すれ違う心
アルスの想い、メアリーの想いが交差し始める。
第7話始まります。
メアリーから綺麗な刺繍のハンカチを
肌身離さず持ち歩いて、それを見てニタニタ
笑う姿を見たユランが
「おい、ニヤケ顔が気味の悪い顔だぞ!」
「てか、ユランって俺が王太子って忘れてるよな?」
「王太子殿下の威厳も、クソもないんだから、おいかお前、でいいだろう。」
「言いわけないだろうが!」
「はっ、ちょっとメアリーから刺繍の
ハンカチ貰ったからって鼻の下のばして
ニタニタしやがって、気味の悪い。 」
「は?お前こそ、ハンカチ貰えなくて
拗ねて俺に当たり散らしてんだろうが!」
「やんのか!」
「「いい加減にしろ!」」
カールと、アルスの従者ランドルが
二人の頭を思いっきり殴ると
首根っこ捕まれて散々お説教をされて
お兄様が拗ねて帰ってきました。
ジッとカールさんを見つめてる私に
アルス王太子殿下と喧嘩しかけて怒られたと
カールさんから聞いて原因はお兄様の
妬きもちだそうだ。
翌日、お兄様がお仕事に行ってる間に
カレンにお兄様の仕事で使うネクタイを
ジッと見て刺繍をしたいサインを送ると
ネクタイの色を一緒に選んでくれて
お兄様の綺麗な瞳に合わせて
濃い紺色のシルクのネクタイに決めたわ。
赤と金色の刺繍糸で邪魔にならない
薔薇の刺繍に決めて
1週間くらいゆっくり刺繍をしたの。
ネクタイ用の箱に入れてリボンを付けて
お兄様が帰るのをカレンと玄関で待ってると
玄関の扉が開いた。
「ただいま!メアリー!待っててくれたんだね!」
ギュッとして抱っこして、ギュッと抱きしめて
頭をなでなでして、仕事の疲れを癒すユラン。
ソッとメアリーを下ろすとジッと
ユランを見つめて何かサインを送る。
何だろうと手元を見ると長細い箱を
手にしてジッとユランを見つめていた。
「メアリー、私にくれるのかい?」
涙がポロポロと両目からこぼれ落ちて
サインを送るとユランが受け取り
応接室までメアリーを抱き抱えて
ソファーにソッと下ろすと隣に
ユランが座ると
「メアリー、早速開けてみるよ。」
箱のリボン解くとユランが目を丸くしながら
メアリーを見つめた。
「これ。メアリーが?」
「……。」
キラキラ輝く刺繍の薔薇を嬉しそうな表情で
ネクタイを眺めてるユランを見て
「……ゥ。」
バッとメアリーの顔をユランが見た。
「メアリー声が?」
カールもカレンもびっくりして固まっていた。
たった一言でも話せたのかと思うと嬉しくて
涙が止まらないユラン。
「俺が喧嘩しかけたから、
メアリーが気にして作ってくれたんだな。ごめんな。」
何でお兄様はすぐいつも謝るのだろうと
ボロボロ涙がこぼれ落ちて
「……ぃ。」
怒ってるような声にユランが
「ごめん。」
謝らないでいいのに
伝わらないもどかしい想いと思ってるとカレンが
「多分ですが、メアリーお嬢様様は
ユラン様に謝って欲しいのでは、ないんだと思うのです。」
「そうなのか?メアリー。」
ボロボロ涙が落ちる目を見て
「ありがとうだな。
メアリー頑張って作ってくれてありがとう。」
メアリーの髪を撫でると
フッと一瞬笑ったように見えてカール達に
「い、い、今、笑ったよな?」
「多分、ユラン様だけ見えたのかと。」
「ああ、神よ!今日も、生きててよかった!」
全力の抱きしめで息が苦しくなった
メアリーはキューと倒れてしまい
またもやパニックになるユランなのでした。
ー王室ー
「ねぇ、明日休みだよね?」
アルスがランドルに確認をすると
「はい。明日は公務も視察も特にありません。」
「明日、メアリー誘って城下の街を散策する。」
「急に護衛なんて、配置出来ませんよ。」
「ランドルが居れば大丈夫。」
アルスのお願いをされるとぐうの音もでないで
甘やかしてしまう所を何とかしなくてはと
毎回思うのだけれど、なかなか上手くいかない。
「行先のマップはきちんと書いといてください。」
「ありがとう。ランドル頼りにしてるよ。」
王子スマイルに根負けをし
翌日の10時頃に
ランドルと一緒にメアリーの家に行くと
ユランがあっさりいいよと言われて
雪でも降るのかなと思うくらい気味が悪かった。
メアリーを外で待ってると
出てきた彼女の姿に、アルスは脳天にハートの矢が
刺さったみたいな衝撃が。
少し暑くなり始めて、襟付きの黄色のワンピース
三つ編みおさげで白の靴を履いていてた。
(可愛い文句なしの可愛い。
