第2話 脱出
AM9:30:00
これで確定した。俺はなぜか殺されている。これは死に戻りだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
扉を突き飛ばすように開けて俺は走り出した。
エレベーター……間に合わない。
外の非常階段を使うか?だがここは三階だ。飛び降りる勢いでなければ逃げ切れないだろう。
爆弾については詳しくないが、スーツケースサイズということと、おそらく俺が一瞬で消滅していたということを考慮すると、アレはこの建物すべてを吹っ飛ばすだろう。
階段を使うか、エレベーターを待つか迷っていると、今度は爆弾から光が瞬く間に膨張して俺がいた個室を飲み込んでいく様子が見えた。その刹那、また俺の意識は消えた。
今度は少し熱さを感じた。
AM9:30:00
「闇雲に逃げても仕方ないか……」
ネカフェの個室の天井のシミを数えながら落ち着く。
十個数えたら死なないか?これ
AM9:30:00
「エレベーターはダメだ。 この階に来るまで待てないし、一階に行くのも遅い」
「かといって階段ではおそらく間に合わない。 飛び降りるか、もしくは」
扉を開けて爆弾を見る。
「これを投げ捨てるかだな」
見たところかなり重そうだ。これを階段まで運び、そこから投げ捨てて自分から十分な距離を取らせる。
「無理じゃね?」
どんなに急いでも非常階段までアレを運ぶのは5秒以上かかる。
自由落下5秒では……大体120メートルか。
いけるかもしれない。
確実に地面には爆弾は落ちる。あとは通行人に当たらないようにかつ建物が崩れないようにと考えて
AM9:30:00
「とりあえずやってみるか」
扉を開けて個室の目の前に鎮座している爆弾を持ち上げ……重すぎる。
米袋ぐらいあるな。
「ふーんぬッ! ふーんぬッ!」
「ソイヤッ」
1秒、2秒、爆発
え、ちょ、待って巻き込ま
AM9:30:00
「思ったより運ぶのに時間がかかったな……」
あとは爆弾を見ていないで自分自身は逃げるべきだったと反省。
それよりもこの爆弾を投げ出した地点に人がいたことが気になる。もし落とすのに成功しても誰かが死ぬ。
「どうするべきかなぁ」
誰も死なせずに生き残る必要はないが、できうる限りのことはしたい。
「次は階段を全力で駆け下りるか……」
AM9:30:00
「うおおおぉぉぉぉぉううおおおおおおお」
「元陸上部なめるなよオラァ!!!!!!!!!」
俺は全力で階段を駆け下りていた。
ビルの非常階段を帰宅ラッシュ中の東京駅のサラリーマンばりの速さで駆け下りていく。
1階まであと少しというところまで来た。
あれ、これ逃げ切れるんじゃないか?
頭上で爆発音。続いて爆風。
「おわぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁ」
階段から吹き飛ばされてビルに面した道路へと転がり出た。
「いってぇ……」
生き
AM9:30:10
「おわぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁ」
階段から吹き飛ばされてビルに面した道路へと転がり出た。
「爆発の後まで繰り返し地点が進んだ……?」
「な
AM9:30:10
「おわぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁ」
階段から吹き飛ばされてビルに面した道路へと転がり出た。
今回は何が原因で死んでいるかわからない。まずは原因を特定しなければならない。
「とりあえず転がってみるか」
俺は道路に横たわったままゴロゴロと転がり始めた。
「ローリング! ローリング!」
何かが風を切る音とともに、鋭い音がした。
アスファルトに小さな穴が開き、一瞬煙をあげた。
「あれ俺がさっきまでいた場所じゃないか?」
そこは俺が吹き飛ばされて最初に転がってい
AM9:30:10
た場所だな。
「うおおおおおおお! ローリング! ローリング!」
まずは初期位置から全力退避。
その勢いで立ち上がる。
「どうする、どうする」
平日の朝ということもあり、周囲に人はまばらだった。
爆弾のようなものは見当たらない。
それでも俺が死んでいることは確かだ。
「走ったら、逃げられるかな」
さっきも何とかなったし。
AM9:30:10
「あああぁぁぁぁローリング! ローリング!」
まずは初期位置から全力退避。
その勢いで立ち上がる。
そして全力で走り出した。
「ん? あの光って」
進行方向正面にあるビルの屋上で鏡を反射させたような光が見える。
「もしかしt
その光の場所から一際強く花火のような閃光。
あれなんだっけ、マズルフラッシュって言うんでしたっけ?