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旅立ちの日

大好きな兄に、ローズが手渡したものとは?


ー第2幕ー旅立ちの日


あれから何事もなく

平穏な日々が流れローズは8歳に。


兄ハインが11歳の歳、屋敷を離れ

王都の学校に行く日の3日前、見送るはずの

父オルが、魔物討伐へ緊急で出ることになり

前日の夜ハインは、父に挨拶をしようと

執務室の扉をノックをした。


「父様、ハインです。」


「入りなさい。」


部屋に入ると、父に深くお辞儀をした。


「ハイン、お前の門出なのにすまないな。

明日の朝には出なくてならない。」


「いいえ、僕のことは大丈夫です。」


ハインは、小さい時から成長した今も

我儘も言わず、聞き分けのいい子供だった。

オルは親として家にいてやれない

不甲斐なさに、自分をずっと責めていた。


晴れの日に息子を見送れない父親として

子を大事にしていると言えるのだろうかと

ずっと、悩み自問自答していたのだった。


「ハイン、これを持って行きなさい。」


「父様、これは…。」


オルが机に置いたのは

ドール家に伝わる紋章が刻まれた秘宝の剣を

ハインに手渡し白い鞘の真ん中に光る石は

父とハインと同じ瞳色の赤い宝石がキラッと輝いた。


ハインは、恐る恐る手に持って

剣を持ち上げると、まだまだ自分には

扱えないほどに重く大きな剣に

ハインの瞳は、先程とは違いキラキラと輝いて

嬉しそうな顔で、眺めていた。


「一人前の男として、出立の日に

この剣を、お前に託そうと思っていたんだ。」


優しくハインに微笑むオルを見て涙が頬を伝う。

オルが椅子から立ち上がるとハインの傍に行き

力強くを抱きしめた。


「受け取ってくれるか?」


「父様、僕で、いいのですか?」


「ああ。ハインなら必ずこの屋敷の当主になれる。」


「父様…。」


魔物討伐に使う特殊な剣は

振り下ろすだけで魔物軍勢の半数を

なぎ倒せれると言われる程の威力を持ち

ドール家の家宝として、長男が代々受け継ぎ

強さによって、剣が変わるとも言われているのだ。

ただし、剣が主として認められない限り

鞘を抜いてはいけない決まりになっていた。


ハインは、数日後には屋敷を出立し

学園の寮で一人で寝起きをし

勉学、魔法、剣術などを数年間学び

卒業した後も、自分自身の修行期間とされ

ハインが18歳の歳に、剣の主となれるかの

試験があると、言われていた。


「父様のように、強く誇れる心と

この剣に恥じぬよう、立派に務めて参ります。」


「ハイン、強くありすぎても駄目だよ。

自分の弱さや甘えれる場所と、唯一無二の友人を作りなさい。自分の信頼を置ける友人を作れば、お前が、躓いた時にきっと、支えてくれるはずだから。」


「はい!父様、分かりました!」


オルがハインを抱き上げ


「大きくなったな。」


「父様、もう僕は子供じゃないですよ!」


「ハハッ。まだまだ私からしたら、子供だよ。」


「ローズに見られたら、恥ずかしいです。」


「たまには、抱かせてくれ。」


扉のノックと一緒に執務室の扉が開くと

紅茶のカートを押して入る執事のセバスと

ローズが引っ付いて入ってきた。


「あーお兄様だけ!ローズも!」


「ローズも抱っこか?」


軽々と二人を抱き上げるオルに

ハインは照れ臭そうにし、ローズは

キャッキャッとはしゃいでいた。


翌朝、明朝にはオルが旅立ち

兄ハインが旅立つ日になった。


「ローズ、休暇には戻ってくるよ。」


「…。」


珍しくローズが黙ったままだ。

俯いたまま、ドレスの裾をギュッと握りしめて

俯いたままの頬からは涙が零れ落ちていた。

泣いたりしたら、お兄様が悲しむと分かって

ローズは声を我慢して俯いていたのだった。


「ローズ?」


ハインが、ローズの目の前で膝をつくと

胸ポケットから真っ白なハンカチを取り出すと

優しくローズの涙を拭った。


「お兄様まで行かないで!」


咳が切れたように、ハインの首にしがみついて

泣きじゃくる妹にハインも屋敷を離れる不安

妹の傍にいてあげられない寂しさなどが

溢れ出そうだった涙をこらえて

妹を抱きしめ頭を優しく撫でながら


「ローズ?さあ、涙ではなくいつもの可愛い

笑顔を兄様に見せてはくれないのかな?」


「ひっく、だって…。だって、お父様も

お兄様も居なくなるの…ローズ寂しい…。」


「僕も寂しいよ。でもね、ローズ。

国や領民を、愛するローズを守るために

学校に行かなくては駄目なんだ。

寂しくないように、手紙も必ず書くから

ローズも兄様に手紙を書いてくれると嬉しんだけどな。」


「うん…。絶対に書いてくれる?」


「ああ、絶対に手紙を書くよ。約束だ。」


ハインが指を差し出すとローズも指を出して

指切りをすると、ローズの涙は止まっていた。


「さあ、僕はそろそろ行かなくては。」


「お兄様、あのね、あのね…。」


侍女がソッと何かをローズに手渡すと

手を後ろに何かを隠しながらもローズが

ソッと小さな包みを、ハインに手渡した。


「これは?」


「馬車の道中で、開けて見てください。」


「分かった。ありがとうローズ。」


馬車にハインが乗り込みローズは笑顔で

ハインを見送った。


「お兄様、気を付けて行ってらっしゃいませ。

お帰りを、屋敷の皆とお待ちしております。」


8歳の見送りの挨拶とは思えない

カーテシーに、ハインが驚いた。

ローズの眩しい笑顔にハインも柔らかな笑顔で

馬車の窓から手を振り屋敷を後にしたのでした。


「ローズ様ご成長されましたね。」


「セバス、こんな素敵な贈り物…。

父様と、ローズが初めてだよ。」


ハインの手には、ローズが一生懸命刺繍した

ドール公爵家の家紋の薔薇の刺繍の隣には

兄のイニシャル入りのハンカチを見て

ローズの想いと、父の想いにハンカチと

剣を胸に抱きながら涙を零すハインは

王都の学園へと向かうのでした。

1人になる寂しさをローズが噛み締めていたけれど

ハインまで、居なくなるとなると行かないでと

ローズが初めての我儘に、作者も涙が出そうに

なってしまった…。まだ始まりに過ぎないのに

感情移入しやすい作者です(笑)


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