前に着てた淡い黄色のドレスも思ってたんだけど
俺の髪色と同じじゃね?って
自意識過剰かもだけど、本当に可愛い。)
「馬車で城下街なんだけど、色んなお店があるんだ。」
ジッとアルスの話に耳を傾けるメアリーに
顔が赤くなり黙ってしまう。
「殿下、着きました。」
アルスがメアリーを抱き抱えて
馬車からメアリーを降ろしてくれた。
スイーツ屋さんのパフェとなる食べ物を
メアリーと一緒に食べれたらなと考えていた。
「お待たせしました。
苺のうさぎパフェでございます。」
コトッと置かれたキラキラのパフェとなる
食べ物に俺は興奮した。
「今日の神に幸せと恵に
メアリーと共に感謝します。」
「さっ、食べよう、メアリー。」
長いスプーンを持たせるが食べないメアリー。
「食べにくい?」
涙は流れない。少し考えて思いついたのが
「可愛いから食べたくない?」
涙がポロって流れた。
「一緒に食べてまた、食べに来たらいいんだよ。
今度、ユランも連れて来て3人で食べよ。」
ポロポロと涙こぼれるメアリーを見て
あの刺繍のハンカチで涙を拭いてあげて
メアリーの口に生クリームと
小さな苺をスプーンに載せて
「さ、メアリー。あーん。」
口を開くと、苺の酸味と白いほわほわの
甘くて溶ける食べ物が口の中で
混ざってとても美味しい。
「今、笑った。」
「メアリーが笑った!すげぇ!可愛い!」
「ォ…。」
「えっ?メアリー今話した?お」
「……。」
「お、お、何だろな。美味しい!」
フワッと口が笑うと今日メアリーを誘って
よかったなって、パフェを堪能してると
「メアリーだよな?」
(誰かに呼ばれたけど知らない人に
名を呼ばれる事は、多分ないはずなのに。)
バッと私の顔を間近に覗き込んで
(幼なじみのユリウス?)
「メアリーまだ、話せないんだな。」
(コイツメアリーに、馴れ馴れしく話やがって。)
アルスが苛立ちを覚えると
「メアリー、こいつとデート?」
笑うそいつを今ここで殺っちまうかと思った瞬間
「俺の名は、ユリウス・ロンド。公爵家の嫡男だ。
王都近衛騎士所属。メアリーとは、幼なじみで…。」
(ちっ。何なんだこいつ。
メアリー、メアリーってうるさいな。
自分のモノみたいに言いやがって。
ユランも同じ感じだったんだろうか?)
窓の外に視線を逸らすとガラスに腰に見えた
メアリーがジッと俺を見ていて
(何やってんだ俺。)
クシャッと髪をかきあげると椅子から立ち上がり
「すまないが、デート中なんで。」
パッとメアリーの手を掴み走早に店を出た。
少し走り、噴水広場に到着してアルスが表情を見る。
「メアリーごめん、疲れた?」
涙が流れてないってことは、大丈夫かなと。
噴水広場のベンチに座って、色々話をした。
受け答えはないけど、傍に居ると安心してしまう
そんな不思議な感覚に
俺の心の臓が破裂するくらい早くなった。
「メアリーと仲良くなってまだ日が浅いし
全部が全部メアリーの事をまだよく俺は知らない。
だけど、これからゆっくり俺とメアリーとで
仲良くなりたいんだ。その…。好きなんだ。」
(あ、俺ついに言ってしまった。ど、ど、どうしょ俺。)
「……キ。」
「え?!」
よくメアリーを見ると顔が赤くないかと
びっくりして言葉でなくなった。
アルスが、立ち上がりメアリーに
「そ、そこで、アイス買って来るから待ってて!」
(伝わったのかな?ちゃんと言えたらな。)
「あれ?彼女何してんのかな?」
「一人?ねぇねぇ。」
「この子、さっきから全然喋んないね。
顔無表情だし、何考えてんだろな。」
「誰も見てないし、連れてこ。」
「いいね。先にどっちが相手?」
「それは、クジだろ。」
手をグイグイ引っ張られる。
なかなか動かない私を見かねて
抱き抱えようとした時、誰かが相手の手を掴んで
「嫌がってますよー。彼女俺のツレなんで。」
ユリウスがナンパした男の腕をギリギリと
強く掴むと覚えてろ!って叫んでいた。
「てか、お前なんで一人?」
「……。」
暫くユリウスとベンチに座ってると
アルスがアイスを持って帰って来た。
ガッとユリウスがアルスの胸ぐらを掴んで
アイスが落ちた。
「お前、こいつをなんで1人にしたんだ。」
「それは…。」
「ちっ。煮え切らない回答かよ。
はっ、メアリー残した結果、変な男に絡まれてたんだぞ。」
「な、大丈…。」
「大丈夫なわけないだろうが!」
(ユリウスってお兄様と、性格似てるのよね。
王太子殿下に、暴力とか処刑では?)
