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プロローグ たそかれ時の告白

 れ時の空に沈みゆく太陽は、彼岸花に似ていた。散りゆく赤は青年の背後の陰影を切り取り、薄暗闇の紗は横顔を覆う。


現世うつしよにおける生き物の死は、肉体の滅び。では、血肉なき神の死は何によってもたらされるか、ご存じですか」


 長い時を生き、神と呼ばれるようになったかれの問いに、人の身であるのどかは答えを持たない。

 沈黙の間に花が散り、天頂から刷くように藍色が重なり空に塗り込められる。

 ふたつの影を夜が呑み込んだ頃、和の目が慣れて見付けた微笑と滲む涙は、いつから浮かべられたものだったろうか。


「ひとつは、他の神によって死がもたらされたとき。もうひとつは、実在を信じる人々がいなくなった時。ですが、死より恐ろしいのは――」


 そうして、庭に置いた水盤の上を揺らいでいた白く細く、そして和も知るせせらぎのように冷たい指先が、ようやく一点で止まる。

 指の間に挟まっていた白い薄様かみが水盤に浮かべられた。柳のような墨の軌跡がするりと紙から浮かび上がり、水面に揺蕩う。古い言葉で書かれた文字は、かつて死に別れた友人に、許しを請うものだった。


「自我を失った荒ぶる神となり、人に記憶されることです」

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