一筋の涙
第4話 始まります。
物騒な事件が多発してると聞いて
屋敷の警備、護衛の強化をして
何人かの従者を配置しメアリーが萎縮しない
距離で警戒していた。
そんなある日、ユランが王城に呼ばれて暫く
帰れなくなり、メアリーは1人で眠る日が続いた。
夜中に目が覚めるとお兄様の匂いや
温もりがなくて、冷たい広いベッドが
寂しさが募り、お兄様を探すかのように
屋敷を、さまよい歩き庭に出ると
バラの香りがメアリーの鼻をくすぐった。
春先でまだ少し肌寒い夜。
お外に行く時はガウンを着るようにと
カレンから言われていて
ちゃんとガウンを着て庭に出て
バラ園をメアリーがジッと見ていた。
ガサッと茂みから音が聞こえて
フードを被った知らない人が
3人ジリジリと私を捕まえようとした。
が、従者と護衛の騎士が交戦する中
不思議な煙が庭を充満すると
全員バタバタと倒れて眠り
私もその煙で眠ってしまった。
気が付いた時には薄暗い牢の中で
手足に手錠が付けられて、身動きがとれない状況に
誰かの靴音が、カツンカツンと近付いて来る。
ピタッと止まると牢の鍵を開けて
フード被った人が私の手と足の錠を外すと
私の手を引っ張りながら広間に連れて行かれた。
壇上の上に寝かされ四肢を鎖で繋がれて
何か呪文みたいな言葉が聞こえ
フードを被った人が
私の胸をつき刺そうとした瞬間
部屋全体がひんやりと冷たい空気と
凄まじい殺気に戦闘態勢になった。
「誰だ!」
薄暗い部屋から人影と共に現れたのが
(お兄様とお兄様の誰だっけ?あ!アルス様だわ。)
(メアリーまで俺の名を忘れるなんて、グスン。)
ユランとアルスが部屋に入ると
お兄様のどす黒い瞳で敵全体を睨んで威圧した。
「おい!お前ら全員、絶対生きては、返さんからな。」
「あーあ。てか、ユラン一人で全部の
アジトをしらみ潰しに壊滅させちまうんだもんな。
お前の異名は、冷酷鬼神様だよ。
でも一人くらい、事情聴取したいんだ。
ユラン一人だけ、半殺しにしてくんないかな?」
「は?」
どす黒い冷たい目でアルスの顔を睨んだ。
「ユラン様、頼みます!お願いします!
愛しい妹さんは、助けますから、お願いします!」
(お兄様よりアラン様のが確か王族で偉いような?)
「てか、妹に、惨劇見せんのかよ。」
「メアリー少しだけ目を閉じてて。すぐ終わるから。」
目を閉じるとアルスがガキンッと
剣で私の鎖を叩き切りソッと抱き抱えた。
「おしっ。妹救出したから
冷酷鬼神様、後はお好きに。
あ、頼むから生贄一人残しといてね。」
「あははっ!クック…。お前ら絶対に許さん!
我が剣の贄にしてやるからなあ!」
「シスコンで脳みそがメアリー命で
拗れた愛を持つ兄って君も、可哀想だな。」
まだ目をつぶるメアリーにアルスが
「もう外だよ。怖くないから目、開けていいよ。」
馬車の中にメアリーをソッと乗せると
メアリーが目が開いてジッとアルスの顔を
初めて見つめている。
「怖かったよな。」
アルスがメアリーの頭を優しく撫でて
「あ、そうだ。泣かずに頑張ったご褒美。
メアリー、口を開けてごらん。」
アルスがポケットから飴が入った小瓶を取り出し
小瓶から飴を一粒メアリーの
口に入れると大好きな蜂蜜飴の味が
口の中で広がりメアリーはゆっくりと
飴を舐めていた。
「美味いか?」
優しく笑いかけるアルスの姿を見て
メアリーの胸が何故かキュッとした。
「えっ?」
アルスがびっくりして目を丸くして
どうしょうと慌てふためいてる。
メアリーの片方の暗い瞳が、綺麗な青い瞳に戻り
その片方の瞳から一筋の涙が流れ落ちた。
アルスはどうしたらいいのか分からず
メアリーの頭を優しく撫でるしかなかった。
返り血を浴びたユランが洞窟から出てくると
生贄一人掴んでアルスの足元に投げ捨てて
「おい、火の魔法を早く出せ。」
「メアリー、ちょっと待っててね。」
ユランが水魔法を出して
アルスが 火の魔法をかけあわせるとお湯になり
全身の返り血を、ザッと落として
ユランは風の魔法と
アルスの火の魔法で騎士服を乾かすと
走ってメアリーの乗ってる馬車まで行くと
「メアリー!どうしたんだ!?」
ユランが馬車の扉をソッと閉めると
アルスの叫び声が夜の空に響いた。
「だから、誤解だって言ってるのにさ。」
「誤解だって?メアリーを泣かせた罪は重い。」
「俺さ一応、王族何だけどなあ。」
「あー可哀想なメアリー。
こんな男だけにして兄として不甲斐ない。ごめんな。」
ギュッと抱きしめて頭を撫でるお兄様の
胸の温かさと匂いにフッと体の力が抜けた。
「メアリー!!」
気が付いた時には、いつものベッドの中で
お兄様が隣で私を抱きしめながら眠っていた。
この温かさと匂いが安心するんだ。
次の日、お医者様と治癒士が来て診察をすると
アルスの優しさが瞳のと上翳が
心を閉じていた感情の一部として、
戻ってきて涙として流れたのではないかと言う
意見にお兄様は苦虫を噛み潰したような顔で
「何であいつが…。」
ブツブツ呟いてました。
それから、アルス様が公務で忙しくない日には
必ず私の屋敷に来て
私に色々な贈り物を渡してくれるように。
「やあ、メアリー。
今日は、可愛い熊を見つけたんだ。」
小さなテディベアのぬいぐるみに
「明日、美味しい紅茶の茶葉を
見つけたから、明日持って来るね。」
南国の珍しい紅茶の茶葉だったりと
ほぼ、毎日贈り物を頂いた。
ー王室ー
「おい。クソ虫!」
「えっ?お、お俺?」
王室のアルスの執務室の扉をバンッと開いて
ズカズカ歩いて執務室のテーブルをバンッと
叩くとユランが睨みながら
「妹はやらんぞ!絶対にやらん!」
「仲良くなりたいだけだし、好きとかじゃないし。」
フイッとアルスが視線を逸らす癖はだいたい
好きだと分かっていたユランはブチッと切れて
「王族の暇つぶしの玩具に
メアリーを使うな!お前の物ではないんだからな!」
バンッと扉が閉まるとカールが平謝りし
ユランを追いかけるように扉が、パタンと閉まった。
「俺、一応さ、王太子だよな?」
(メアリーの流した、あの涙は何だったんだろうか?ユランから聞いた、メアリーには感情が今は出せない、話せないって聞いてたのに、あんな綺麗な涙は初めて見た。)
思い出して顔が熱くなる自分にまさか誰かを
好きになりかけてることに驚いた。
ほとんどの王族は、決められた結婚で
愛だの恋だのと全くない、夫婦が当たり前なのに
まさかの俺が一目惚れするなんて
夢にも思わなかったな。
「明日は何を贈ろうか。彼女の笑顔が見れたら嬉しいな。」
椅子に座りながら、王室の庭を眺めて
明日もと考えたことがないアルスの小さな恋心と
綺麗なあの涙に酔いしれるのでした。
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