ギラッと剣を抜いた従者のランドルが
護衛に入る危機的状況に体が動かない。
動けない、動け、動いてと命令をするメアリー。
「何だ?お前もやんのか?
あー何処の貴族の、お坊ちゃまですか?」
「無礼だぞ!この方は!」
「いい。何もするな。」
「威勢だけよくて、中身は弱いのかよ。
強がらずに、助けてくださいって従者に泣いて
懇願してみろよ!」
ギリッとアルスの首襟が絞まる。
どうでしょう、どうしたらいいと焦りながら
自分の体、動いてと念じた。
「一発殴っても、文句ないよな!」
ユリウスが拳を振り上げた瞬間
目の前で見た光景がまさかの
「え?メアリー?」
「嘘だろ…?」
「メアリー様が…。」
「「「立って、ユリウス(俺)の腕掴んでる!!!」」」
必死にユリウスの腕に、しがみつくメアリー。
騒ぎを聞き付けた、お兄様と近衛騎士たちが
バッと走って来て、この今見てる状況に
誰もが腰を抜かしても
いいほどびっくりして立ち止まっていた。
「双方確保!ただし、双方保護せよ!」
お兄様の命令で、ユリウス、アルス、ランドルが
近衛騎士に保護され、メアリーはユランが保護した。
「以上、発端の原因であります!」
「はぁ。城下街で、治安が悪くはないが
まさか、メアリーを1人にして。
アルスも悪いが、血の気の多いユリウスも
ユリウスだな。」
ため息をついてると、手をガッと掴みながら
ジッと俺を見つめる。
「俺も?俺も血がすぐ上りやすいか!ハハッ!」
「メアリーお嬢様の、一本勝ちでございます。」
「うるさいぞ。カール。」
「そういう所がです。」
「ぐっ…。」
「とにかく、双方始末書書かせて解散。
メアリーは、私が送る。」
何故だか抱き抱えられて、馬車に乗せられ
馬車の扉が閉まりかけた時、アルスが走って来て
「危ない目に合わせてごめんね。」
パタンと馬車の扉が閉まると動き出し
屋敷に帰るとお兄様がギュッと抱きしめて
「何も大事なくてよかった。」
それから私はゆっくり休んだりお兄様と
ディナーを食べていつも通りの夜の日課をして
翌日、お医者様から奇跡に近いと言われました。
けど、動けると言ってもまだすぐには
動けず、誰かのために強く念じなければ
動かせない体なのです。
そして、その日からアルス王太子殿下が
我が家に来なくなり、もう1ヶ月になろうと
していて、私の気持ちが揺らいでか
食事をあまり取らなくなり、お兄様が原因を
探ろうとしてましたが、なかなか分からず
せめて、蜂蜜飴をとそれだけは
食べて欲しいと言われて食べています。
逢いたいと叫びたいのに、声が出せない。
アルス王太子殿下は、ご自分を
責めていらっしゃるのでしょうか。
すれ違ってしまった心はもう、戻らないのか
毎日、アルス王太子殿下の声が聞きたいです。
庭を眺めるメアリー。
俺も君に、逢いたいんだメアリー。
作者、懺悔中です゜(゜`ω´ ゜)゜