葬儀、埋葬が終わり屋敷に戻ったが
屋敷に戻っても、マレンの姿は何処にもなかった。
『オル、お帰りなさい。』
私を迎えてくれる優しい笑顔のマレンが
この世から消えた、その夜
私は、執務室で静かに声を押し殺し涙を流した。
マレンが天に召されて1年が過ぎ去ったが
ぼんやりと時間だけが流れ、オルの心の喪失感と
悲しみは、何も埋まらないまま以前よりも
仕事に明け暮れる日々が続き、屋敷には
あまり戻らない生活をしていた。
その夜、オルは不思議な夢を見ていた。
夢の中で、懐かしい声に振り向くと
マレンが優しく私に笑いかける姿に涙で
視界が霞ながらも、マレンを抱きしめた。
「マレン、マレン…。」
『オル?いつまでも悲しまないで。
私を忘れない限り、ずっと、ずっと
あなたの心の傍にいますわ。愛してます。
そして、娘のローズを…。』
「待ってくれ!マレン!!」
ガバッとベッドから起き上がると
マレンの姿や声色 抱きしめた温もりも
生きていたあの時のような、不思議な感覚だった。
「夢か…。」
何処からか花の香りがした。
自分の手の平を、ふと開いて見てみると
「赤い花弁?」
オルの手には、一枚の赤い花弁の花びらが
握られていたのだった。
「この匂いは…。」
暫く何か考え込むと、オルは突然ベッドから
飛び起き部屋の明かりを付け、セバスを呼んだ。
「セバス、セバス!屋敷に戻る準備を!」
「如何されましたか?」
「明朝、屋敷に戻る。」
翌日、オルが屋敷に戻ると、娘の部屋へと急ぐ。
扉を開けると、ベビーベッドでスヤスヤと眠る
娘を見たオルが近付くと、開いていた窓から
風がサッと吹き去るように薔薇の花びらが
娘のベッドに囲うように舞うと娘が目を覚ました。
「あうー!」
まだ、1歳になったばかりで言葉は話せないが
私の顔を見ると、両手を広げニコッと笑う娘の姿は
マレンとそっくりだった。
「そうか、私にお帰りと言ってくれたんだな。」
オルが笑い返し、娘を抱きあげた。
「ただいま。お前の母からのプレゼントだよ。
ローズの名前を君に贈ろう。
今まで、不甲斐ない父だったこと許してくれ。
私がローズの父だよ。」
「キャッキャッ!」
「気に入ってくれたか?そうか、そうか。」
太陽の光でローズの手から何かが光り
右手の手の中をソッと広げると
小さな赤い薔薇の鍵を見たオルが
部屋の扉を開け、セバスを呼んだ。
「セバス!セバス!」
「お呼びでしょうか?旦那様。」
歩きながらセバスに
まだ確信ではないが昔、国王様から聞いた
国家機密の話を思い出し嫌な予感がしたオルは
屋敷の警護の強化、影を付け
ローズを見張り守るように伝えた。
「赤い薔薇の鍵の持ち主が万が一
ローズだったとしたら…。」
血の気が引いていく感覚に急ぎ
セバスに王宮へ手紙を届けるように伝え
王室書庫の機密文書の開示を王に求めた。
数週間後、オルは王宮へ向かい王宮書庫で
機密文書を調べると、懸念していた通り
生まれ変わりが、ローズだと。
兄ハインが8歳になる頃に
ローズ関する秘密の話をすると
驚きはしたが、物分りがいい息子は
「父様、ローズが、その力が戻るかは
まだ分からないですよね?」
ハインが兄として妹ローズを命に変えても守ると
真剣な眼差しで話しをしてくれて
オルの心の不安が拭えたのだった。
それから、ハインは驚くほどの才を開花させ
勉強、魔法、剣術を習得、更に力をつけるために
ハインは、王都へ学園に行き
学業と修練をつむことになるのだった。
『闇が近付きし時…復活せん。
その2つの…。赤い薔薇の鍵揃いしとき
赤い薔薇の持ち主、真実の愛に目覚め
赤い薔薇の鍵を解放せん。』
最後の文面を、オルは執務室の椅子に座り
思い出し机の紙をぐしゃりと握りながら
「呪いとは…。」
赤い薔薇の鍵は、執務室の奥の金庫の中に
厳重に保管し、私以外開けられないように
強固な結界を貼っていた。
マレンが命かげて産んだのにも関わらず
娘まで失うなんて、考えたくもなかった
オルは、自分の命がある限り
どんなことをしてでも、私が
ローズを守り抜くんだと誓うのでした。
ローズの出生のお話いかがだったでしょうか?
少しずつローズの輪廻の歯車が動き出していく
そんなストーリを手がけて行けたらと思っていますので、応援、いいね評価、ブックマーク登録
よろしくお願いします(*ᵕ ᵕ)"✨